1. 「うちみたいな小さいところが、ホームページを出しても」
一人で会社を回している方や、ご家族で事業をされている方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「うちは私と家内の2人だけですから。ホームページを作っても、大きい会社と並べられたら見劣りするでしょう。作るならせめて、ちゃんとした会社に見えるようにしたいんです」
お気持ちはよく分かります。ただ、私が現場で見てきた限り、小さい会社のホームページで失点につながりやすいのは、小さいことそのものではありません。小さいことを隠そうとして、誰がやっている会社なのかが分からなくなることのほうです。
そもそもホームページが要るかどうかの判断は 創業したての会社に、ホームページは本当に必要か に、月額制の仕組みと注意点は 「制作費0円」のホームページは、どこで回収されているのか にまとめました。この記事は、作ると決めたあとの書き方の話です。
この記事で書くこと
小さい会社がやりがちな「大きく見せる」書き方と、それが逆効果になる理由。そのうえで、代表本人を前に出す書き方、小ささを強みとして書く方法、できないことを先に書く理由、電話・屋号・住所の扱いまでを順に整理します。読み終わったときに、貴社のサイトで最初に直す1行が決まることを目指します。
2. 小さい会社がやりがちな、「大きく見せる」書き方
まず、よく見る形から挙げます。どれも悪気はなく、ちゃんとして見せたいという真面目さから生まれるものです。
「スタッフ一同」「弊社チーム」と書いてしまう
代表お一人の会社なのに、トップページに「スタッフ一同、心よりお待ちしております」と書いてある。ご夫婦2人の工務店なのに、「経験豊富な弊社チームが対応します」と書いてある。実際にはかなりの頻度で見かけます。
書いた側に嘘をつくつもりはありません。ほかの会社のサイトを参考にしているうちに、言い回しがそのまま入ってきただけです。ですが、読む側は書いてあるとおりに受け取ります。何人かいる会社なのだろう、と思ってから問い合わせてきます。
ストック写真で、社員を演出する
もう1つが写真です。素材サイトで買った、会議室で笑い合うスーツ姿の男女の写真。ヘルメットをかぶって図面を囲む作業員の写真。貴社の誰も写っていない写真が、スタッフのように置かれているサイトがあります。
素材写真を使うこと自体が悪いわけではありません。背景や挿絵として使う分には問題になりにくいです。避けたいのは、知らない人の顔を、貴社の人であるかのように見せる使い方です。
なぜ、逆効果になるのか
理由ははっきりしていて、会ったときにずれが分かるからです。
- 来てみたら、代表1人だった。「チーム」を期待していたお客様は、そこで小さな違和感を持ちます。仕事の中身とは関係なく、最初の印象が一段下がります
- 素材写真は、思っている以上に見抜かれる。同じ写真を別の会社のサイトで見たことがある人は、意外に多いものです。一度気づかれると、他の記述まで疑われます
- 誰が来るのか分からないまま、問い合わせることになる。小さい会社に頼みたい人ほど、ここを確かめたがっています。その答えが書いていないと、問い合わせる前に離れます
社員紹介の考え方は 社員紹介ページは、本当に要るのか にも書きましたが、1つの誇張は、ページ全体の信用を下げます。大きく見せて得られるものより、会ったときに失うもののほうが大きい、というのが私の見方です。
3. 「誰が来るのか」「誰が対応するのか」を、はっきり書く
小さい会社のサイトで、いちばん効くのはここです。問い合わせる前の人がいちばん知りたいのは、誰が来て、誰が対応してくれるのかだからです。
代表本人の写真と名前を出す
一人で回している会社なら、答えは1つです。代表本人の写真と名前を、トップページから見える場所に置いてください。会社概要の奥ではなく、最初の画面か、その少し下です。
写真はプロに撮ってもらわなくても構いません。明るい場所で、作業着や普段の仕事着で、正面から撮った1枚で十分です。大事なのは上手さより、会ったときに同じ人が来ることです。写真の撮り方は ホームページの写真を、社内のスマートフォンで撮る にまとめてあります。
名前の横には、一言だけ添えるのがおすすめです。「お見積りから工事、アフターまで、私が伺います」。この一文があるだけで、問い合わせる側の不安がかなり減ります。
家族経営なら、家族で出る
ご家族でやっている会社なら、家族で出てください。「現場は主人、電話と事務は私が担当しています」「父と息子の2人で施工しています」。役割まで書くと、問い合わせる側は誰に何を聞けばいいかが分かります。
