1. 「技術のことを書いても、伝わらないんです」

IT やシステム開発の会社を経営されている方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「うちのサイト、使っている技術や開発の環境はきちんと書いてあるんです。でも、問い合わせてくるのは同業ばかりで。本当に来てほしい会社の社長さんには、何をしている会社なのか分かってもらえていない気がするんですよね」

この話には、はっきりした理由があります。発注を決める人と、技術を見て判断できる人が、別の人だからです。

小さな会社から仕事を請ける場合、相手の会社には情報システムの担当者がいないことがほとんどです。連絡するかどうかを決めるのは、社長か、総務を兼ねている方です。その方は、技術の名前では探していません。「毎月の集計に3日かかっている」「前に頼んだ業者と連絡がつかない」という、困りごとの言葉で探しています。

この記事の役割

専門用語の多い仕事を、言い換えを添えて説明する考え方は、専門用語の多い仕事を、ホームページでどう説明するか に業種を問わずまとめてあります。この記事は、その考え方を小さな IT・システム開発の会社に当てはめたものです。受託開発、社内システム、保守、パソコンやネットワークの設定。こうした仕事を請ける会社が、サイトのどこに何を置くかを書きます。

この記事で書くこと

  • サービスを、お客様の困りごとの言葉で並べ直す
  • 作ったものの例を、守秘義務の範囲で書く
  • 進め方と、費用の決まり方を書く
  • 作ったあとの保守を、範囲で書く
  • 小さな相談から受けるかどうかと、技術の一覧の置き場所

2. 発注を決める人は、技術の言葉で探していない

先に、読む人のことを整理しておきます。サイトを読む人が誰かで、書く言葉が変わるからです。

読む人は、3種類いる

小さな IT 会社のサイトを開く人は、だいたい次の3種類です。

  • 発注を決める経営者や総務の方 ― 技術には詳しくない。困っていることを解決してくれるか、いくらか、頼んだあと面倒を見てくれるかを知りたい
  • 相手の会社の中で、多少パソコンに詳しい方 ― 社長から「この会社どう?」と聞かれて、技術の欄を確かめる役
  • 同業や元請けの会社 ― 外注先や協力先を探していて、技術の一覧と体制を見たい

技術の名前が並んだサイトは、3人目にはよく届きます。ところが、発注を決めるのは、たいてい1人目です。

困りごとには、3つの段がある

お客様が使う言葉は、だいたい3つの段に分かれます。

  • 困りごとの言葉 ― 「同じ数字を3か所に打ち込んでいる」「パソコンが急に立ち上がらない」
  • 仕事の名前 ― 「業務の効率化」「システムの保守」
  • 技術の名前 ― 使っている言語や、サーバーの構成の名前

発注を決める方が検索で打つのは、ほとんどが1段目です。見出しを1段目で書き、本文で2段目と3段目を添える。これが基本の形です。

3. サービスを、困りごとの言葉で並べ直す

ここから具体的な書き方です。まず、サービスの並べ方を変えます。

社内の分け方で並べない

多くの IT 会社のサイトは、サービスを社内の部署や工程の分け方で並べています。「受託開発」「インフラ構築」「保守運用」「ヘルプデスク」。社内ではこの分け方がいちばん分かりやすいのですが、読む人は、自分の困りごとがどれに入るのかを判断できません。

「社内のファイルを外からも見られるようにしたい」という方は、それが開発なのか構築なのか保守なのかを知りません。分からないので、どこにも入らないと思って閉じます。

1つのサービスに、困りごとを2〜3個添える

並べ直すといっても、サービスの数を変える必要はありません。各サービスの名前の上か下に、そのサービスで解決できる困りごとを2〜3個、お客様の言葉で添えるだけです。

表:社内の呼び方を、お客様の困りごとの言葉に直す(例はすべて架空の書き方です)
社内の呼び方お客様の困りごとの言葉(見出しに使う)本文で添えること
受託開発たとえば「受注から請求まで、同じ数字を何度も打ち込んでいる」専用の仕組みを作ること。今の作業の流れを伺うところから始める、と書く
社内システムの改修たとえば「前の業者が作った仕組みを、誰も直せない」他社が作ったものを引き継げるか、引き継げない場合はどう判断するか
保守・運用たとえば「止まったときに、誰に電話すればいいか分からない」連絡の窓口、受付時間、何が保守に含まれるか
パソコン・ネットワークの設定たとえば「新しい人が入るたびに、パソコンの準備で半日つぶれる」1台からでも伺うか、出張の範囲と費用の決まり方

