1. 「値上げのお知らせ、どう書けばいいんでしょう」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「材料も人件費も上がって、来年から料金を上げることにしたんです。決めるまでは悩みましたが、決めてしまえば仕方ない。ただ、ホームページにどう書けばいいのかが分からなくて。お詫びの文章を長々と書くのも違う気がするし、黙って数字だけ変えるのも感じが悪いし」

値上げを決めるところまでは、経営の判断です。悩んで、決めて、そこで一区切りがつきます。ところが、決めたあとの「知らせ方」で、もう一度つまずく会社が少なくありません。

告知の文章、出す時期、既存のお客様への伝え方、出した見積もりの扱い、サイトに残る古い料金。一つずつは小さな作業ですが、順番を間違えると、値上げそのものより大きな不信につながります。

この記事では、値上げを決めたあとにホームページでやることを、告知の書き方と直す場所の両方から並べます。金額をいくらにするかの話はしません。それは貴社が決めることです。

この記事で書くこと

  • 告知の型 ― 「いつから・何が・いくらに」を先に書く
  • 理由の書き方 ― 短く、正直に
  • 知らせる順番 ― 既存のお客様が先、サイトが後
  • 改定日をまたぐ見積もり ― どの日を基準にするかを決めて書く
  • 古い料金が残る場所 ― サイトの中と外、紙まで

2. 信用が減るのは、金額より「知り方」のせい

値上げで離れるお客様は、もちろんいます。ただ、金額に納得できずに離れる人と、知り方に納得できずに離れる人は、分けて考えたほうがいいと思います。後者は、段取りで防げるからです。

見積もりで初めて知る

いちばん感じが悪いのは、この形です。前回と同じつもりで依頼したら、見積もりの金額が違う。聞いてみると「先月から改定しまして」と言われる。

金額の差が小さくても、お客様の中には「知らされていなかった」という記憶が残ります。値上げは仕方ないと思える人でも、後から知らされたことには引っかかります。

サイトの数字を見て来たのに、違う

二つ目は、サイトの料金表が古いまま残っている形です。サイトを見て「この金額なら」と連絡をくれた人に、実際は違いますと伝えることになります。

こちらに悪気がなくても、読む人からは書いてあることと違う会社に見えます。料金を公開している会社ほど、この形の事故は起きやすくなります。

告知はあるのに、肝心のことが書いていない

三つ目は、告知を出しているのに伝わっていない形です。「このたび、諸般の事情により価格を改定させていただくこととなりました」。ここで文章が終わっていて、いつから、何が、いくらになるのかが書かれていない。

これでは、読んだ人は結局問い合わせるしかありません。告知を出したことと、伝わったことは別です。

3. 告知は「いつから・何が・いくらに」を先に書く

告知の文章で、いちばん先に書くのは日付と金額です。お詫びや経緯は、その後で構いません。

1行目に、日付を書く

「〇年〇月〇日のご注文分から」「〇年〇月〇日のご来店から」。日付は、年まで入れて書きます。「来月から」「4月より」だと、いつ読まれたかで意味が変わります。お知らせは、思っているより長く読まれ続けるからです。

何の日付かも添えてください。注文の日なのか、作業の日なのか、請求の日なのか。ここが曖昧だと、改定日の前後でお客様と話が食い違います。これは第6章で詳しく書きます。

何が変わるのか、全部か一部か

全商品・全サービスが変わるのか、一部だけなのか。一部なら、変わるものを名前で挙げます。「一部の商品」とだけ書くと、全部が上がったように受け取られることがあります。

同じくらい大事なのが、変わらないものを書くことです。「出張費と点検料は据え置きます」「送料は変わりません」。一行あるだけで、読む人は自分に関係する範囲を測れます。

旧料金と新料金を、並べて書く

金額は、新しい料金だけでなく、旧料金と並べて書きます。お客様の頭の中にあるのは旧料金です。新しい数字だけ書かれても、どれくらい変わったのかを自分で計算しなければなりません。

税込か税別かの扱いも、数字のすぐ横に書きます。旧料金と新料金で書き方が違っていると、上がり幅が違って見えます。税の書き方を揃える話は ホームページの料金は、「税込」と「税別」のどちらで書くか にまとめてあります。