家族経営であることは、隠すようなことではありません。長く続いている、顔が変わらない、地元にいる。探している側は、そういう会社を求めていることが少なくありません。家族が写った1枚は、素材写真の何十枚よりも、その会社らしさを伝えます。
顔を出せない事情があるとき
とはいえ、顔を出したくない方もいらっしゃいます。ご家族のうち1人は出たくない、ということもよくあります。無理に出す必要はありません。
その場合でも、名前と役割は書けます。手元だけの写真、作業中の後ろ姿、道具や車の写真でも、「この人がやっている」ことは伝わります。避けたいのは、顔を出さない代わりに素材写真の誰かで埋めることです。空いている場所を他人で埋めるより、空いたままのほうが誠実に見えます。
4. 小さいことを、強みとして書く
隠すのをやめたら、次は書き方です。小さい会社には、大きい会社が書けない強みがあります。それを事実として書けば、それがそのまま選ばれる理由になります。
人数を曖昧にし、素材写真で社員を演出する書き方です。読む側は書いてあるとおりに受け取るので、会ったときに期待とのずれが生まれます。
代表本人の写真と名前を出し、誰が来て誰が対応するかを書く書き方です。窓口が1つで担当が変わらないことを、事実として伝えます。
大きな案件、同時に何件も、夜間休日の即日対応。受けられない仕事を先に書く書き方です。合わない依頼が来る前に、相手に見送ってもらえます。
①は小ささを隠し、②と③は小ささをそのまま使います。②で選ばれる理由を作り、③で合わない依頼を減らすという組み合わせです。②だけでも効きますが、一人で回している会社ほど③が時間を守ってくれます。
窓口が1人なので、話が早い
大きい会社に問い合わせると、受付の人が聞いて、担当に回して、担当が上に確認して、という流れになります。小さい会社は、最初に話した人がそのまま決められます。
これは書けば伝わる強みです。「お電話いただいた私が、その場でお答えします」「見積りの判断も私がしますので、持ち帰りません」。急いでいるお客様にとって、これは価格より効くことがあります。
担当が変わらない
「前の担当の方が辞めて、また一から説明し直しになった」。大きい会社に頼んだことがある人ほど、この経験をしています。一人や家族でやっている会社は、担当が変わりません。
5年前に工事した家のことを、同じ人が覚えている。前回の打ち合わせの内容を、説明しなくても分かっている。長く付き合う仕事ほど、これは大きな価値になります。「10年後も私が伺います」と書ける会社は、実はそれほど多くありません。
融通がきく
決まった手順や社内規定がない分、小さい会社は相手に合わせられます。少量の注文、細かい仕様の変更、ほかの会社に断られた相談。大きい会社が受けにくいものほど、受けられることがあります。
ただし、ここは書き方に注意が要ります。「どんなご要望にもお応えします」と書くと、次の節で書く「できないこと」とぶつかります。融通がきく範囲を、具体的に書いてください。「1個からご注文いただけます」「図面がなくても、現物を見てお見積りします」のように、です。
強みは「事実」で書く
3つに共通する注意を1つだけ書いておきます。形容詞ではなく、事実で書いてください。「丁寧な対応」「迅速な対応」は、どの会社も書いているので読み飛ばされます。
「お問い合わせには、その日のうちに私から折り返します」「見積りは現地を見た翌日にお出しします」。数字や手順が入っている文は、読む側が自分の場面に当てはめられます。小さい会社ほど、こういう約束を本当に守れるはずです。
5. できないこと、出られないことを、先に書く
一人で回している会社のサイトで、私が必ずお勧めしているのがこれです。できないことを、できることと同じくらいはっきり書く。
書いておくと、合わない依頼が来ない
できないことを書くのは、勇気が要ります。問い合わせが減るのではないか、と心配になるからです。ですが実際には、減るのは合わない依頼のほうです。
一人で回している会社にとって、いちばん重いのは、受けられない依頼に対応する時間です。電話に出て、話を聞いて、現地を見に行って、そこで「この規模はうちでは無理です」とお断りする。その半日は、本来の仕事の時間から削られています。最初から書いておけば、その半日が戻ってきます。
書いておく3つ
具体的には、次の3つを書いておくと効きます。
- 大きな案件。「マンション一棟の工事はお受けしていません」「100個以上のロットは対応できません」。規模の上限を書きます
- 同時に何件も。「一度にお受けできるのは2件までです。混み合っているときは、着工まで1ヶ月ほどお待ちいただくことがあります」。待つ可能性を先に伝えます
