1. 「何でも刷れるので、何でもご相談くださいと書いています」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「うちは設備もそろっていて、チラシでも名刺でも箱でも、たいていのものは刷れるんです。だからサイトにも『何でもご相談ください』と書いているんですが、新しいお客様からの問い合わせはほとんど無くて」
何でもできるのは、印刷会社の大きな強みです。ただ、サイトを見に来た人にとって、「何でも」は判断の材料になりません。
見に来た人は、作りたいものを1つ頭に置いています。店のチラシを来月の催しまでに。商品の箱を少しだけ。会社の名刺を急ぎで。その1つが作れるか、どう頼めばいいか、いくらくらいか、いつ届くか。これが分からないと、条件が書いてある別の会社のほうに先に連絡します。
この記事では、印刷会社のホームページで、見に来た人が確かめていることにどう答えるかを整理します。
この記事で書くこと
- 見に来る人の2つの種類と、入口の分け方
- 作れるものを、品目ごとに写真と条件で見せる方法
- 入稿の決まりを1つのページにまとめる方法
- 納期の目安と、料金の決まり方・条件つきの目安
- デザインからの依頼、小ロットと急ぎ、相談の受け方、法人の定期の仕事
2. 見に来る人は、2種類いる
印刷会社のサイトに来る人は、大きく2つに分かれます。この違いを先に押さえると、何をどこに書くかが決まります。
データを持っている人
デザインを仕事にしている人や、会社で印刷物を担当している人です。データはもうできています。知りたいのは、入稿の決まり、紙と加工の選択肢、部数ごとの料金、何日で届くかです。
この人たちは、何社かを並べて条件で比べます。入稿の決まりが書いていない会社は、データを作り直すことになるかもしれないので、候補から外しやすくなります。
データを持っていない人
お店の店主や、小さな会社の社長です。作りたいものはあるけれど、データの作り方は分かりません。知りたいのは、デザインから頼めるか、何を用意すればいいか、全部でいくらか、相談だけでもいいかです。
この人たちは、入稿の決まりのページを見ると「自分には無理だ」と感じて閉じてしまうことがあります。専門の言葉が並んでいるからです。
入口を2つに分ける
そこで、トップページの最初の画面の近くに、「データをお持ちの方」と「デザインからご相談の方」の2つの入口を置きます。前者は入稿の決まりと料金表へ、後者はデザインからのご依頼の案内へ。同じサイトの中で、それぞれが自分の道を迷わずに進めるようにします。
| 確かめていること | 書いていないと起きること | 書く場所 |
|---|---|---|
| 何が作れるか | 作りたいものが入っているか分からず、問い合わせる前に離れる | 品目ごとの案内(写真と、紙・加工・部数) |
| データの作り方と入稿 | 入稿のあとで不備が見つかり、やり直しで日数が延びる | 入稿の決まりのページ |
| 納期 | 「間に合いますか」の電話で、毎回同じ説明をすることになる | 品目ごとの案内と、入稿の決まりのページ |
| 料金 | 桁が分からず、比べる候補から外れる | 料金の目安のページ(条件つき) |
| デザインから頼めるか | データの無い人が、頼めないと思い込む | デザインからのご依頼の案内 |
| 小ロット・急ぎ | 少ない部数は断られると思い、連絡してこない | 品目ごとの案内と、よくある質問 |
どの項目も、電話や窓口で毎回聞かれていることのはずです。聞かれる前に、聞かれる場所に書いておくのがサイトの役目です。書く場所は一例なので、品目の数やページの数に合わせて決めてください。
3. 作れるものを、品目ごとに写真と条件で見せる
品目ごとに区切る
チラシ、名刺、パンフレットや冊子、封筒や伝票、包装や箱、ポスターなどの大判。探している人は、品目の名前で探しています。品目ごとに1つの区切りを作ってください。品目が少なければ1ページの中で見出しを分け、多ければページを分けます。
品目ごとに書く条件
- サイズ ― よく受けるサイズと、それ以外のサイズを受けるかどうか
- 紙 ― よく選ばれる紙を数種類と、その厚さの違い。全部は並べず「ほかの紙もご相談ください」と添える