表:値上げの告知に入れる5つの部品(文面と金額の例はすべて架空)
部品書き方の例抜けると起きること
いつからたとえば「2027年4月1日のご注文分から」と、年と基準まで書く「来月から」だと、読んだ日によって意味が変わる
何がたとえば「定期点検と、部品交換の作業料」と名前で挙げる「一部」とだけ書くと、全部上がったと思われる
いくらにたとえば「定期点検 8,000円 → 9,000円(いずれも税込)」新しい数字だけだと、上がり幅を読む人が計算することになる
変わらないものたとえば「出張費と、ご相談・お見積もりは据え置きます」関係のない人まで、確かめる電話をかけてくる
理由たとえば「部品の仕入れ値が上がったためです」と1〜2文長いと言い訳に読まれる。短く1つ名指しすると伝わる

上の4つが揃っていれば、告知の役目はほぼ果たせます。理由は最後に、短く。お詫びの言葉は、5つの部品の後ろに1文添えれば足ります。

告知を出す場所

告知は、お知らせ欄に1本出すだけでは足りません。料金のページの、料金表のすぐ上にも同じ内容を短く置いてください。料金を見に来た人は、お知らせ欄を経由しないことが多いからです。

改定日の前は「〇年〇月〇日から、下記の料金に改定します」と旧新を並べます。改定日を過ぎたら、新料金だけの表に切り替えます。全商品の改定ならトップにも一行、一部だけなら料金のページとお知らせで足ります。

4. 理由は短く、正直に

告知でいちばん筆が止まるのが、理由の部分です。書きすぎても、書かなさすぎても、うまくいきません。

1〜2文で足りる

理由は、1〜2文で書けば足ります。「材料の仕入れ値と、配送にかかる費用が上がったためです」。これで十分伝わります。

長い経緯を書きたくなる気持ちは分かります。ただ、読む人が知りたいのは、自分の払う金額がどう変わるかです。理由の段落が長いと、肝心の日付と金額が埋もれます。そして長い説明は、どうしても言い訳に読まれやすくなります。

「諸般の事情」は、理由になっていない

逆に、理由をぼかしすぎるのも避けたいところです。「諸般の事情により」「昨今の情勢を鑑み」。こうした言い回しは、何も言っていないのと同じです。

読む人は、言えない理由があるのかと想像します。何が上がったのかを一つ名指しするだけで、文章の印象が変わります。

本当のことだけを書く

理由を書くときは、本当のことだけを書いてください。値上げの理由を「品質向上のため」と書いて、実際には何も変わらないなら、お客様は気づきます。

改定にあわせて本当に良くなることがあるなら、書いて構いません。保証の期間を延ばす、対応できる時間を広げる、といったことです。ただ、良くなることが無いのに、値上げを何かの改善に見せかける書き方はおすすめしません。値上げは値上げとして書いたほうが、結果として信用は残ります。

お詫びは、1文でいい

お詫びの言葉は、最後に1文で足ります。何度も謝ると、かえって読む人が落ち着きません。

文面の温度は、こんな形が収まりやすいと思います。文面と金額は、たとえばの例です。

「2027年4月1日のご注文分から、定期点検の料金を8,000円から9,000円(いずれも税込)に改定します。部品の仕入れ値が上がったためです。出張費とお見積もりは据え置きます。ご負担をおかけしますが、よろしくお願いいたします」

5つの部品が揃って、4文で終わっています。

5. 既存のお客様には、サイトより先に知らせる

告知の順番も大事です。今お付き合いのあるお客様には、サイトに出すより前に知らせてください。

サイトで知るのは、うれしくない

長くお付き合いのあるお客様が、たまたまサイトを開いて値上げを知る。こうなると、「自分には直接言ってくれなかった」という受け取り方になります。新しいお客様と同じ扱いをされた、と感じるからです。

順番は、継続のお客様に直接、次にサイトとお知らせ、最後にチラシや店頭です。直接と言っても、全員に電話をかける必要はありません。定期的に取引しているお客様には手紙かメール、来店型の商売なら店頭の掲示と口頭。お客様の数と関係の深さで決めます。

何日前に知らせるか

何日前に知らせるかは、商売によって違います。契約で取り決めがある場合は、それに従います。取引の形や業種によって決まりや慣習が違うことがあるので、迷う場合は所管の窓口や専門家に確認してください。

取り決めが無い場合でも、お客様が準備できるだけの期間を取るのが基本です。相手の側の都合から逆算すると、知らせる日が決まります。

既存のお客様だけの扱いを決めるなら、先に

既存のお客様には一定期間、旧料金で対応する。そう決める会社もあります。決めるなら、誰が対象で、いつまでかを先に決めてから知らせてください。

対象と期限が曖昧なまま「当面は据え置きます」と伝えると、その「当面」がいつまでかで、後からもめます。決めた内容は、サイトの告知にも一行書いておきます。そうすれば、社内の誰が電話に出ても同じ答えができます。