- 夜間・休日の即日対応。「夜間と日曜日の緊急対応はしていません」。急ぎの相手には、最初から別の会社を探してもらえます
書き方は、謝るより言い切るほうが伝わります。「申し訳ございませんが」を重ねるより、「お受けしていません」と一行で書くほうが、判断の軸がある会社として読まれます。可能なら、「その場合は〇〇のような専門の会社にご相談ください」と、どこに頼めばいいかの種類まで添えると親切です。
電話に出られないときは、一文書いておく
一人で現場に出ていると、電話に出られない時間が必ずあります。屋根の上にいる、運転している、お客様と話している。出られないこと自体は、仕方のないことです。問題になるのは、出られない理由が相手に分からないことです。
だから、電話番号の近くに一文書いておいてください。
「作業中は電話に出られないことがあります。着信を確認して、その日のうちに折り返します」
この一文があると、相手は「出ない会社」ではなく「作業中の会社」と受け取ります。2回目の電話をかけてくれる確率も、メッセージを残してくれる確率も変わります。
留守番電話は、必ず設定する
そして、留守番電話は必ず設定してください。呼び出し音が鳴り続けて切れるだけの電話は、相手から見ると、営業しているかどうかも分かりません。
応答メッセージには、会社名と、折り返すことを入れます。「〇〇工務店の〇〇です。ただいま作業中で出られません。お名前とご用件を残していただければ、本日中に折り返します」。折り返すと言ったら、必ず折り返してください。電話まわりの直し方は 「ホームページから電話が鳴らない」を、電話の側から直す に詳しく書いてあります。
6. 屋号・会社名・住所の出し方
小さい会社ならではの、表記の話です。ここは地味ですが、取引や検索の場面で、あとから効いてきます。
個人事業主の屋号は、屋号と名前をセットで書く
個人事業主の方は、屋号だけで書くのではなく、「〇〇塗装(代表 山田太郎)」のように、屋号と名前をセットで書くのがおすすめです。請求書や契約書では個人名が使われることが多いので、サイトと書類で名前がつながっていると、相手が確認しやすくなります。
また、個人事業のうちは「株式会社」や「〇〇会社」とは名乗れない決まりになっています。屋号に会社らしさを足したくなったときも、ここは越えないでください。「〇〇工房」「〇〇設計事務所」のように、屋号として自然な名前で十分に伝わります。
法人化したときに、直すところ
個人事業から法人化すると、サイトの中で直す場所がいくつも出てきます。名前が変わる場所は、思っているより多いです。
- 会社概要。屋号から正式な会社名へ。代表者の肩書き、設立年月、所在地(登記した住所)も見直します
- フッターとページのタイトル。すべてのページに入っているので、1箇所でも漏れると目立ちます
- 問い合わせの自動返信メールと署名。サイトの外で使われるので、直し忘れやすいところです
- プライバシーポリシーの事業者名。個人名や屋号のまま残っていることがよくあります
- Googleマップの名前。サイトと表記を揃えないと、別の事業者に見えてしまいます
「創業」と「設立」の違いも、このときに整理しておくと混乱しません。個人事業を始めた年と、法人を作った年は別なので、両方を書く場合は分けて書きます。直す場所の一覧は 移転・社名変更・代表交代のときに、サイトで直すところ にもまとめてあります。
自宅兼事務所の住所を、番地まで出すか
自宅で事業をしている方から、いちばん多くいただくご相談がこれです。判断の基準は、お客様が来るかどうかだと私は考えています。
- お客様が来る(店舗、教室、打ち合わせを自宅で行う)なら、番地まで書かないと辿り着けません。建物の目印や駐車場の有無まで書いておくと親切です
- お客様が来ない(こちらから現場に伺う仕事)なら、市区町村や町名までにとどめる会社もあります。そのうえで「対応エリア」をはっきり書くほうが、相手には役に立ちます
ただし、業種によっては、所在地をきちんと示すことが求められる場面があります。通信販売をしている場合や、許認可の関係で表示が必要な場合です。ここは業種ごとに違うので、該当しそうな場合は、所管の窓口や専門家に確認してください。取引先の与信で番地まで求められることもあるので、出さない場合も、聞かれたらすぐ答えられるようにしておきます。
Googleマップの住所表示
Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)では、お客様のところへ伺う形の事業の場合、住所を表示せずに、対応エリアだけを示す設定を選べる場合があります。自宅の場所を地図に出したくない方には、検討の余地がある方法です。
