1. 「沿革を作ろうとしたら、年がはっきりしなくて」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。

「ホームページに沿革を載せようと思って書き出したんです。そうしたら、工場を移した年が、父の記憶と古いパンフレットで1年違っていて。どっちが正しいのか分からないまま、手が止まってしまいました」

沿革は、書き始めると意外なところで止まります。何を載せるか、年を西暦で書くか和暦で書くか。そして、書いた年が本当に正しいのか。

沿革に「創業のいきさつ」や「なぜこの仕事か」をどう添えるかは 会社の沿革と創業のいきさつを、ホームページでどう伝えるか にまとめました。会社概要のページに何行置くかは 会社概要のページに、何を載せるか に書いています。この記事は、その手前の話です。年表という表そのものを、どう作るかに絞って書きます。

この記事で書くこと

  • 沿革を見に来る人が、何を確かめているか
  • 載せる出来事と、載せない出来事の分け方
  • 1行の書き方と、西暦・和暦の揃え方
  • 登記や古い資料との照らし合わせ方と、分からない出来事の扱い
  • 歴史の短い会社の書き方、写真や地図を添えるかどうか
  • 更新の忘れを防ぐ仕組み

2. 沿革を見に来る人は、何を確かめているか

先に、沿革のページを開く人を思い浮かべます。読む人が分かると、表の作り方が決まります。

取引を考えている会社の担当者

はじめて取引する会社の担当者は、稟議を通す前に相手を調べます。見ているのは、どれくらい続いているかと、今の事業をいつから続けているかです。社名が変わった会社なら、旧社名も見ています。古い書類に残る名前と今の会社が同じだと分からないと、別の会社かと迷います。

応募を考えている人

求職者は、会社がどちらへ向かってきたかを見ています。事業を広げてきたのか、絞ってきたのか。拠点は増えているのか。今の代表がいつからなのかも、働く人には気になることです。

金融機関や、審査をする人

融資や取引の審査では、ホームページが書類の裏付けとして見られることがあります。沿革は、登記や決算書と食い違っていないかを照らし合わせる材料になります。

3者に共通するのは「照らし合わせ」

3者とも、手元の書類や、ほかのページと照らし合わせて沿革を読んでいます。求められるのは物語の面白さより、ほかの書類と合っていることです。この記事の残りは、この前提で書きます。

3. 載せる出来事と、載せない出来事

照らし合わせに使われる表だと考えると、載せる出来事の選び方がはっきりします。基準は2つです。ほかの書類にも残っている出来事か。そして、今の会社に頼むかどうかの判断に関係するか。

表:沿革に載せる出来事の選び方(書き方の例はすべて架空)
出来事載せるか書き方の例
創業・設立載せる。違うなら両方たとえば「1985年4月 個人で金属加工を始める」「1992年6月 株式会社として設立」
本店の移転載せるたとえば「2004年9月 本社を〇〇市△△町に移転」。番地までは書かなくてよい
社名の変更載せる。旧社名も書くたとえば「2010年4月 〇〇製作所から株式会社〇〇へ社名を変更」
事業の追加・撤退載せる。今の柱につながるものたとえば「2015年 住宅リフォームの受付を開始」「2019年 小売店舗を閉じ、加工に絞る」
代表の交代載せるたとえば「2021年7月 代表取締役に〇〇が就任」
許可の取得取得した年を載せる。更新は載せないたとえば「2008年 一般建設業の許可を取得(〇〇工事業)」
拠点の開設・閉鎖今あるものは載せるたとえば「2017年 〇〇営業所を開設」。閉じた拠点は、閉じた年も1行
増資・役員の異動多くは載せない今の資本金と役員は会社概要に書く。規模が大きく変わった1回だけ載せることはある
周年行事・社員旅行載せない社内には大切でも、照らし合わせの材料にならない
取引先の社名入りの出来事了解があるときだけ了解が無ければ「大手設備メーカーとの取引を開始」のように業種で書く

迷ったら、「この行は登記や許可証、決算書など、ほかの書類と照らし合わせられるか」と考えてください。照らし合わせられて、今の仕事に関係する行が、沿革の骨組みです。年と中身は、貴社の事実で書いてください。