真ん中の列は、どれも技術の言葉を使っていません。見出しは困りごとで、技術の言葉は本文で添えるだけです。実際の言葉は、貴社にかかってきた電話や問い合わせの最初の一言から拾ってください。

困りごとの言葉は、最初の電話から拾う

この言葉を、社内で考えて作る必要はありません。お客様が最初の電話やメールで言った一言が、そのまま使えます。

「何をお願いすればいいのか分からないんですが」と前置きしたあとに続く言葉が、見出しの材料です。似た言葉が何度も出てくるものから、見出しにします。

困りごとで入ってきた人が次に確かめるのは、何をしてくれるのか、いくらくらいか、どう進むのかです。ページ全体の組み立て方は サービス紹介のページは、どの順番で書けばいいか に整理しました。

4. 作ったものの例を、守秘義務の範囲で書く

IT 会社の実績は、ほかの業種より書きにくいものです。工務店のように完成した建物の写真を見せることができません。しかも、多くの仕事に秘密を守る約束がついています。それでも、書ける範囲はあります。

社名は出さず、業種と規模と課題で書く

いちばん使いやすい形は、業種・規模・困っていたこと・やったこと・その後の5つで1件を書く形です。

  • 業種と規模 ― たとえば「県内の食品卸/従業員30名ほど」
  • 困っていたこと ― たとえば「受注の電話をメモで受けて、夕方に表計算のファイルへ打ち直していた」
  • やったこと ― たとえば「受注をその場で入力できる画面を作り、請求書の作成までつなげた」
  • かかった期間 ― たとえば「相談から使い始めまで、約3ヶ月」
  • その後 ― たとえば「夕方の打ち直しの作業がなくなった、とご担当の方から伺っています」

上の例はすべて架空です。社名を出さなくても、読む人は「うちと似た会社があるか」を探せます。似た業種や規模の例があると、自分の困りごとも頼めそうだと感じてもらえます。実績の1件ごとの書き方は 実績ページに何を書くと、次の依頼につながるか に詳しく書いてあります。

守秘の扱いは、契約と相手の了解が先

ここは一般論として書きます。お客様との契約に、秘密を守る約束や、取引の事実を外に出さない約束が入っていることがあります。その場合は、サイトに何をどこまで書けるかは、契約の中身と、相手の了解で決まります。

  • 契約書を読み直す ― 秘密の範囲、取引の事実を出してよいか、成果物を紹介してよいか
  • 書く前に、相手に文面を見せる ― 業種と規模だけでも、相手によっては会社が特定されることがあります
  • 了解は、記録に残す ― 担当者が代わっても確かめられるように、メールなどで

社名やロゴを並べる場合の考え方は 取引先の名前やロゴを、ホームページに載せてよいか にまとめました。判断に迷う契約の文言は、専門家に確認してください。

画面の写真の代わりに、流れの図を置く

作った仕組みの画面をそのまま載せると、お客様の情報や業務のやり方が写り込むことがあります。画面の写真を載せる場合は、相手の了解を取ったうえで、数字や名前を消したものにします。

画面が出せない場合は、作業の流れを前後で並べた図で代わりになります。読む人が知りたいのは画面のデザインではなく、自分の会社の仕事がどう変わるかです。

結果は、数字が出せなくても書ける

測っていない数字を、推測で書かないでください。代わりに、起きた変化をそのまま書きます。「月末に残業していた作業が、当日中に終わるようになったと伺っています」のように、誰から聞いた話かを添えれば十分です。

5. 進め方と、費用の決まり方を書く

IT の仕事は、発注する側から見て先が読みにくい買い物です。何から始まって、いつ終わって、いくらかかるのかが見えないと、相談をためらわれます。

進め方を、お客様がすることで書く

社内の工程表をそのまま載せるのではなく、お客様の側が、各段階で何をするのかを書きます。

図:相談から使い始めるまでを、お客様がすることで書く(例は架空)
① ご相談(30分〜1時間ほど)

今困っていることを、そのままの言葉で伺います。資料のご用意は要りません。

お客様がすること:困っている作業を、ふだんの言葉で話す
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② 今の作業を見せていただく

