1. 「自宅の住所を、全部出すのは怖いんです」
自宅で開業した経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「会社の住所が自宅なんです。ホームページに番地まで載せると、家の場所が誰にでも分かってしまう。でも住所を書かないと、ちゃんとした会社に見えないとも言われて。どうしたらいいんでしょう」
この悩みは、どちらの心配も正しいところが難しいです。全部出せば、家の場所が知られる。出さなければ、本当にある会社かどうかを疑われる。片方だけを見て決めると、もう片方の不安が残ります。
バーチャルオフィスやシェアオフィスを使っている会社も、同じところで迷います。住所はある。けれど、そこに人はいない。来られても困る。書いてある住所と、実際に働いている場所が違うという状態を、サイトでどう見せるかです。
答えは1つではありません。ただ、決め方の筋道はあります。この記事では、その筋道を順番に書きます。
この記事で書くこと
- 「出す不安」と「出さない不安」を、それぞれ分けて見る
- 番地まで・市区町村まで・事務所の住所、3つの選び方
- 番地を出さないときに、代わりに書いておくこと
- バーチャルオフィスの住所を載せるときの注意
- 来訪を受けない場合の書き方と、Googleマップの住所の扱い
- 名刺・請求書・登記と、住所の書き方を食い違わせない方法
2. 2つの不安は、どちらも本当にある
決める前に、2つの不安を分けて並べます。どちらが大きいかは、会社によって違います。並べてみると、自社でどちらが重いかが見えてきます。
出す不安:家の場所が、知らない人に分かる
番地まで載せると、地図で検索すれば家の前まで行けます。ここで心配になるのは、だいたい次のようなことです。
- 予告なく人が来る ― 営業の訪問、飛び込みの相談、ときには苦情
- 家族の暮らしと混ざる ― 子どもの通学路や、家族が出入りする時間が見える
- 郵便物が増える ― ダイレクトメールや勧誘の書類が、自宅に届き続ける
- あとから消しにくい ― 一度出した住所は、検索結果や他のサイトに写されて残ることがある
最後の点は、見落とされがちです。サイトの住所を消しても、どこかに写された情報までは消せません。だからこそ、最初に決めてから載せるほうが安全です。
出さない不安:本当にある会社か、確かめられない
一方で、住所が無い、または「兵庫県神戸市」で止まっているサイトを見ると、読む人は一歩引きます。
- 取引先の担当者 ― 新しく取引を始める前に、会社が実在するかを確かめたい
- 金融機関 ― 審査のときに、書類に書かれた所在地とサイトを見比べることがある
- 個人のお客様 ― お金を払う前に、何かあったときに連絡がつく相手かを知りたい
この人たちが見ているのは、住所そのものというより、確かめられるかどうかです。審査の場面で何が見られているかは 融資や取引の審査で、ホームページのどこが見られているか に整理しました。
不安の大きさは、仕事の形で決まる
2つを並べると分かることがあります。出す不安が大きいのは、自宅に家族がいて、来訪を受けない仕事の会社です。出さない不安が大きいのは、法人との取引が多い会社や、前払いでお金をいただく会社です。
自社がどちらに近いか。ここを先に決めておくと、次の章の選び方で迷いにくくなります。
3. 住所の載せ方は、3つから選ぶ
住所の載せ方は、大きく分けると3つです。どれが正しいかではなく、どれが貴社の仕事の形に合うかで選びます。
判断の軸は「来る人がいるか」と「確かめる人がいるか」
選ぶときに見るのは、2つの問いです。
- 来る人がいるか ― お客様が貴社の場所まで来る仕事か、こちらから伺う仕事か
- 確かめる人がいるか ― 取引先や金融機関など、所在地を照らし合わせる相手がどれくらいいるか
来る人がいるなら、番地まで書かないと辿り着けません。来る人がいなくて、確かめる人も少ないなら、市区町村までで足りる場面が多くなります。確かめる人は多いけれど自宅は出したくない、という場合に、事務所の住所という選び方が出てきます。
| 載せ方 | 向いている場面 | 気をつけること | 書き方の例 |
|---|---|---|---|
| ① 番地・建物名まで載せる | お客様が来る仕事。店舗、教室、自宅での打ち合わせ | 来訪の扱いを一文で添える。表札と建物名の違いで迷わせない | たとえば「〒000-0000 神戸市北区〇〇町1-2-3(ご来訪はご予約の方のみ)」 |