許可は「取った年」と「範囲が広がった年」

許可には有効期間があり、更新を重ねている会社がほとんどです。更新のたびに1行足すと、表が更新の記録で埋まります。載せるのは、最初に取った年と、業種を追加したなど扱える範囲が広がった年です。今の許可の番号は、会社概要の欄に書きます。

社名の変更は、旧社名を消さない

社名を変えた会社は、新しい名前で揃えたくなります。気持ちは分かります。ただ、沿革からは旧社名を消さないでください。

取引先の古い書類、昔のお客様の記憶、ほかのサイトに残っている情報。旧社名はまだあちこちに残っています。沿革に1行あれば、旧社名で調べた人が今の会社にたどり着けます。社名を変えたときにサイトのどこを直すかは 移転・社名変更・代表交代のときに、サイトで直すところ に一覧にしてあります。

個人事業から会社へ、有限会社から株式会社へ

個人で始めて会社にした、有限会社から株式会社に変えた。こうした形の変わり目も1行ずつ載せます。創業の年だけを書くと、登記の設立年と合わなくなるからです。「創業〇年」の数え始めを、読む人が自分で確かめられるようにしておきます。

代替わりは、年と名前を1行で

代表の交代は、年と新しい代表の名前を1行で書きます。先代の扱いや引き継いだものは、表の外の話です。二代目の方が見直すところは 二代目が会社を継いだとき、ホームページで最初に見直すところ にまとめました。

4. 1行の書き方と、年の書き方を揃える

載せる出来事が決まったら、1行の形を揃えます。形が揃っていると、読む人は年と出来事だけを目で追えます。

1行に1つの出来事

1つの行には、1つの出来事だけを書きます。「本社を移転し、あわせて社名を変更、新工場を稼働」のように1行に詰めると、照らし合わせるときにどれがどの年か分からなくなります。同じ年に2つあれば、同じ年を2行書いて構いません。

書き方の形を揃える

「〇〇を開始」のように名詞で止めるか、「〇〇を始める」のように動詞で終えるか。どちらでもいいので、表の中では1つに揃えます。混ざっていると、別々の人が別々の時期に書き足した表に見えます。

月まで書くか

月まで分かる出来事は、月まで書きます。月が分からない行は、年だけで構いません。推測で埋めるより正直です。月の欄を作るなら、分からない行は空けておきます。

古い順か、新しい順か

並べる向きは、古い順が基本です。行数が多い会社は、新しい順にして今に近い出来事を上に置く形もあります。どちらにしても、会社案内や採用のページと向きを合わせてください。

表は、画像にせず文字で

年表を画像にして貼ると、文字をコピーできず、サイト内を検索しても出てきません。直すたびに画像も作り直しです。年表は文字の表として載せてください。

西暦と和暦、どちらで書くか

ここがいちばん迷われるところです。年の書き方は、だいたい次の3つです。

図:沿革の年の書き方を3つに分けると、向き不向きが変わる(例は架空)
① 西暦だけ
たとえば「1992年6月」

年の間隔がひと目で分かり、行どうしを比べやすい形です。改元をまたいでも書き方が変わりません。

迷ったら、まずこの形
② 西暦に、和暦を添える
たとえば「1992年(平成4年)6月」

年配のお客様が多い会社や、和暦の書類と照らし合わせることが多い会社に向いています。換算の間違いに気をつけます。

照らし合わせる相手が、和暦で書いているとき
③ 和暦だけ
たとえば「平成4年6月」

昭和・平成・令和をまたぐと、何年たったかを読む人が頭の中で計算することになります。選ぶなら、会社概要や会社案内も和暦で揃えます。

選ぶなら、サイト全体を和暦で

どれを選んでも構いませんが、沿革・会社概要・代表挨拶・会社案内の紙で、同じ書き方に揃えることがいちばん大事です。1つの表の中で西暦と和暦が混ざっている形だけは避けてください。

換算と改元の年に気をつける

登記の書類は和暦で書かれています。そこから西暦の沿革に写すときに、換算を1年間違えることがよく起きます。写したら、換算表と一度照らしてください。

改元の年も気をつけます。たとえば2019年は、4月までが平成31年、5月からが令和元年です。月まで書く行は、月を見て元号を決めます。和暦で書く場合は「元年」と「1年」のどちらにするかも、表の中で揃えておきます。