実際に作業している方に、手順を見せていただきます。ここで、作るべきものと、作らなくてよいものを分けます。

お客様がすること:担当の方に、1〜2時間ほど時間を取っていただく
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③ お見積もりと、進め方のご提案

何を作るか、何を作らないか、期間と費用を書面でお出しします。この段階でお断りいただいても、費用はかかりません。

ここで「作らないもの」を決めておかないと、あとで費用が膨らみます
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④ 作る・途中で確かめていただく

出来上がったところから、実際に触っていただきます。気になるところは、この段階で直します。

お客様がすること:途中の画面を見て、使いにくいところを伝える
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⑤ 使い始め・その後の保守

使い方を担当の方にお伝えし、使い始めます。その後の問い合わせの窓口と、保守の範囲もここでお渡しします。

お客様がすること:最初の1ヶ月は、気づいたことを書き留めておく

各段の時間や中身は、貴社の実際の進め方で書いてください。読む人が知りたいのは、社内の工程ではなく、自分がいつ何をすればいいかです。③で断っても費用がかからないなら、そのことは一行で書いておくと相談のハードルが下がります。

費用は、金額より決まり方を先に書く

開発の費用は、作るものによって大きく変わります。1つの数字で言い切れないのは当然です。ただ、何で金額が決まるのかは書けます。

  • 作業の量で決まるもの ― 画面や帳票の数、つなぐ仕組みの数
  • 人と期間で決まるもの ― 何人で、どのくらいの期間かかるか
  • 今あるものとの関係で決まるもの ― 古い仕組みのデータを移すか、他社の仕組みとつなぐか

これに加えて、小さな仕事の例を1〜2件、条件つきで出せると、読む人は自分がどのあたりにいるかを測れます。たとえば「パソコンの初期設定は1台いくらから」「既存の表計算のファイルの集計を自動にする作業で、よくあるご依頼はこのくらいの幅」のように、条件と幅を添えます。数字は貴社の実際のもので書いてください。

途中で中身が変わったときの扱い

IT の仕事でいちばん揉めやすいのは、作っている途中で「やはりこれも」と中身が増えたときです。サイトの段階で、途中で中身が変わったときにどうするかを書いておきます。

「お見積もりの範囲を超えるご要望は、作業の前に追加の費用と期間をお伝えし、ご了解をいただいてから進めます」。この一文で、「勝手に増えないか」という心配が減ります。

6. 作ったあとの保守を、範囲で書く

発注を決める方が最後に気にするのは、作ったあとに、この会社が面倒を見てくれるかどうかです。前の業者で苦労した方ほど、ここを確かめます。

保守に含まれるもの、含まれないもの

「保守対応いたします」だけでは、何をしてもらえるのかが分かりません。含まれるものと含まれないものを、並べて書きます。

  • 含まれるものの例 ― 不具合の調査と修正、問い合わせへの回答、定期的な点検
  • 含まれないものの例 ― 新しい機能の追加、画面の大きな作り直し、お客様側で起きたパソコンの故障

保守の費用が月額か、その都度かも書きます。

連絡の窓口と、止まったときの動き

止まったときに誰に連絡すればいいかは、保守のページの最初に置きます。電話かメールか、受付時間は何時から何時までか、時間外はどうなるか。夜間や休日に対応しないなら、そう書いておくほうが誠実です。

少人数の会社なら、「担当が不在の場合も、翌営業日までに折り返します」のように、守れる範囲で書いてください。

預かる情報の扱いも、ここで触れる

保守の仕事では、お客様のパスワードや、顧客の名簿が入ったデータに触れることがあります。発注する側にとっては、それをどう扱ってくれるのかも判断の材料です。

保管の仕方、見られる人の範囲、仕事が終わったあとの扱い。やっていることだけを短く書きます。書き方は お客様の情報をどう扱っているかを、ホームページに書くかどうか にまとめました。できていないことは書かないのが大前提です。

他社が作ったものを引き継ぐか

「前の業者が作ったものを見てほしい」という相談を受けるなら、判断の仕方を書いておきます。「まず中身を拝見し、引き継げるかどうかを調べたうえでお返事します。調べる作業に費用がかかる場合は、事前にお伝えします」。この一文があると、困っている方が連絡しやすくなります。

