1. 「とりあえず、私のアドレスを載せてあります」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「サイトを作ったときに、連絡先のメールは何にしますかと聞かれて。その場で私のアドレスを伝えたんです。それがそのまま載っていて、名刺もチラシも同じものにしてしまいました。これで良かったのか、正直よく分かっていなくて」
ホームページに載せるメールアドレスは、制作の終わりのほうで、急いで決まることが多いものです。「アドレスは何にしましょう」と聞かれ、手元にあるものを伝えて、それで決まります。
ところが、このアドレスはサイトの中だけでなく、名刺や封筒、取引先の名簿にまで広がっていきます。何年かたってから変えようとすると、直す場所が多すぎて手が止まります。最初に少しだけ考えておく価値があります。
この記事で書くこと
- 代表の共用・部署ごと・個人の名前入り・無料のメールサービス、4種類の向き不向き
- 個人の名前のアドレスを載せると、辞めたときに何が起きるか
- 共用アドレスが放置されないための決めごと
- 迷惑メールを増やさない載せ方と、フォームとの併用
- 名刺やチラシとの揃え方と、変えたときの転送
独自ドメインやメールをどこで契約するかは 独自ドメインとメールアドレスは、どこで何を契約すればいいか に、送ったメールが相手に届かない問題は 会社から送ったメールが、相手の迷惑メールに入ってしまう にまとめました。この記事は、その間にある話です。アドレスの用意ができたあとで、どれを外に出すかを扱います。
2. 載せたアドレスは、思っているより長く残る
サイトの外へ、写っていく
サイトに載せたアドレスは、そこで止まりません。
- 名刺・封筒・チラシ ― 「サイトと同じものを」と頼まれて、そのまま刷られます
- 見積書や請求書のひな形 ― 一度入れると、毎回同じものが使われます
- 取引先の名簿や登録 ― 先方の社内の仕組みに、貴社の連絡先として残ります
- 外部のサイト ― 業界団体の会員名簿や、紹介してくれたページに書き写されます
- お客様のアドレス帳 ― 一度やりとりした人の手元に、ずっと残ります
取引先の登録や外部のサイト、お客様のアドレス帳は、こちらからは直せません。アドレスを変えても、古いアドレスに連絡が来続けるのはこのためです。
載せる前に、3つだけ決める
どのアドレスを載せるかは、次の3つで決まります。
- 誰が読むか ― 届いたメールを、毎日開く人は誰か
- 人が変わっても残るか ― 読む人が辞めたり異動したりしても、同じアドレスのまま使えるか
- どこまで同じものを使うか ― サイト、名刺、チラシ、看板で、同じアドレスを使うのか分けるのか
覚えやすさは、そのあとで構いません。読む人が決まっていて、人が変わっても残るものから選びます。
3. 4種類のアドレスの、向き不向き
候補は、だいたい4種類です。どれが正解というより、場所ごとに向き不向きがあります。
① 代表の共用アドレス(info@ など)
会社の独自ドメインで作る、人の名前が付いていないアドレスです。「info@」「contact@」のような形です。
ホームページに載せるなら、まずこれが候補になります。人が変わってもアドレスは変わりませんし、会社の窓口だと一目で分かります。
弱いところは1つです。誰が読むかを決めておかないと、誰も読まなくなることです。これは第5章で書きます。
② 部署・用件ごとのアドレス
「recruit@」「order@」のように、用件ごとに分けたアドレスです。用件ごとに読む人がはっきり分かれている会社に向きます。採用ページには採用用、取引先向けのページには受注用、と載せる場所も分けられます。
ただし、分けすぎると読まれないアドレスが出てきます。分けるのは、読む人が別々にいる用件だけにしてください。
③ 担当者個人の名前入りアドレス
「yamada@」のように、会社のドメインに個人の名前が付いたアドレスです。
これは、すでにやりとりが始まっている相手との連絡に向いています。一方で、ホームページのように不特定の人が見る場所には向きません。理由は第4章で書きます。
④ 無料のメールサービスのアドレス
独自ドメインではない、誰でも無料で作れるメールのアドレスです。
独自ドメインが無い時期には、これしか無いこともあります。ただ、取引先によっては、会社の窓口として信用しにくいと受け取られることがあります。見積書や請求書の宛先として使うと、確認の連絡が来ることもあります。