| ② 市区町村・町名まで載せる | こちらから伺う仕事。来訪を受けず、確かめる相手が多くない | 実在を示す材料が減るので、ほかの情報で補う必要がある | たとえば「神戸市北区(詳しい所在地は、お取引の際にお伝えします)」 |
| ③ 事務所の住所を載せる | バーチャルオフィスやシェアオフィスと契約していて、確かめる相手が多い | そこで何ができて、何ができないかを正直に書く。業種によっては使えない場合がある | たとえば「〒000-0000 神戸市中央区〇〇1-2-3 〇〇ビル5階(郵便物の受け取り窓口です。ご来訪はお受けしていません)」 |
どれを選んでも、住所のすぐそばに一文を添えるところは同じです。その一文があるかどうかで、読む人の受け取り方が変わります。郵便番号や番地は架空の例なので、貴社の実際の表記に置き換えてください。
迷ったときは、仕事の形が変わったら見直す前提で
どれにするか決めきれないときは、今の仕事の形に合わせて決め、形が変わったら見直すと考えてください。最初は伺う仕事だけだったけれど、教室を始めた。個人のお客様が中心だったけれど、法人の取引が増えた。そうした変化があったときが、住所の出し方を見直すときです。
4. 番地まで出さないときに、代わりに書くこと
②の市区町村までを選んだ場合、実在を示す材料が1つ減ります。そのぶんを、ほかの情報で補います。
住所の横に、理由を一文で添える
まず、住所が短いことに理由があると分かるようにします。
「自宅を事務所としているため、詳しい所在地はお取引の際にお伝えしています」
この一文があると、読む人は「隠している」ではなく「事情がある」と受け取ります。書いていないのと、書かない理由が書いてあるのとでは、印象がまったく違います。
実在を示すものを、ほかの場所で増やす
住所で確かめられないぶん、次のような情報を揃えておきます。
- 代表者の名前と顔 ― 誰がやっている会社かが分かると、所在地の短さが気になりにくくなります
- つながる電話番号と受付時間 ― かければ本人が出る、または折り返しがある
- 仕事の記録 ― どの地域で、どんな仕事をしてきたか。社名を出さなくても、傾向だけで伝わります
- 許認可の番号 ― 許可が要る業種なら、名称・行政庁・番号まで書いておく
- 対応エリア ― 「神戸市北区・西区、三田市」のように、動いている範囲を市区町村で書く
対応エリアの書き方は 「対応エリア」を、ホームページにどう書くか で詳しく書きました。住所を短くした会社ほど、エリアは正確に書くと、読む人は「近くの会社だ」と判断できます。
聞かれたら、すぐ答えられるようにしておく
サイトに出さなくても、所在地を聞かれる場面はあります。取引の申込書、見積書の宛先、金融機関の書類。聞かれたときに、迷わず同じ表記で答えられるようにしておいてください。
サイトには市区町村まで、書類には番地まで。この使い分け自体は問題ありません。気をつけたいのは、書類ごとに表記がばらばらになることです。これは7章で書きます。
一人で回している会社のサイト全体の考え方は 一人社長・家族経営の会社の、ホームページ にまとめてあります。住所の判断も、その一部として考えると決めやすくなります。
5. バーチャルオフィスやシェアオフィスの住所を載せるとき
③の事務所の住所を選ぶ場合です。自宅を出さずに、番地まで書いた住所を載せられるのが利点です。ただし、書き方を間違えると、かえって信用を落とします。
そこで何ができるかを、正直に書く
いちばん大事なのは、その住所が何のための場所かを書くことです。
- 郵便物の受け取りだけの場合 ― 「郵便物の受け取り窓口です。ご来訪はお受けしていません」
- 会議室を借りられる場合 ― 「打ち合わせは、事前のご予約で、こちらの会議室で行います」
- 実際に働いている場合 ― シェアオフィスに日常的にいるなら、在席している曜日や時間を書く
住所だけを書いて、そこに常に人がいるように見せるのは避けてください。訪ねてきた人が、受付で「その会社の方は普段いません」と言われる。この一回で、サイトに書いてあることすべてが疑わしく見えます。
地図の埋め込みは、来てほしいときだけ
事務所の住所を載せたときに、そのまま地図を埋め込んでいるサイトがあります。地図があると、読む人は「ここに行けば会える」と受け取ります。来訪を受けないなら、地図は載せないほうが誤解がありません。
来てもらう場面があるなら、地図と一緒に、建物の入口や受付の使い方を書いておきます。来る人を迷わせない書き方は 「アクセス」のページで、来る人を迷わせない にまとめました。
業種によっては、使えない場合がある