- 色 ― カラーか単色か、両面か片面か。決まった色のインクで刷れるか
- 加工 ― 折り、綴じ、穴あけ、型抜き、箔押し、表面の加工など。自社でできる加工と、協力会社に出す加工を分けて書く
- 部数 ― 何部から受けるか、どのくらいの部数が得意か
持っている印刷機の種類によって、得意な部数や紙は変わります。設備の一覧を載せるなら、型番を並べるより、その設備で何ができるかを一言添えてください。読む人が知りたいのは、設備の名前ではなく、自分の注文に向いているかどうかです。
条件を表にまとめる方法は、製品の仕様や寸法を、ホームページにどこまで載せるか に書きました。比べるのに要る項目だけを列にする、という考え方は印刷の品目でも同じです。
作例の写真は、手に取ったときの姿で
印刷物は、画面で見ても紙の厚さや手触りが伝わりません。だからこそ、写真の撮り方で差が出ます。
- 正面からの全体
- 手に持った姿。大きさが分かります
- 横から。紙の厚さや、冊子の綴じの厚みが分かります
- 加工の寄り。箔の光り方、型抜きの縁、折り目
- 並べた姿。種類の幅が分かります
お客様の印刷物を作例として載せるときは、載せてよいかを先に確かめてください。確かめられないものは、社名や連絡先を伏せるか、自社で作った見本で撮ります。
画面と紙の色の違いを、一言添える
作例の写真は、見る画面によって色が違って見えます。写真の近くに「画面の色は、実物と違って見える場合があります」と一行添えておくと、刷り上がりを見たときの行き違いが減ります。紙と画面で色が違って見える理由は、名刺やチラシと、ホームページの色が違って見える にまとめました。
4. 入稿の決まりは、1つのページにまとめる
データを持っている人がいちばん先に探すのが、入稿の決まりです。品目ごとのページに少しずつ散らばっていると、探しにくくなります。1つのページにまとめ、品目ごとのページからそこへつなぐ形にしてください。
書く項目
- 受けられるデータの形式と、受けられない形式
- 仕上がりのサイズ、塗り足しの幅、文字を端から離しておく幅
- 文字の扱い。文字を図形に変えておくか、書体を埋め込むか
- 画像の解像度の目安と、色の形式。画面用の色のままのデータがどう刷り上がるか
- 決まった色のインクを使う場合の指定のしかた
- 入稿の方法。アップロードか、メールか、持ち込みか。送れる容量の上限
幅や解像度の数字は、貴社の設備と決まりで書いてください。ほかの会社の案内を写すと、自社の工程と合わない数字が載ることがあります。
データの確認で、何を見て、何を見ないか
入稿のあとに何を確かめるかも書いておきます。見ることと見ないことを分けるのがコツです。
- 見ること ― サイズ、塗り足し、文字の置き換わり、画像の抜けなど、刷れるかどうかに関わること
- 見ないこと ― 誤字、電話番号の間違い、色の好みなど、内容に関わること
ここが書いていないと、刷り上がってから誤字が見つかったときに「確認してくれたはずでは」という話になります。校正を画面で行うのか、紙の見本を出すのか、その費用と日数も一緒に書いておきます。
不備があったときの流れ
不備が見つかったとき、どう連絡するのか、誰が直すのか、直すのに費用がかかるのか、納期がどう変わるのか。不備は起きるものとして、そのときの流れを先に書いておくと、連絡を受けた側も慌てずに済みます。
ひな形を配る
品目ごとに、仕上がりの線と塗り足しの線が入ったひな形を用意して、ダウンロードできるようにする方法があります。ひな形を使ってもらえれば、サイズの不備を減らせます。ファイルの名前や更新日の付け方、古い版の差し替えは、会社案内やカタログを、ホームページからダウンロードできるようにするか に書いた方法がそのまま使えます。
文書作成ソフトや手書きの原稿は
データを持っていない人のために、文書作成ソフトや表計算ソフトで作ったもの、手書きの原稿を受けるかどうかも書いておきます。受けるなら、どこからがデザインや組み直しの料金になるかを添えてください。
5. 納期は、いつから数えて、いつ届くかを書く
「何日でできますか」は、印刷会社がいちばん聞かれることの1つです。日数そのものより、数え方を書いておくことが大切です。
数え始める日と、終わりの日