また、作った人しかパスワードを知らない形になりやすく、会社のものとして引き継ぎにくい面もあります。独自ドメインのアドレスを用意するまでの、つなぎと考えてください。
| 種類 | 向いている場所 | 人が変わったとき | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 代表の共用 たとえば info@ | ホームページ、チラシ、看板、会社案内 | そのまま使える。読む人を替えるだけ | 読む人と控えを決めないと、放置される |
| 部署・用件ごと たとえば recruit@ | 採用ページ、取引先向けのページなど、用件が決まっている場所 | そのまま使える。部署の中で読む人を替える | 分けすぎると、読まれないアドレスが出る |
| 個人の名前入り たとえば yamada@ | 名刺、やりとりが始まった相手への返信 | 載っている場所を全部直す。止めると届いたメールが行き場を失う | 不特定の人が見る場所には載せない |
| 無料のメールサービス | 独自ドメインを用意するまでのつなぎ | 作った人しか入れないことが多く、引き継ぎにくい | 会社の窓口として、信用しにくいと受け取られることがある |
ホームページに載せるのは、上の2つのどちらかが基本です。個人の名前入りは名刺に、共用や用件ごとはサイトとチラシに、と場所で分けると迷いません。
4. 個人の名前のアドレスを載せると、辞めたときに困る
個人の名前のアドレスを、ホームページに載せている場合に起きることです。
直す場所が、サイトの外にまで広がっている
担当者が辞めるとき、サイトのアドレスはすぐに書き換えられます。困るのは、第2章で書いた広がりのほうです。名刺は刷り直し、チラシは在庫が残り、取引先の登録には古いアドレスが残ります。サイトを直しても、連絡は古いアドレスに来続けます。
アドレスを止めると、届いたメールが行き場を失う
辞めた人のアドレスを、会社の側で止めることがあります。止めたあとに送られてきたメールは、送った人に「届きませんでした」と返るか、設定によってはどこにも届かずに終わります。
送った側は、問い合わせをしたつもりで返事を待っています。こちらは届いたことすら知りません。この形の取りこぼしは、あとから数えることもできません。
本人とのやりとりは、本人のアドレスでよい
誤解のないように書いておきます。個人の名前のアドレスを使うこと自体は、悪いことではありません。
- 最初の連絡は、共用のアドレスで受ける ― サイトやチラシから来る人は、誰に送ればいいか分かっていません
- 担当が決まったら、本人のアドレスでやりとりする ― 名刺を渡し、そこからは本人が受け持ちます
- 本人が休むときは、共用のアドレスを案内する ― 署名に共用のアドレスも1行入れておくと、相手が迷いません
入口は会社のもの、やりとりは人のもの。こう分けておけば、人が辞めても入口は止まりません。担当者が辞めるときに、登録やログインに使っていたアドレスを移す手順は ホームページの担当者が辞める・異動するときの引き継ぎ にまとめました。
社長1人の会社でも、共用のアドレスを作っておく
社員がいない会社でも、人を雇ったときや、事業を引き継ぐときに同じことが起きます。読むのは社長お一人のままで構わないので、載せる用の共用アドレスを1つ用意しておくと、あとで楽になります。
5. 共用アドレスは、誰が読むかを決めないと放置される
共用アドレスにすれば解決、とはいきません。
全員が読めるのは、誰も読まないのと同じ
社員みんなが読めるようにすると、全員が「誰かが読んでいるだろう」と思う状態になりやすいです。
個人のアドレスなら本人が読んでいたのに、共用にしたら誰も読まなくなった。これは珍しい話ではありません。
読む人を1人、控えを1人決める
決めることは単純です。
- 読む人 ― 毎日このアドレスを開く人を1人決める
- 控え ― 読む人が休んだ日や、出張の日に代わりに開く人を1人決める
- 読む時間 ― 朝と夕方など、開く時間をおおまかに決める
- 振り分け先 ― 自分で答えられないものを、誰に回すかを決める
読む人が全部に答える必要はありません。読んで、誰に回すかを決めるところまでが役目です。届いたあとの社内の決めごと全体は 問い合わせが増えたあと、社内で何を決めておくか に書きました。
返したことが、ほかの人から分かるようにする
