1. 「図面さえもらえれば作れるんですが、それをどう書けばいいのか」
金属加工の町工場の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「うちは図面をもらって削ったり曲げたりする仕事なので、自分たちの製品というものがないんです。ホームページに『精密金属加工』と書いてはいるんですが、それ以上何を書けばいいのか分からなくて。たまに来る問い合わせも、うちでは受けられない仕事ばかりで」
受託の金属加工は、何を作るかを決めるのが発注する側という仕事です。だから、載せる製品がない、と感じてしまいます。けれど、発注する人がサイトで確かめているのは製品ではありません。自分の図面を、この工場に任せられるかどうかです。
自社製品の記事との違い
下請けの町工場が自分たちの製品を始めたとき、製品のページに何を置くかは、自社製品を始めた町工場のホームページに、何を載せるか に書きました。そちらは、製品を買う人や取扱店に向けた話です。
この記事は、その手前の本業の側です。切削、板金、溶接、曲げなど、図面をもらって作る仕事を、発注する人にどう伝えるかを書きます。下請けの仕事が中心の会社にとって、サイトがどんな役目を持つかは 下請けの仕事が中心の会社に、ホームページは効くのか にまとめてあります。
この記事で書くこと
- 発注する人が確かめていること(加工・材質・大きさ・精度・数量・納期)
- 設備の一覧の載せ方
- 取引先の図面や製品に配慮した、加工の例の見せ方
- 図面の送り方、見積もりの依頼の受け方、秘密を守る約束
- 一個からの試作を受けるかどうか
- 品質の管理と検査、近くの工場との協力で受けられる範囲
2. 発注する人が確かめている、6つのこと
金属加工の発注先を探している人は、いくつかの条件を頭の中で順番に当てはめています。どれか1つでも分からないと、その工場は候補から外れやすくなります。
| 確かめること | よくある書き方 | 確かめられる書き方 |
|---|---|---|
| できる加工 | 精密金属加工全般 | たとえば「旋盤とマシニングセンタでの切削、レーザーでの切断、曲げ、溶接」と方法で並べる |
| 材質 | 各種金属に対応 | たとえば「鉄、ステンレス、アルミ、真鍮。チタンはご相談」と、得意なものと相談になるものを分ける |
| 大きさ | 小物から大物まで | たとえば「切削は〇〇mm角まで、板金は板厚〇mmまで、長さ〇mまで」 |
| 精度 | 高精度 | たとえば「よくお受けしている公差の幅は〇〇。それより厳しいものは図面を拝見してご相談」 |
| 数量 | 多品種少量 | たとえば「1個の試作から、〇百個程度の繰り返しまで」 |
| 納期 | 短納期対応 | たとえば「材料が手元にある切削品で、図面をいただいてから〇日ほど。急ぎはご相談」 |
真ん中の列は、どの工場のサイトにも書いてある言葉です。それだけでは、発注する人は自分の図面が入るかを判断できません。方法・名前・数字・条件に置き換えると、読む人が自分で当てはめられます。〇の中は、貴社の実際で埋めてください。
受けない加工も、書いておく
できることと一緒に、受けていない加工も書いてください。たとえば「鋳造や鍛造はお受けしていません」「〇〇mmを超える大物は対応できません」。受けられない問い合わせが減り、条件に合う人は安心して図面を送れます。
発注する人ごとに、見ているところが違う
同じ条件の一覧でも、読む人によって目の止まる場所が違います。
- メーカーの購買の担当者 ― 納期、数量、価格の決まり方、取引を始めるときの書類や支払いの条件
- メーカーの設計の担当者 ― 加工の方法、材質、精度、図面で相談に乗ってもらえるか
- 試作をしたい開発者 ― 1個から頼めるか、図面が固まっていなくても相談できるか
- ほかの工場 ― 自社にない設備を持っているか、急ぎの外注を受けてもらえるか
購買の担当者は、加工の中身より先に、取引の手続きを見ていることがあります。会社概要や支払いの条件、出せる書類の書き方は、はじめて取引する会社の担当者が、ホームページで確かめたいこと にまとめてあります。
3. 設備の一覧は、「何ができるか」とセットで
金属加工の工場にとって、設備の一覧は名刺のようなものです。ほかの工場や設計の担当者は、設備を見て、どこまで頼めるかを測ります。
載せる項目
- 設備の種類と台数 ― 旋盤、マシニングセンタ、レーザー加工機、プレスブレーキ、溶接の設備など
- 加工できる大きさ ― テーブルの大きさ、加工できる長さや板厚。種類と台数だけでは、大きさが分かりません
- それで何ができるか ― 「〇〇の設備で、長さ〇mまでの曲げができます」のように、一行の言い直しを添える
- 測る設備 ― 加工の設備だけでなく、寸法を測る道具や検査の設備も。精度を気にする設計の担当者がよく見るところです
型式まで細かく並べる必要はありません。設備の名前に詳しくない購買の担当者や開発者には、何ができるかの一行のほうが伝わります。載せるかどうかの判断と、項目の考え方は 保有している車両や設備の一覧を、ホームページに載せるかどうか に書きました。
古い設備を残さない
