1. 「実績の件数、だいたいでいいですよね」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「トップに『施工実績○件』って大きく出したいんです。正確に数えたことはないんですけど、たぶん千件は超えてると思うので、千件でいいですかね」

気持ちはよく分かります。数字は目に入りやすく、文章を読まない人にも届きます。「豊富な実績」と書くより、件数を1つ書くほうが伝わるのは、そのとおりです。

ただ、ここで1つだけ考えていただきたいことがあります。その数字を、取引先の担当者に「どうやって数えたんですか」と聞かれたら、答えられるかどうかです。

答えられる数字は、会社の信用を積み上げます。答えられない数字は、聞かれた瞬間に信用を減らします。数字は強い道具なので、使い方を間違えたときの反動も大きいのです。

この記事で書くこと

  • 数字が伝わる理由と、崩れる理由
  • 何を1件と数えるか、いつまでを数えるかの決め方
  • 「以上」「約」「累計」の使い分け
  • 時点の添え方と、古い数字が残る仕組み
  • 満足度やリピート率のような割合を、書いてよい条件
  • 盛った数字が、比べられたときに崩れる理由

強みを数字に置き換える考え方そのものは 「うちの強み」を、ホームページにどう書くか に書きました。この記事は、その数字をどう数えて、どう書いて、どう保つかの話です。

2. 数字は、伝わるぶんだけ確かめられる

先に、数字がなぜ効くのか、そしてなぜ崩れるのかを整理しておきます。

数字は、比べられる

「創業○年」「施工実績○件」と書いてあると、読む人は他社と並べて見られます。比べられることが、数字のいちばんの力です。形容詞は比べられませんが、数字なら比べられます。

比べられるということは、確かめられるということ

ここが裏返しになります。比べられる言葉は、確かめられる言葉でもあります。読む人が確かめる場面は、思っているより多くあります。

  • 取引先の担当者 ― 稟議に書く前に、会社概要や登記と照らし合わせる
  • 相見積もりの相手 ― 同じ地域の同業は、だいたいの規模を知っている
  • 求職者 ― 面接で「年に何件くらいですか」と聞いてくる
  • お客様本人 ― 打ち合わせで「○件もやっているなら」と期待を置く

どの場面でも、数字の大きさより、説明が通るかどうかが見られています。

数字は、書いた日から古くなる

もう1つの性質があります。文章は多少古くなっても意味が通りますが、数字は書いた日から少しずつずれていきます。創業年数は毎年1つ増えますし、件数は仕事をするたびに増えます。社員数は入退社で動きます。更新されない数字は、時間とともに嘘に近づいていくのです。

この記事の残りは、この3つの性質への対処です。比べられる力を使い、確かめられても困らないように数え、古くならないように時点を添える。順に書きます。

3. 数え方を、先に決める

件数を書く前に決めることがあります。何を1件と数えるかです。ここが決まっていないと、同じ会社の同じ仕事でも、数字が何倍にも変わります。

何を1件と数えるか

たとえば塗装の会社なら、こういう迷い方をします。

  • 1つの現場で外壁と屋根を塗ったら、1件か、2件か
  • 同じお客様から3年後にまた頼まれたら、別の1件か
  • 元請けから受けた下請けの仕事は、数に入れるか
  • 雨どいを1本直しただけの小さな仕事も、1件か

どれが正しいという答えはありません。決まりが無いので、決めて、書き添えることが大事です。「1つの現場を1件として数えています」と一行あれば、読む人はその前提で数字を受け取れます。

いつからいつまでを数えるか

期間の区切りも決めます。

  • 創業から ― 長く続いている会社ほど大きな数字になるが、古い記録が残っていないことが多い
  • 法人にしてから ― 登記の日付で区切れるので、説明しやすい
  • 直近の数年 ― 「この3年で○件」。記録が揃っている範囲だけを書ける

おすすめは、記録が残っている範囲だけを数えることです。帳簿や請求書、工事台帳で数えられる期間に区切ってください。「たぶん千件は超えている」の千件より、「この5年の工事台帳で○件」のほうが、聞かれたときに答えられます。

誰の実績か

見落としやすいのがここです。代表が前の会社で担当した仕事、個人事業のころの仕事、グループ会社の仕事。これらを会社の実績に足すかどうかです。

足すなら、そう書いてください。「代表が前職で担当したものを含みます」と添えれば、問題は起きにくくなります。黙って足すと、聞かれたときに説明が苦しくなります。創業と設立が違う会社の書き分けは 会社の沿革と創業のいきさつを、ホームページでどう伝えるか に書きました。