入稿した日から数えるのか、データの確認が終わった日からか、校正の了承をもらった日からか、入金を確かめた日からか。何時までの入稿でその日に数えるのか。
終わりの日も同じです。発送する日なのか、届く日なのか。届く日で書くなら、地域によって変わることを添えます。ここがずれると、「金曜に届くと思っていた」「金曜に出すという意味でした」という行き違いが起きます。
日数が延びる条件
- 校正の戻りが遅れたとき
- 折り、綴じ、型抜き、箔押しなどの加工が入るとき
- 協力会社に出す加工があるとき
- 部数が多いとき、選んだ紙の在庫が無いとき
- 貴社の繁忙期
急ぎの相談は、何をすれば早くなるかと一緒に
「お急ぎの方はご相談ください」だけでは、何を相談すればいいのか分かりません。早くするためにお客様ができることを並べておきます。データがそろっていること、加工を減らすこと、校正を画面で済ませること。急ぎの料金がかかるなら、それも書きます。日数の書き方そのものは 納期や「何日かかるか」を、ホームページにどう書くか に詳しくまとめました。
6. 料金は、決まり方と条件つきの目安で見せる
何が変わると金額が動くかを書く
印刷の料金は、品目、サイズ、紙、色、部数、加工、納期で決まります。どれが変わると金額が動くかを先に書いておくと、読む人は自分の注文がどのあたりにあるかを測れます。
部数が増えると、1枚あたりが下がる理由
刷り方によって差はありますが、印刷には、刷り始める前の準備に一定の手間がかかります。この部分は、部数が少なくても多くても大きくは変わりません。そのため、部数が増えるほど1枚あたりの金額は下がっていきます。
これを一言書いておくと、「部数を10倍にしても、総額が10倍にならないのはなぜか」という質問に先に答えられます。逆に、少ない部数だと1枚あたりが高くなる理由も伝わります。
料金表で出すもの、目安で出すもの、見積もりで出すもの
すべての品目を同じ形で出す必要はありません。品目によって、出し方を分けます。
名刺やチラシのように、サイズ・紙・色・部数の組み合わせで金額が決まるもの。たとえば「名刺/片面カラー/標準の紙/100枚:〇,〇〇〇円(税別)」のように、条件と金額を1行で並べます。
パンフレットや冊子のように、ページ数や加工で金額が動くもの。たとえば「A4・8ページ・中綴じ・500部の場合の目安:〇万〜〇万円」のように、条件を決めた例を数件並べます。
包装や箱、特殊な加工のように、形や構造から決まるもの。金額の代わりに、見積もりに要る情報と、見積もりが出るまでの日数を書きます。過去の例を、規模と内容だけで載せる方法もあります。
全部を③にすると、データを持っている人は比べる段階で離れます。①で出せる品目は①で出し、残りを②と③に回すのが基本です。金額は、貴社の実際の料金で埋めてください。
金額の幅や条件の添え方は、ホームページに料金を載せるか、載せないか にまとめてあります。下限の金額だけを書くと、その金額で済むと思われやすい点も同じです。
料金表の外にかかるものを書く
デザインから頼む場合の料金、データの直しの料金、校正の紙の見本、送料、急ぎの料金。料金表の外にかかるものを、料金表のすぐ下に並べてください。税込か税別かも、表の上に一行で書いておきます。
7. デザイン、小ロットと急ぎ、相談の受け方、法人の定期の仕事
デザインから頼めるか
データを持っていない人に向けて、デザインから受けるなら、次のことを書きます。
- 用意してもらうもの ― 文字の原稿、ロゴ、写真、参考にしたい印刷物
- 進み方 ― 打ち合わせ、案の提出、修正、校正、印刷の順と、それぞれにかかる日数の目安
- 修正の回数 ― 何回まで料金に含まれるか
- 作ったデータの扱い ― お渡しできるか、次の注文のために保管するか、どのくらいの期間保管するか
最後の項目は、あとで揉めやすいところです。データを渡せるかどうか、渡すならどの形式かを先に書いておくと、別の会社に頼むときにも話がこじれません。
小ロットと急ぎは、受けるなら書く
少ない部数を受けるなら、何部から受けるかをはっきり書きます。少ない部数に向いた刷り方があるなら、その違いも一言添えます。「少ない部数でも大丈夫です」と書いてあるだけで、連絡してくる人がいます。受けない場合も、受けないと書いておくほうが親切です。