設備を入れ替えたり手放したりしたら、一覧も直してください。もう無い設備を見て問い合わせが来るのは、どちらにとっても手間です。一覧に「〇年〇月時点」と添え、設備を入れ替えたときに見直すと決めておくと、古いままになりにくくなります。
4. 加工の例は、取引先に配慮して見せる
受託の仕事でいちばん悩むのが、加工の例の見せ方です。腕を見せたいのに、作ったものの多くは取引先の図面で作った、取引先の部品だからです。
取引先の図面や製品を、勝手に載せない
取引の中で預かった図面や、その図面で作った部品は、取引先のものです。秘密を守る約束を交わしていることも多いはずです。写真1枚でも、了解なく載せないでください。形から、取引先の製品や開発中のものが分かってしまうことがあります。
形や刻印、品番から、取引先や製品が分かってしまうことがあります。秘密を守る約束に触れるおそれもあり、取引そのものに響きます。
どこまで載せてよいか(写真、材質、用途、業種)を、取引先の担当者と文書やメールで確かめてから載せます。了解の範囲は記録に残します。
取引先の部品とは関係のない形で、同じ材質、同じ加工の方法、同じくらいの精度のものを自社で作って撮ります。了解を待たずに、技術を見せられます。
始めやすいのは③です。見本は、得意な加工の方法と材質ごとに1つずつあれば十分です。②は、了解が取れたものから少しずつ足していきます。
1件に添える項目
写真だけでは、発注する人は自分の図面と比べられません。1件ごとに、次のような項目を添えてください。
- 材質と、おおよその大きさ
- 加工の方法と、使った設備
- 精度の考え方(どこを、どのくらいの幅に収めたか)
- 数量と、かかった日数
- 工夫したところ(歪みを抑えた段取り、薄い板の溶接、硬い材料の扱いなど)
取引先の了解を取った例なら、名前の代わりに「産業用の装置の部品」「食品工場の設備の部品」のように、業種と用途だけを書く形でも十分に伝わります。1件の書き方の型は 実績ページに何を書くと、次の依頼につながるか にまとめてあります。
写真に写り込むもの
工場の中で撮ると、思わぬものが写ります。壁に貼った図面、作業の指示書、取引先の名前が入った箱や伝票、部品に打たれた品番。撮る前に、作業台の上と背景を片付けてください。載せる前にもう一度、拡大して確かめます。
5. 図面の送り方と、見積もりの依頼の受け方
発注する人が最後に確かめるのは、図面をどう送ればいいかと、送った図面がどう扱われるかです。
受け取れる形式を、名前で書く
「図面をお送りください」だけでは、送る側が迷います。受け取れる形を具体的に書いてください。
- 二次元の図面 ― PDFや、CADで作った図面のデータ。貴社で開ける形式を名前で
- 三次元のデータ ― 受け取れるかどうか、受け取れる形式
- 手書きのスケッチや写真 ― 試作の相談などで、図面がまだ無い場合に受けるかどうか
- 送り方 ― フォームへの添付か、メールか。添付できる容量の上限と、大きいファイルの送り方
見積もりに要ることを、先に聞く
見積もりの依頼のフォームでは、最初の返事で金額の見当を出せるかを基準に項目を決めます。
- 材質と数量(試作の個数と、その後の見込みの数)
- 希望の納期
- めっきや塗装、熱処理などの後の工程が要るか
- 材料をこちらで手配するか、支給していただけるか
- 検査の記録や成績書が要るか
項目を増やしすぎると、送る前に手が止まります。分からない項目は「未定」を選べるようにしておくと、図面だけ先に送ってもらえます。項目の決め方と送信後の案内の書き方は、見積もり依頼のフォームは、何をどこまで聞けばいいか に書きました。
返事の目安も書いてください。たとえば「図面をいただいてから〇営業日ほどで、お見積もりか確認のご連絡をします」。受け取ったことを知らせる連絡をすぐに返すだけでも、送った側は安心します。
秘密を守る約束を、書いておく
開発中の部品の図面を、知らない工場に送るのは勇気が要ります。受け取った図面をどう扱うかを、サイトに書いておいてください。
- 受け取った図面やデータは、見積もりと加工のためだけに使う
- 社内で見る人の範囲
- 見積もりだけで終わった場合、図面をどうするか(消す、返す、など)
- 発注する側が用意する秘密保持の契約に応じるかどうか
ここには、貴社が実際にできる約束だけを書いてください。書いたことは守る必要があります。契約の中身に迷うときは、専門家に確かめてください。
6. 一個からの試作を、受けるかどうか
試作をしたい開発者が、いちばん先に探すのは「1個から頼めるか」です。ここが書いていないと、量産の工場だと思われて連絡が来ません。
受けるなら、条件と一緒に
1個から受けるなら、はっきり書いてください。そのうえで、条件を添えます。
- 1個は割高になる理由 ― 段取りや設備の準備にかかる時間は、1個でも100個でも変わらない、という説明を一行
- 図面が固まっていない相談を受けるか ― スケッチや現物から形を一緒に決めるか、図面ができてからにするか
- 試作のあと ― 同じ工場で、繰り返しの数量に移れるか
開発者は、加工の言葉に詳しいとは限りません。「こういうものを作りたい」という相談から受けるなら、その一言を書いておくだけで、連絡しやすくなります。
受けないなら、それも書く