7. 小さな相談から受けるか、技術の一覧はどこに置くか

最後に、入口の広さと、技術の情報の置き場所です。

小さな相談を受けるなら、そう書く

発注する側は、「こんな小さなことを頼んでいいのか」と遠慮します。パソコン1台の設定、プリンターがつながらない、表計算の集計を少し楽にしたい。受けるなら、その例をサイトに書いてください。書いていないと、小さな困りごとを抱えた方は連絡してきません。

一方で、受けないなら、受けないと書くことも大事です。「パソコン1台からの設定はお受けしていません。社内のシステムのご相談からお受けしています」と書いてあれば、合わない方は連絡の前に分かります。

元請けからの仕事が中心の会社

ほかの IT 会社から仕事を請けることが中心の会社でも、取引先の担当者が社内で貴社を説明するときや、採用のときにサイトは見られます。その場合の役割は 下請けの仕事が中心の会社に、ホームページは効くのか に書きました。

技術の一覧は、最後に置く

使っている言語、開発の環境、持っている資格。これは書いておく価値があります。相手の会社で多少詳しい方や、同業が確かめる場所だからです。

ただし、置く場所はサービスのページの最後か、会社の情報のページです。トップの最初の画面に技術の名前を並べると、発注を決める方がそこで離れます。

書き方にも気をつけます。

  • 今、実際に使っているものだけを書く ― 何年も前に一度だけ使ったものは外す
  • どのくらい使っているかを添える ― 「主に使っている」「ご相談に応じて」と分ける
  • 人の体制も書く ― 何人で作っているか、外の会社に一部を頼むことがあるか

最後の体制は、発注する側がとくに気にするところです。小さな会社であることは、隠さなくて構いません。誰が作って、誰が窓口になるのかが分かることのほうが、規模より大事です。

8. 雄喜晃の伴走:困りごとの言葉に直すところから、一緒に作ります

私たち雄喜晃のホームページ制作では、IT 会社のサイトを作るとき、最初に「社内のサービスの呼び方」と「お客様の困りごとの言葉」を並べるところから始めます。

私たちがやること

  • 困りごとの言葉を集める ― 最近の問い合わせや電話で、お客様が最初に言った言葉を伺い、見出しの候補にします
  • 事例を、守秘の範囲で文章にする ― 業種・規模・困っていたこと・やったこと・その後の型で、伺った話を文章に直します。載せる範囲は、貴社とお客様で確かめていただきます
  • 進め方と保守のページを組む ― お客様がすることの順で進め方を書き、保守に含まれるもの・含まれないものを並べます
  • 写真と図を整えて載せる ― 事務所や作業の様子の写真は、貴社で撮っていただいたものを整えて載せます。画面が出せない事例は、流れの図にします

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)です。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、新しい事例が1件増えたときの追加も、ご連絡いただければこちらで反映します。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

  • 技術的な内容が正しいかどうかを、こちらで判断することはしません。言い換えた文章は、公開の前に貴社で中身を確かめていただきます
  • 守秘義務の範囲を、こちらで決めることもしません。どこまで書けるかは、契約の中身とお客様の了解で決めていただきます
  • 実在しない事例や、測っていない数字を載せることはしません。事例がまだ少ない場合は、できることと進め方で組み立てます
  • 検索順位や問い合わせの増加をお約束することもしません

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。

「技術のことは書いてあるのに、来てほしいお客様から連絡が来ない」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:困りごとから入って、技術は最後に添える

小さな IT・システム開発の会社のサイトで押さえることは、5つです。

  • 見出しは、お客様の困りごとの言葉で書く ― 発注を決める方は、技術の名前では探していない
  • 事例は、業種・規模・困りごと・やったこと・その後で書く ― 社名が出せなくても書ける。守秘の範囲は契約と相手の了解が先
  • 進め方は、お客様がすることの順で書く ― 費用は金額より先に、決まり方と、途中で増えるときの扱いを書く
  • 保守は、含まれるもの・含まれないもので書く ― 窓口と受付時間を最初に置く
  • 小さな相談の扱いをはっきりさせ、技術の一覧は最後に置く ― 体制も一緒に書く

技術の一覧を消す必要はありません。置く順番を変えるだけで、同じ中身が、発注を決める方に届くようになります。

まず、今日できること

直近の問い合わせを10件ほど開いて、お客様が最初に書いた一文を書き出してみてください。その言葉が、貴社のサイトの見出しに1つでも入っているかを確かめます。入っていなければ、そこが最初に直す場所です。

サービスの説明が技術の言葉のままで止まっている、という方は、一度ご相談ください。