6. 改定日をまたぐ見積もりと申し込みの扱い

告知でいちばん抜けやすいのが、ここです。改定日の前に話が始まって、改定日の後に終わる仕事をどう扱うか。

どの日を基準にするかを決める

基準になりうる日は、いくつもあります。

  • 見積もりを出した日 ― 見積書の金額を守る形。お客様には分かりやすい
  • 申し込み・注文を受けた日 ― ネットの注文や、予約制の商売で使いやすい
  • 契約を結んだ日 ― 工事や制作のように、契約書を交わす商売
  • 作業や納品をした日 ― 回数で請求する、継続の仕事

どれが正しいということはありません。どれを使うかを決めて、告知に書くことが大事です。書いていないと、お客様は自分に有利な日で考えます。それは自然なことです。

見積書に、有効期限を書く

改定の前に出した見積書が、改定の後で使われることがあります。半年前の見積書を持って「この金額でお願いします」と言われる。こうした場面を防ぐのが、見積書の有効期限です。

期限が書かれていない見積書は、いつまでも有効に見えます。改定を決めたら、それ以降に出す見積書には期限を入れ、期限を過ぎたら新しい料金で出し直すことを書いておきます。

サイトの告知にも一文あると、問い合わせが落ち着きます。たとえば「改定日より前にお出しした見積書は、記載の有効期限まで、その金額でお受けします」。

定期のお客様と、予約制の商売

毎月決まった金額をいただいている定期のお客様には、どの月の請求から変わるかを月で書きます。「〇年〇月分のご請求から」。月の途中で変わると日割りの計算が要り、双方の手間が増えます。

予約制の商売では、予約を受けた日か、来店の日かを決めます。改定日の前に予約を受けて、改定日の後に来店するお客様がいるからです。予約の画面や確認のメールにも、同じ基準を書いておきます。

7. 古い料金が残る場所と、チラシ・Googleマップとの揃え方

告知を出したら、残る作業は古い料金を消すことです。改定日の当日に、新しい料金に揃っている状態を目指します。

サイトの中で、古い料金が残る場所

料金のページを直すのは、誰でも思い出します。残るのは、それ以外の場所です。

  • 料金表 ― 料金のページだけでなく、サービスのページの末尾や、トップの料金に触れた一行
  • よくある質問 ― 「いくらくらいかかりますか」への答えの中
  • PDF ― 価格表、会社案内、申込書のひな形
  • お知らせ・ブログ ― 過去のキャンペーンや、新サービス開始の記事の本文
  • 画像 ― バナーやメニュー表の画像に焼き込まれた数字

PDFと画像の中の文字は、サイト内を検索しても出てきません。開いて目で見るしかないので、直す場所の一覧に「PDFと画像を開く」を一行入れておいてください。料金を書いた場所を一枚の表にしておく考え方は、ホームページに料金を載せるか、載せないか の後半にも書いてあります。

過去のお知らせは、消さずに注記する

過去のキャンペーンやお知らせの記事に、旧料金が書かれていることがあります。消してしまう手もありますが、記事の冒頭に「この記事の料金は、〇年〇月時点のものです。現在の料金は料金のページをご覧ください」と一行足すほうが、行き止まりを作りません。

どの記事を残し、どれを消すかの判断は 古くなったページを、消すか・残すか・直すか にまとめてあります。終わったキャンペーンの片付け方は キャンペーンや期間限定の割引を、ホームページにどう載せるか にあります。

チラシ・名刺・店頭の掲示

紙は、サイトのようにはすぐ直せません。すでに配ったチラシは回収できません。だからこそ、サイトの側に「〇年〇月以前に配布したチラシの料金は、改定前のものです」と書いておくと、チラシを見て連絡してきた人との話が早くなります。

刷り直すときは、改定日に合わせて切り替えます。店頭の貼り紙も、前日までに用意しておきます。

Googleマップも、同じ日に

Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)に料金やメニュー、商品の価格を載せている場合は、サイトと同じ日に直してください。サイトとGoogleマップで金額が違うと、どちらが正しいのかをお客様が電話で確かめることになります。

サイトと名刺・封筒、Googleマップで書いてあることがずれていく仕組みは ホームページと名刺・封筒で、書いてあることが違う に書きました。料金も同じで、正しい数字を一か所に決めて、そこから写すのがいちばんずれません。