ここは注意が要ります。許認可が必要な業種では、事務所としての実体が求められる場合があります。決まった広さや設備、人がいることなどが条件になることもあります。
また、法人の登記をどこにするか、金融機関の口座をどう開くかといった場面でも、バーチャルオフィスの扱いはそれぞれ違うことがあります。ここは業種や手続きによって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。サイトに載せる前に、その住所で仕事を続けられるかを先に確かめておくと、あとで住所を変える手間が減ります。
6. 来訪を受けない場合の書き方と、Googleマップの住所
どの載せ方を選んでも、来訪を受けないなら、それを書いておくことが大事です。書いていないと、来ていいのかどうかを読む人が判断できません。
来訪の扱いを、一文で書く
書き方の例を、場面ごとに挙げます。
- 来訪を受けない ― 「事務所でのご対応はしていません。打ち合わせは、お客様のところへ伺うか、オンラインで行います」
- 予約があれば受ける ― 「ご来訪はご予約の方のみとさせていただいています。前日までにお電話でご連絡ください」
- 日を決めて受ける ― 「ご来訪は、毎週水曜の午後にお受けしています」
「ご来訪はご予約の方のみ」という一文は、番地まで載せる場合にも効きます。住所が分かっても、予約なしで来る人が減ります。この一文は、住所のすぐ横と、問い合わせのページの両方に置いてください。
郵送と荷物の届け先も書く
来訪を受けなくても、郵便や荷物は届きます。書類の送り先、見本や部品の送り先がサイトの住所と違うなら、それも書いておきます。
「書類のご送付は、上記の住所あてにお願いします」「お荷物は、事前にご連絡のうえでお送りください」。この一行があると、取引先の担当者が迷いません。
Googleビジネスプロフィールの住所を、表示しない設定
Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)では、お客様のところへ伺う形の事業の場合、住所を表示せずに、サービスを提供する地域だけを示す設定を選べる場合があります。自宅を地図に出したくない会社には、検討の余地がある方法です。
ただし、次の点は先に知っておいてください。
- 登録のときには、住所の入力や確認を求められることがある ― 表示しないことと、登録しないことは別です
- 実際に人がいない住所は、登録の対象にならない場合がある ― バーチャルオフィスの住所をそのまま地図に出すことは、認められない場合があります
- 条件や画面は、変わることがある ― 実際にどうできるかは、その時点のGoogleの公式ヘルプで確かめる
地図とサイトのどちらから整えるかは Googleマップとホームページ、どちらを先に整えるか で整理しました。地図で住所を出さないなら、サイトでも同じ範囲にそろえると、読む人が混乱しません。
7. 名刺・請求書・登記と、食い違わせない
住所の出し方を決めたあと、いちばん起きやすいのが食い違いです。サイトと名刺と請求書で、住所の書き方がそれぞれ違う。これは悪意がなくても起きます。
よくある食い違い
たとえば、こんな状態です。
- サイトは市区町村まで、名刺は番地まで ― これ自体は使い分けとして成り立ちますが、どちらを正とするかが決まっていないと混乱します
- 登記は自宅、サイトはバーチャルオフィス ― 取引先が登記の情報を見たとき、別の住所が出てきて戸惑うことがある
- 請求書だけ、前の住所のまま ― 移転や契約の切り替えのあと、ひな形を直し忘れている
- 地図とサイトで、番地の書き方が違う ― 「1丁目2番3号」と「1-2-3」が混ざっている
「どこに、どこまで書くか」を1枚にする
防ぎ方は、住所を書く場所ごとに、どこまで書くかを1枚の表にしておくことです。
- 登記 ― 本店の所在地。ここが基準になる
- ホームページ ― 決めた範囲。番地までか、市区町村までか、事務所の住所か
- 名刺・請求書・見積書 ― 取引で使う住所。番地まで書くことが多い
- Googleビジネスプロフィール ― 表示するか、地域だけにするか
- 郵送・荷物の送り先 ― 上のどれと同じか、別か
表にしておくと、新しく書類を作るときにも迷いません。会社概要に何をどう載せるかは 会社概要のページに、何を載せるか に書きました。会社概要の所在地は、この表の「ホームページ」の行と同じにしてください。
表示が求められる業種と、通信販売