ただ、設定の条件や画面は変わることがあります。実際にどうできるかは、Googleの公式ヘルプで、その時点の案内を確認してください。一度出した住所は、検索結果や地図アプリの履歴に残ることもあるので、最初に決めてから登録するほうが安全です。地図とサイトのどちらから整えるかは Googleマップとホームページ、どちらを先に整えるか で整理しました。
7. 手を付ける順番 ― 1ページから始めればいい
ここまで書いたことを、一度に全部やる必要はありません。一人で回している会社ほど、小さく始めて、少しずつ足すほうが続きます。
Step 1(最初の1ヶ月):1ページだけ作る
最初は1ページで足ります。何をしている会社か、代表は誰か、どこまで対応するか、連絡先。この4つが1枚に載っていれば、紹介や与信の場面はほぼカバーできます。
10ページの構成を最初に考えると、原稿を書く時間が取れずに止まります。止まったまま半年、というのはよくある話です。進め方は 1ページから始めて、あとから増やす進め方 に書きました。
Step 2(2〜3ヶ月目):代表の写真と「できないこと」を足す
1ページが出来たら、次に足すのは2つです。代表本人の写真と、できないことの一覧。どちらも新しく調べる必要がなく、代表の頭の中にすでにあるものです。
できないことは、過去に断った依頼を思い出すと書きやすくなります。「この3ヶ月で、何をお断りしたか」。断った理由が、そのまま書くべき一行になります。
Step 3(それ以降):代表1人でも更新できる形にしておく
小さい会社では、更新は代表がやるしかありません。担当者を置けないからです。誰かに頼むとしても、頼む連絡をするのは代表です。だからこそ、最初から更新しやすい形で作っておくことが大事になります。
具体的には、直す場所を少なくしておくことです。営業時間や対応エリアのように変わりやすい情報は1箇所にまとめる。お知らせ欄を作るなら、月1回で回る量にとどめる。更新が止まらない仕組みの作り方は 更新を続けられる会社と、止まる会社の違い にまとめてあります。
8. 雄喜晃の伴走:小さい会社を、小さいまま伝えます
私たち雄喜晃も、2025年10月に神戸市北区鈴蘭台で設立した、大きくない会社です。小さい会社が大きく見せたくなる気持ちも、それが会ったときにどう響くかも、自分のこととして分かります。
制作では、代表の方にお話を伺い、誰が来て、誰が対応して、何をお受けしていないのかを一緒に言葉にします。「この3ヶ月でお断りした依頼はありましたか」と必ず伺います。できないことの一行は、たいていそこから出てきます。
更新についても、代表お一人で抱え込まずに済む形にしています。月額8,800円(税別)、制作費は0円で、サーバー・ドメイン・SSL・保守が含まれます。月5回までの更新代行も含まれているので、「対応エリアを広げた」「休業日が変わった」といった変更は、ご連絡いただければこちらで直します。
一方で、私たちがやらないことも書いておきます。素材写真で社員がいるように見せる演出や、実際より大きく見せる書き方はしません。ご依頼いただいてもお断りしています。会ったときに困るのは貴社だからです。そして、住所をどこまで出すかを、私たちが決めることもしません。判断の材料はお出ししますが、決めるのは代表です。業種によって表示の決まりがありそうな場合は、そうお伝えしたうえで、確認先をご案内します。
「一人でやっているけれど、それをどう書けばいいか分からない」という経営者の方は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。
9. まとめ:誰が来るか分かることが、選ばれる理由になる
一人社長や家族経営の会社のホームページで押さえることは、4つです。
- 大きく見せない ― 「スタッフ一同」と素材写真の社員は、会ったときのずれになります
- 誰が来て、誰が対応するかを書く ― 代表本人の写真と名前。家族なら家族で、役割まで書きます
- できないことと、出られないことを先に書く ― 合わない依頼が減り、電話に出られない時間も誤解されません
- 1ページから始めて、代表1人で直せる形にする ― 更新は代表がやるしかないから、直す場所を少なくします
この4つは、どれも費用をかけずに書けるものです。小さいことは、隠すより書いたほうが、合うお客様に届きます。
まずは貴社のサイトを開いて、「スタッフ一同」「弊社チーム」という言葉が無いか探してみてください。見つかったら、そこを「私が伺います」に書き換えるところからで十分です。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社の小ささを、そのまま強みとして伝える形を、一緒に作っていきましょう。