1ヶ月後に、旧料金で探す

改定からしばらく経ったら、旧料金の数字そのものでサイトを検索してみてください。「8,000」のように数字で探すと、直し忘れが出てきます。カンマの有無や全角・半角を変えて、何通りかで探します。

図:値上げを決めてから、古い料金が消えるまでの段取り(たとえばの流れ)
① 決める ― 改定日・対象・基準日

改定日、変わるものと変わらないもの、見積もりや予約をどの日で判断するか。この3つが決まってから、文面に取りかかります。

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② 既存のお客様に、直接知らせる

手紙・メール・店頭・口頭。お客様との関係で手段を選びます。既存のお客様だけの扱いを決めたなら、対象と期限もここで伝えます。

時期は、お客様が準備できる期間から逆算する。契約の取り決めがあれば、それに従う
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③ サイトに告知を出す

お知らせ欄に1本、料金のページの表の上に短く1つ。旧料金と新料金を並べ、基準日を書きます。

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④ 改定日の当日に、揃える

料金表を新料金だけに切り替え、よくある質問・PDF・画像・Googleマップ・店頭の掲示を同じ日に直します。

ここで一か所でも残ると、「書いてあることと違う」が起きます
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⑤ しばらく後に、旧料金の数字で探す

旧料金の数字でサイトを検索し、PDFと画像は開いて確かめます。告知の記事は、時間が経ったら「改定しました」の形に書き換えます。

見つかった場所は、次の改定のために一覧へ足しておく

時期は、貴社の商売とお客様との取り決めで決めてください。大事なのは時期より順番で、既存のお客様が先、サイトが後です。

8. 雄喜晃の伴走:告知の文面と、古い料金の片付けを一緒に

私たち雄喜晃は、自社の料金をサイトにすべて公開しています。月額8,800円(税別)、6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)、制作費0円。料金を公開している側として、書き換えのときに残りやすい場所を意識してサイトを作っています。

私たちがやること

  • 告知の文面を一緒に整える ― いつから・何が・いくらに・変わらないもの・理由の5つを伺い、短い告知文にします
  • 料金が書かれている場所を洗い出す ― 料金のページ、よくある質問、お知らせ、PDF、画像まで、一覧にします
  • 改定日に合わせて書き換える ― 告知を出す日と、新料金に切り替える日をお知らせいただければ、その日に合わせて反映します
  • 過去の記事に注記を入れる ― 旧料金が残る記事に、いつ時点の料金かを示す一行を足します

料金と条件

サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、告知の掲載や料金表の切り替え、過去の記事への注記も、この範囲で対応します。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

  • 値上げの金額や時期を、こちらで決めることはしません。価格は経営の判断です。私たちは、決まった内容を読む人に伝わる形にするところを担当します
  • 契約や取引の決まりに当たるかどうかの判断はしません。知らせる時期や、既存の契約の扱いで迷う点は、所管の窓口や専門家にご確認ください
  • 既存のお客様への手紙や電話を、貴社に代わって出すことはしません。お付き合いのある貴社から直接伝わることに、意味があるからです
  • 検索順位や問い合わせの増加をお約束することもしません

実際にお作りしたサイトは 制作実績、私たち自身の料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。

「値上げは決めたけれど、サイトのどこに古い料金が残っているか分からない」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:日付と金額を先に、古い料金は同じ日に消す

値上げをホームページで知らせるときに押さえることは、5つです。

  • 「いつから・何が・いくらに」を先に書く ― 日付は年まで。旧料金と新料金を並べ、変わらないものも書く
  • 理由は1〜2文で、本当のことを ― 「諸般の事情」でぼかさず、改善に見せかけない
  • 既存のお客様が先、サイトが後 ― サイトで知らされると、長いお客様ほど引っかかる
  • 改定日をまたぐ仕事の基準日を決めて書く ― 見積もり・申し込み・契約・作業のどの日か。見積書には有効期限を
  • 古い料金は、改定日に揃えて消す ― 料金表、よくある質問、PDF、お知らせ、画像、チラシ、Googleマップまで

値上げで離れるお客様を、ゼロにすることはできません。ただ、知らされ方に引っかかって離れるお客様は、段取りで減らせます。金額に納得してもらう前に、知らせ方で納得してもらう。そこまでは、こちらの準備でできることです。

まず、今日できること

貴社のサイトを開いて、いまの料金が書かれている場所を、思いつく限り紙に書き出してみてください。料金のページ、よくある質問、PDF、過去のお知らせ。書き出した一覧が、そのまま改定日に直す場所の一覧になります。

値上げの告知をどう書くか、どこから直せばいいか迷っているという方は、一度ご相談ください。