反対に、繰り返しの数量の仕事が中心で、1個の試作は受けていない、という工場もあると思います。その場合は「試作のみのご依頼はお受けしていません」「〇個からお受けしています」と書いてください。受けないことを書くのも、相手の時間を大事にすることです。
7. 品質の管理と検査、近くの工場との協力
検査は、していることをそのまま書く
品質の管理は、「品質第一」と書いても伝わりません。何を、どう測って、何を渡せるかを書いてください。
- 何を測るか(寸法、外観、ねじの具合など)
- 全数を測るか、決まった数を抜き出して測るか
- 測った記録を残すか、成績書を出せるか
- 測る道具や設備(第3節の一覧と合わせて)
品質の管理の仕組みについて、第三者の認証を受けているなら、認証の名称、対象になっている範囲、有効期限を正確に書き、更新のたびに直してください。認証を受けていない場合も、気にしすぎることはありません。実際にしている検査と記録を具体的に書くほうが、設計の担当者には伝わります。認証の名前やマークの載せ方には決まりがあることが多く、認証によって違うので、認証を出している機関の案内で確かめてください。
近くの工場との協力で、受けられる範囲
金属加工の仕事は、1つの工場で全部が終わらないことがよくあります。めっきや塗装、熱処理、研磨などを、近くの工場にお願いしている場合は、その工程も含めて一括で受けられるかを書いてください。
- 自社で行う工程と、協力工場にお願いする工程
- 一括で受けた場合の窓口は自社であること
- 協力工場の工程を含めた納期の考え方
発注する人にとって、窓口が1つで済むことは大きな助けになります。ただし、協力工場の名前を出すときは、相手の了解を取ってください。名前を出さなくても、「表面処理は、長くお付き合いのある近くの工場で行います」と書けば伝わります。
ほかの工場から外注を受ける側としても、同じ書き方が役に立ちます。自社にない設備を持つ工場を探している人は、設備の一覧と、受けられる工程を見て連絡してきます。
8. 雄喜晃の伴走:加工の範囲と図面の受け方を、発注する人の言葉にします
私たちがやること
私たち雄喜晃は、「原稿をご用意ください」とは申し上げません。金属加工の町工場の場合は、できる加工と材質、大きさや精度、数量と納期、設備、図面の受け方、試作の扱い、検査と協力工場の範囲をお話で伺い、こちらで文章と表に整えます。
- 条件を一覧にする ― 「精密加工全般」をほどいて、加工の方法・材質・大きさ・数量・納期の表にします
- 図面の窓口を作る ― 受け取れる形式、見積もりに要る項目、秘密を守る約束を、送る側が迷わない形にまとめます
- 加工の例を組み立てる ― 取引先の了解の範囲を伺い、名前を伏せた例や、形を変えた見本で載せる形を一緒に考えます
- 写真を整えて載せる ― 設備や見本の写真は、貴社で撮っていただいたものをお預かりして、明るさや向きを整えて載せます。写り込みで気になるところがあれば、載せる前にお伝えします
月5回までの更新代行が月額に含まれているので、設備の入れ替え、加工の例の追加、受けられる数量の変更なども、ご連絡いただければこちらで反映します。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成の場合は月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
- 撮影はお受けしていません。写真は、貴社で撮っていただいたものを整えて載せるところまでです
- 取引先の了解のない図面や部品を載せることはしません。実際にない設備や事例を載せることもしません
- 加工の単価や、秘密保持の契約の中身を決めることはしません。契約の判断は、専門家に確かめていただきます
- 問い合わせの件数や検索の順位をお約束することもしません
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。
腕には自信があるのに、サイトでは「精密金属加工」の一言しか伝えられていないという方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:自分の図面を任せられるかを、読む人が判断できるように
受託で金属加工をする町工場のホームページで押さえることは、5つです。
- 6つの条件を、方法・名前・数字で書く ― 加工、材質、大きさ、精度、数量、納期。受けない加工も書く
- 設備は「何ができるか」とセットで ― 種類と台数に、加工できる大きさと一行の言い直しを添え、測る設備も載せる
- 加工の例は、取引先に配慮して見せる ― 了解のない部品は載せない。了解を取った例か、形を変えた見本で
- 図面の受け方と、秘密を守る約束を書く ― 受け取れる形式、見積もりに要る項目、返事の目安、図面の扱い
- 試作、検査、協力工場の範囲をはっきりさせる ― 1個から受けるか、何を測るか、どこまで一括で受けられるか
まず、今日できること
この1年に受けた見積もりの依頼のうち、受けられなかったものを書き出してみてください。材質が合わなかった、大きすぎた、数量が合わなかった、納期が間に合わなかった。その理由が、そのまま「受けない加工」と「条件の一覧」の中身になります。受けられた依頼と並べると、前に出すべき加工も見えてきます。
自社の加工の範囲を、発注する人に伝わる形にしたいという方は、一度ご相談ください。