急ぎも同じです。受けられるなら、何時までの入稿でいつ出せるか、どの品目なら対応できるか、追加の料金がかかるかを書きます。
相談の受け方
印刷の相談は、聞くことが多くなりがちです。見積もりのフォームを作るなら、品目、サイズ、部数、紙、加工、希望の納期、データの有無を聞きます。
ただし、データを持っていない人は、紙や加工の名前を知りません。どの項目にも「分からない」「相談したい」を選べるようにしてください。手元にある似た印刷物の写真を添付できるようにしておくと、言葉で説明できない人でも伝えられます。項目の決め方は 見積もり依頼のフォームは、何をどこまで聞けばいいか に書きました。
電話や来店での相談を受けるなら、その受付時間も書きます。紙の見本を送れるなら、その頼み方も添えます。
法人の定期の仕事は、別の入口にする
名刺の追加、封筒や伝票の定期的な注文、社内報、毎年のカレンダー。法人の担当者が確かめたいのは、初めてのお客様とは別のことです。
- 前回と同じ内容での再注文のしかた
- データや版の保管の期間
- 請求書での支払いと、締め日・支払日
- 担当者が替わったときの引き継ぎ
法人向けの案内を1つ分けておくと、取引を検討している会社の担当者が、社内で回す材料にもなります。
8. 雄喜晃の伴走:作れるものと頼み方を、条件の形で並べます
私たちがやること
私たち雄喜晃は、印刷会社のホームページを作るとき、よく受ける注文と、電話や窓口でよく聞かれることを伺うところから始めます。そこから、品目ごとの案内、入稿の決まりのページ、料金の目安、相談の入口に分けて組み立てます。
入稿の決まりや料金は、貴社がいま使っている入稿の案内や料金表、見積もりの控えをもとに、文章と表に起こします。作例の写真は、貴社で撮っていただいたものをお預かりして、品目ごとに選び、明るさや向きを整えて載せます。
月5回までの更新代行が月額に含まれているので、料金の改定、年末年始の受付日程、ひな形の差し替えなども、ご連絡いただければこちらで反映します。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
先に書いておきます。私たちは、撮影はお受けしていません。作例の写真は、貴社で撮っていただいたものを整えて載せるところまでが私たちの仕事です。
入稿の決まりの数字や料金を、こちらで決めたり、推測で埋めたりすることもしません。載せる数字は、貴社の案内や担当の方の確認をもとにします。他社と料金を比べる表を作ることも、問い合わせの件数や検索の順位をお約束することもいたしません。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
「たいていのものは刷れるのに、サイトでは何が頼めるか伝わっていない」という印刷会社の方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:「何でも」を、条件の形に直す
印刷会社のホームページで押さえることは、5つです。
- 入口を2つに分ける ― データをお持ちの方と、デザインからご相談の方
- 作れるものを、品目ごとに条件と写真で ― サイズ・紙・色・加工・部数と、手に取ったときの姿
- 入稿の決まりを1つのページに ― 確認で見ることと見ないこと、不備のときの流れまで
- 納期は数え方を、料金は決まり方を ― 出せる品目は料金表で、残りは条件つきの目安と見積もりで
- 小ロット・急ぎ・法人の定期の仕事は、受けるなら書く ― 書いていないと、受けていないと思われる
「何でもご相談ください」という言葉そのものは、悪くありません。ただ、その前に、何をどんな条件で作れるかが書いてあってこそ、読む人は相談しようと思えます。
まず、今日できること
この1か月に受けた電話やメールの質問と、入稿で多かった不備を書き出してみてください。その答えがサイトのどこに書いてあるかを探してみると、足すべきページがそのまま見えてきます。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社が作れるものを、読む人が自分の注文に当てはめられる形にするところから、ご一緒します。