5. 事実の確かめ方と、分からない出来事の扱い

冒頭の「父の記憶とパンフレットで1年違う」は、どの会社でも起きることです。

登記の書類から始める

設立の年月、本店の移転、社名の変更、会社の形の変更、代表の交代。沿革の骨組みの多くは、登記の書類で裏が取れます。

ただし、今取れる証明書には、古い変更が載っていないことがあります。また、管轄の違う場所へ本店を移したことがある会社は、移る前の記録が前の場所の法務局に残っていることがあります。古い記録の取り方は、法務局の窓口で確かめてください。

許可証と通知書は、取得日と有効期間を分けて読む

許可の取得年は、許可証や通知書で確かめます。気をつけたいのは、手元にある許可証が最新の更新分だということです。今の許可証の日付は、最初に取った年ではないことが多いのです。最初の取得年は、古い許可証の控えや、許可番号の経緯で確かめます。分からなければ、許可を出した窓口に問い合わせてください。

古い資料は、日付の入ったものを集める

事業を始めた年や営業所を開いた年のように、登記に残らない出来事は、日付の入った資料で確かめます。

  • 古い会社案内やパンフレット ― 奥付や裏表紙に発行年が入っていることがある
  • 決算書や申告の控え ― 売上の内訳に、新しい事業が出てきた年が分かる
  • 契約書や請求書の控え ― 最初の取引の年が分かる
  • 古い名刺や封筒、看板の写真 ― 社名や住所が変わった時期の手がかりになる
  • 新聞や業界紙の記事 ― 掲載日が入っている

人の記憶は、資料の裏付けとして使います。記憶だけで書いた年は、よく1年ずれています。

資料どうしが食い違うときは

登記と古いパンフレットで年が違うなら、登記に残る出来事は登記を優先します。パンフレットは、作った人の記憶で書かれていることがあるからです。登記に残らない出来事なら、契約書や許可証の控えのような、日付の入った資料を優先します。決めた根拠は、社内の元の表に一言メモしておくと、次に直す人が迷いません。

分からない出来事は、幅で書くか、外す

どうしても確かめられない出来事もあります。そのときの扱いは3つです。

  • 幅で書く ― 「1970年代」「昭和40年代」のように、確かめられる範囲で書く
  • 年だけにする ― 月が分からないなら、年までで止める
  • 外す ― 年の見当もつかず、今の仕事にも関係が薄いなら、載せない

避けたいのは、分からない年を、それらしい年で埋めることです。あとで書類が出てきて食い違えば、ほかの行まで疑われます。

6. 歴史の短い会社と、写真・地図の添え方

設立から数年の会社は、「事業を始めた」行を足す

設立から数年の会社は、沿革が2〜3行で終わります。それで構いません。私たち雄喜晃も、2025年10月6日の設立で、沿革はまだ数行です。

足してよいのは、設立の次に、何を始めたかです。最初のサービスを始めた、許可を取った、今の事務所に移った。照らし合わせられる事実の行です。

行数を増やすために、小さな出来事で埋めない

短いと、行数を増やしたくなります。ホームページを開設した、名刺を作った、交流会に参加した。こうした行で埋めると、かえって中身が薄く見えます。

代表がそれまでに積んできた経験は、代表の経歴として別に書きます。前職の年を混ぜると、設立の年と食い違って見えるからです。これからの計画も書きません。行数が少ないうちは、会社概要の表の1項目として置く形で十分です。

写真は、行の横に小さく、少しだけ

写真を添えるなら、行の横に小さく、要所の数枚だけにします。すべての行に付けようとすると、写真の無い行が目立ちます。

古い写真の取り込み方や、写っている人への一声のかけ方は 会社の沿革と創業のいきさつを、ホームページでどう伝えるか に書きました。

地図は、移転の経緯が仕事に関係するときだけ

移転を重ねた会社では、昔の所在地を地図で見せたくなることがあります。同じ地域の中で場所を移しながら続けてきたことが、お客様の安心につながるなら、地図は効きます。

ただし、昔の所在地に今は別の家や会社があるなら、番地まで出さないでください。訪ねてしまう人が出て、今そこにいる方の迷惑になります。町名や地区名までで十分です。今の地図は、アクセスのページに置きます。