ここは一般論としてお伝えします。業種によっては、所在地をきちんと示すことが求められる場合があります。許認可を受けている業種や、ネットで物やサービスを売る通信販売の表示などです。
通信販売の場合、事業者の住所の表示には決まりがあり、省略できる条件や方法も決まっています。自宅の住所をどう扱えるかは、業種や販売のしかたによって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。サイトの他のページでは市区町村までにしていても、表示が求められるページでは扱いが別になる、ということもあります。
住所を変えたときは、表の上から順に直す
引っ越し、事務所の契約の変更、自宅から事務所への移転。住所が変わったら、さきほどの表を上から順に見て、全部の場所を直します。
サイトの中でも、会社概要、フッター、問い合わせのページ、プライバシーポリシー、PDFの資料など、住所が入っている場所は思ったより多くあります。画像やPDFの中の文字は、サイト内を検索しても出てきません。表に「直した日」の欄を作っておくと、抜けが見つけやすくなります。
8. 雄喜晃の伴走:住所の範囲を、仕事の形から一緒に決めます
私たち雄喜晃がサイトをお作りするときは、住所を載せる前に、仕事の形を伺います。お客様が来る仕事か、伺う仕事か。取引先や金融機関に所在地を確かめられる場面が多いか。ご家族と住んでいるか。そのうえで、3つの載せ方のどれが合うかを一緒に考えます。
私たちがやること
決まった範囲で、会社概要、フッター、問い合わせのページまで、住所を同じ表記でそろえて入れます。登記の内容、名刺、請求書と照らし合わせて、番地の書き方や建物名の有無も合わせます。住所の横に置く一文、たとえば「ご来訪はご予約の方のみ」も、貴社の実際の対応に合わせて書きます。
番地を出さない場合は、代わりに実在を示す情報を、代表者の紹介や対応エリアのページで補います。住所は画像ではなく文字で載せます。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、事務所を移った、来訪の受け方を変えた、といった書き換えも、ご連絡いただければこちらで反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
住所をどこまで出すかを、こちらで決めることはしません。判断の材料はお出ししますが、決めるのは代表です。家族の暮らしに関わることなので、なおさらです。
また、表示の決まりに当たるかどうかの判断も、私たちはしません。業種や販売のしかたによって決まりがありそうな場合は、そうお伝えしたうえで、所管の窓口や専門家への確認をお願いしています。人がいない住所を、常に人がいる事務所のように見せる書き方もしません。訪ねてきた方が困り、貴社の信用が下がるからです。検索の順位や、問い合わせの件数をお約束することもいたしません。
私たち自身も、神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月に設立した小さな会社です。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。「自宅の住所をどこまで出すか、決められないまま止まっている」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:隠すか出すかではなく、範囲と一文を決める
自宅やバーチャルオフィスで開業している会社が、住所を載せるときに押さえることは5つです。
- 2つの不安を分けて見る ― 家の場所が知られる不安と、実在を疑われる不安。どちらが重いかは、仕事の形で決まります
- 3つの載せ方から選ぶ ― 番地まで、市区町村まで、事務所の住所。軸は「来る人がいるか」と「確かめる人がいるか」
- 出さないなら、ほかで補う ― 代表者の名前、つながる電話、仕事の記録、許認可の番号、対応エリア
- 来訪の扱いを一文で書く ― 「ご来訪はご予約の方のみ」。住所の横と、問い合わせのページに
- 食い違わせない ― 登記・サイト・名刺・請求書・地図で、どこまで書くかを1枚の表にする
住所の悩みは、全部出すか、全部隠すかの二択に見えるから、決められなくなります。実際には、範囲を選んで、そばに一文を添えるだけで、2つの不安はどちらも小さくできます。
今日できることを1つだけ挙げます。いま住所が書いてある場所を、登記・サイト・名刺・請求書・地図の5つについて、紙に書き出してみてください。並べてみると、どこが食い違っているかと、どこまで出すかを決めていなかった場所が、両方見えてきます。