読む人が2人いると、今度は2人とも返す、どちらも返さない、が起きます。返したら印を付ける、返した人の名前を記録に残す、といった決まりを1つ作っておきます。返したかどうかが、本人以外にも分かることが大事です。
6. 迷惑メールが増える問題と、載せ方
アドレスを載せたくない理由で多いのが、迷惑メールです。この心配はもっともです。
公開したアドレスは、自動で集められる
ホームページに文字で書かれたアドレスは、迷惑メールを送る側の仕組みに、自動で集められることがあります。載せたアドレスに迷惑メールが届くようになるのは、ある程度は避けられません。
とはいえ、隠せば済むわけでもありません。メールで送りたい人には、アドレスが見つからないこと自体が困りごとです。入口をメールだけにした場合の取りこぼしは 問い合わせを「メールだけ」にしている会社が、取りこぼしているもの に書きました。
画像にする・記号を置き換える、の損得
よく見るのが、アドレスを画像にして載せる方法や、「@」を全角の「@」や別の文字に置き換える方法です。集められにくくなる面はありますが、損もあります。
- 画像にした場合 ― コピーできず、手で打ち直すことになります。打ち間違えると届きません。読み上げの機能でも読めません
- 記号を置き換えた場合 ― 送る人が直す手間が増え、直し忘れると届きません
どちらも、迷惑メールを減らす代わりに、お客様の手間を増やしている形です。わざわざ送ってくれる人を、そこで落とすのはもったいないと考えます。
フォームを入口にして、アドレスは添付用に添える
おすすめしているのは、入口を2段にする形です。
- 問い合わせの入口はフォームにする ― いちばん目立つ場所に置きます。フォームには、自動で送られてくるものを減らす仕組み(Turnstile や reCAPTCHA など)を付けられます
- アドレスは、添付ファイルを送りたい人向けに添える ― 「図面や写真を送りたい方は、こちらのアドレスへ」と、用途と一緒に書きます
こうすると、アドレスは目立つ場所から外れ、必要な人にだけ届く形になります。フォームに届く営業メールの扱い方は 問い合わせフォームに届く営業メールを、どう扱うか にまとめました。
載せる用のアドレスを、社内用と分ける
もう1つの手は、外に載せるアドレスと、社内や取引先とのやりとりに使うアドレスを分けることです。
迷惑メールは、載せたアドレスに集まります。請求書や社内の連絡に使うアドレスを載せないでおけば、大事な連絡が埋もれにくくなります。
送る人には分かりやすい形です。ただ、自動で集められやすく、入口がこれだけだとメールが苦手な人は来ません。
集められにくくはなります。そのかわり、打ち直しや直し忘れで届かないことが起き、こちらは気づけません。
問い合わせはフォームに集まり、自動の送信を減らす仕組みも付けられます。アドレスは必要な人だけが使います。
どれを選んでも、迷惑メールがゼロになるわけではありません。減らすことより、大事な1通が埋もれない形にすることを先に考えてください。
7. 名刺やチラシと揃え、変えたときは転送でつなぐ
アドレスを決めたら、印刷物と揃えます。そして、いつか変えるときのことも考えておきます。
場所ごとに、どれを載せるかを決める
場所によって向くアドレスが違います。たとえば次のような分け方です。
- ホームページ・チラシ・看板・会社案内 ― 代表の共用アドレス。採用ページだけ用件ごとのアドレス、という分け方も
- 名刺 ― 本人のアドレス。余白があれば、共用アドレスも1行
- 見積書・請求書 ― 経理や受注の担当が読むアドレス
- メールの署名 ― 本人のアドレスに加えて、共用アドレスを1行
全部を同じにする必要はありません。どこに何を載せるかを、1枚に書いておくと、次に名刺やチラシを作る人が迷わずに済みます。
書き方を揃える
同じアドレスでも、一部を大文字にしたり、全角の英字が混ざったりすると、受け取る人が迷います。全角の英字は、そのままでは送れません。小文字の半角で揃え、印刷物にはサイトに載せた文字をそのままコピーして渡すと崩れにくくなります。
変えるときは、古いアドレスを転送で残す
個人の名前のアドレスから共用に切り替える。ドメインを変える。こうしてアドレスを変えるときは、古いアドレスを、すぐに止めないでください。
第2章で書いたように、取引先の登録やお客様のアドレス帳には、古いアドレスが残っています。こちらからは直せません。古いアドレスに届いたメールを、新しいアドレスへ転送する設定にしておけば、取りこぼしを防げます。