7. 更新の忘れを防ぐ

沿革は、一度作ると何年も触られません。その間に、出来事のほうは増えていきます。

足すきっかけは、だいたい決まっている

沿革に1行足す出来事は、ほとんどが手続きを伴います。

  • 登記を変えたとき ― 移転、社名の変更、代表の交代、会社の形の変更
  • 許可を取ったとき、範囲が広がったとき
  • 拠点を開いたとき、閉じたとき
  • 事業を始めたとき、やめたとき

手続きをする人とホームページを直す人が違うと、沿革は置き去りになります。手続きの段取り表に「沿革に1行足す」を書き加えておくのが、いちばん手間がかかりません。

元の表を、社内に1つだけ持つ

沿革は、会社案内の紙や採用のページ、取引の書類にも載ります。別々に直すと、どこかが古いまま残ります。

社内に、全部の出来事を載せた元の表を1つだけ持ってください。サイトの沿革は、そこから選んだ行で作ります。出来事が増えたら、まず元の表に足し、そこからサイトや紙へ写します。

見直す日を決めておく

決算の時期に、会社概要と一緒に沿革を開くと決めておくと、足し忘れに気づけます。周年を迎える年も、よい機会です。周年の知らせと沿革の分担は 創業○周年を、ホームページでどう伝えるか にまとめました。

沿革に「〇年〇月更新」の日付を出す必要は、多くの場合ありません。日付を出すページと出さないページの分け方は ホームページに「最終更新日」を出すかどうか に書いてあります。

手を付ける順番

  • Step 1(今週) ― 登記の書類と許可証の控えを手元に集め、今の沿革と1行ずつ見比べる
  • Step 2(今月) ― 載せる出来事と載せない出来事を分け、1行の形と年の書き方を揃える。分からない行は幅で書くか外す
  • Step 3(次の手続きから) ― 社内の元の表を1つにし、登記や許可の段取り表に「沿革に1行足す」を書き加える

8. 雄喜晃の伴走:書類と照らしながら、表を一緒に整えます

私たち雄喜晃のホームページ制作では、沿革を、記憶やパンフレットの写しだけで作ることはしません。登記の書類や許可証の控えを見せていただき、1行ずつ照らし合わせながら作ります。

私たちがやること

  • 載せる行を一緒に選ぶ ― 手元の年表や古い資料を拝見し、今の仕事に関係する行を選びます
  • 1行の形と年の書き方を揃える ― 西暦か和暦かを決め、会社概要とも合わせます。換算と改元の年も確かめます
  • 文字の表として載せる ― 画像にせず、スマートフォンでも読める表にします
  • 写真を整えて載せる ― 貴社で撮っていただいたものや、取り込んでいただいた古い写真を、向きや明るさを整えて載せます

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、移転や許可の取得で沿革に1行足すときも、ご連絡いただければこちらで反映します。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

  • 確かめられない年を、それらしく埋めることはしません。分からない行は、幅で書くか外すかをご相談します
  • 登記の書類を取り寄せる手続きや、許可の申請は代行しません。書類は貴社でご用意いただき、それを拝見して表を作ります
  • 撮影はお受けしていません。写真は、貴社で撮っていただいたものを整えて載せるところまでです
  • 沿革を整えることで、検索の順位や問い合わせの増加をお約束することもしません

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。

「沿革を作りかけたまま、年が確かめられずに止まっている」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:照らし合わせに耐える表にする

会社の沿革(年表)を作るときに押さえることは、5つです。

  • 沿革は、照らし合わせに使われる表 ― 取引先も応募者も金融機関も、ほかの書類と見比べて読んでいる
  • 載せるのは、書類に残っていて今の仕事に関係する出来事 ― 移転・社名の変更・事業の追加・代替わり・許可の取得。旧社名は消さない
  • 1行に1つ、年の書き方は1つ ― 西暦でも和暦でも、サイト全体と紙で揃える。換算と改元の年に気をつける
  • 登記と日付の入った資料で確かめる ― 分からない年は、埋めずに幅で書くか外す
  • 元の表を1つにして、手続きの段取りに組み込む ― 足すきっかけは、ほとんどが登記や許可の手続き

書類と1行ずつ合っている沿革は、それだけで会社の確かさを伝えます。

まず、今日できること

登記の書類を1枚出して、設立の年月と本店の所在地を、今のサイトの沿革と会社概要に照らしてみてください。食い違いが見つかれば、そこが最初に直す行です。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社が続けてきた年月を、確かめられる表にするところからご一緒します。