どのくらい残すかは、会社ごとに違います。取引の間隔が長い業種ほど、古いアドレスに連絡が来る期間も長くなります。いつまで転送するかを決めて、書き留めておいてください。決めないと、誰も知らない転送が残り続けます。
古いアドレスのドメインを手放すと、転送そのものができなくなります。ドメインの契約は残してください。
変えたときに直す場所
アドレスを変えたら、次の場所を順に見ていきます。
- サイトの中 ― フッター、会社概要、問い合わせ、採用、プライバシーポリシーの窓口
- フォームの設定 ― 通知が届く先、自動返信の差出人と署名
- サイトの外 ― Googleビジネスプロフィール、団体の名簿、紹介してくれた外部のサイト
- 印刷物と署名 ― 名刺、チラシ、封筒、見積書のひな形、社員のメールの署名
PDFや画像の中のアドレスは、サイト内を文字で探しても見つかりません。別の一覧にして確かめると漏れにくくなります。
8. 雄喜晃の伴走:載せるアドレスを、最初に一緒に決めます
私たち雄喜晃のホームページ制作では、サイトの連絡先を決める場面で、「このアドレスは、誰が毎日読みますか」と伺います。アドレスの形より先に、読む人を決めていただくためです。
私たちがやること
- 載せるアドレスを一緒に選ぶ ― 共用にするか、用件ごとに分けるかを、貴社の人数と仕事の種類から決めます。個人の名前のアドレスをサイトに載せることは、おすすめしていません
- フォームと併用する形にする ― 問い合わせの入口はフォームにし、アドレスは添付を送りたい方向けに、用途と一緒に載せます
- 通知の届く先を設定する ― フォームからの通知が、読む人と控えの方の両方に届くように作ります
- アドレスを変えたときの書き換え ― サイトの中で、アドレスが載っている場所をこちらで洗い出して直します
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)です。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、読む人が変わってアドレスを切り替えるときも、ご連絡いただければ反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
- 届いたメールを、私たちが代わりに読んで返すことはしません。問い合わせへの返事は、貴社の方の言葉がいちばん届くと考えています
- 社内で誰が読むかを、私たちが決めることはしません。読む人と控えは、貴社の中で決めていただきます。決めるための問いかけは、お打ち合わせの中でいたします
- 迷惑メールをなくすことや、問い合わせが増えることはお約束しません。できるのは、大事な連絡が埋もれにくい形に整えるところまでです
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
「サイトに載っているのが、自分の名前のアドレスのままになっている」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:アドレスは、読む人と残り方で選ぶ
ホームページに載せるメールアドレスを決めるときに、押さえることは5つです。
- 載せたアドレスは、サイトの外まで広がる ― 名刺、取引先の登録、お客様のアドレス帳。こちらから直せない場所に残る
- サイトには、共用か用件ごとのアドレスを ― 個人の名前入りは名刺とやりとりに。無料のメールサービスはつなぎにとどめる
- 共用アドレスは、読む人と控えを決める ― 全員が読めるのは、誰も読まないのと同じ。返したかどうかが分かるようにする
- 入口はフォームにして、アドレスは用途と添える ― 画像や記号の置き換えは、お客様の手間を増やす。載せる用と社内用を分ける
- 変えるときは、古いアドレスを転送で残す ― いつまで残すかを決め、直す場所を一覧にする
どのアドレスを載せるかは、小さなことに見えます。ただ、一度外に出たアドレスは、何年も貴社の窓口であり続けます。最初に少し考えておけば、人が変わっても窓口は止まりません。
まず、今日できること
貴社のホームページを開いて、載っているメールアドレスを見てください。そのアドレスを毎日読んでいるのは誰かを、すぐに答えられるか。答えが1人の名前で、その人が休んだ日のことが決まっていないなら、そこから始められます。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社の窓口を、読む人と一緒に決めるところからご一緒します。