表:同じ仕事でも、数え方で件数が変わる(たとえばの話で、数字はすべて架空)
決めること数え方A数え方B書き添える一行の例
何を1件とするか1つの現場を1件。たとえば年120件外壁・屋根など工事の種類ごとに1件。たとえば年200件「1つの現場を1件として数えています」
期間創業からの累計。古い記録は推計が混ざる工事台帳が残る直近5年だけ「2021年4月〜2026年3月の工事台帳より」
誰の実績か法人になってからの仕事だけ個人事業のころと、代表の前職を含む「個人事業として営業していた期間を含みます」
小さな仕事見積もりを出して請け負った仕事だけその場で済んだ点検や軽い修理も含む「点検のみのご依頼は含みません」

AとBのどちらが正しいという話ではありません。どちらで数えたかを一行書いておけば、聞かれても同じ答えを返せます。数字は貴社の記録で数えてください。

数え方は、社内で1つにそろえる

最後に、数え方は社内で1つにそろえてください。ホームページは現場1件で数え、会社案内のパンフレットは工事の種類ごとに数えている。こうなると、2つを見比べた人にはどちらかが間違っているように見えます。決めた数え方は、紙の資料や名刺の裏にも同じものを使います。

4. 「以上」「約」「累計」の使い方

数え方が決まったら、書き方です。数字の前後に付ける言葉で、読む人の受け取り方が変わります。

「以上」は、下回らないと言える数字にだけ

「○件以上」と書くと、読む人は「少なくとも○件はある」と受け取ります。ですから、数えた結果がその数字を下回らないときにだけ使ってください。

たとえば、数えた件数が1,180件なら「1,000件以上」は言えます。数えていない、または数えたら900件だったかもしれない、という状態で「1,000件以上」とは書けません。「以上」は、ぼかすための言葉ではなく、確かめた下限を示す言葉です。

「約」は、丸め方を決めて使う

「約○件」は、正確な数字を丸めて出すときの言葉です。丸め方は、読む人が想像する幅に収まるようにします。先ほどの1,180件なら「約1,200件」と書くのは自然ですが、「約1,500件」とは書けません。

決めておくと迷わないのは、次の2つです。

  • 丸める桁 ― 百の位で丸める、十の位で丸める、を社内で1つにする
  • 切り上げない ― 迷ったら小さいほうに丸める。大きいほうに丸めると、盛ったように見える

「累計」と「年間」を混ぜない

「累計○件」と「年間○件」は、まったく違う数字です。累計は会社の歴史を、年間は今の規模を表します。

読む人が知りたいのは、たいてい今の規模のほうです。累計だけが大きく書かれていると、「今も同じくらい仕事をしているのか」が分かりません。両方書けるなら両方書き、どちらか1つなら、どちらなのかを言葉で明記してください。

端数は、そのまま出してもいい

「○件」をきれいな数字に丸めたくなる気持ちは分かりますが、端数のある数字は、数えた跡が見える数字です。たとえば「1,183件」と書いてあると、本当に数えたのだと伝わります。更新の手間が気になるなら、時点を添えて端数のまま出すのも1つの方法です。

「No.1」「地域一」「最大級」は、根拠が要る

最後に、避けたい言葉です。「地域No.1」「業界最大級」「どこよりも多い」。こうした他社と比べる言葉は、比べた根拠を示せない限り使わないほうが無難です。

広告や表示には、事実と違う表示や、実際より良く見せる表示を制限する決まりがあります。どこまでが問題になるかは、言い方や業種によって違います。比べる言葉を使いたいときは、所管の窓口や専門家に確認してください。比べる言葉を使わなくても、件数と年数を書けば、比べるのは読む人のほうでやってくれます。

5. 時点を添えると、古い数字が残らない

数字の書き方で、いちばん手間が少なく、いちばん効くのがこれです。数字の横に、いつ時点かを書くことです。

「○年○月時点」を一言添える

「施工実績○件(2026年3月時点)」。これだけで、2つのことが起きます。

1つは、読む人が数字の鮮度を判断できるようになることです。もう1つは、更新が遅れても、嘘にならないことです。時点が書いてあれば、その時点では正しかった数字として読まれます。時点が無い数字は、いつ読まれても「今の数字」として受け取られます。

創業年数は、年数ではなく年で書く

「創業40年」と書くと、翌年には1年ずれます。トップページ、会社概要、代表挨拶、チラシ。どこか1か所の直し忘れで、ページによって創業年数が違う会社ができあがります。

対処は簡単です。年数ではなく、年を書いてください。以下の年は、たとえばの例です。

  • 「創業1986年」 ― 何年経っても書き換えが要らない
  • 「1986年の創業から」 ― 文章の中でも使える
  • どうしても年数を書きたいとき ― 「創業40年(2026年時点)」のように時点を添える

年数のほうが大きく見えて目を引く、という考えもあります。その場合は、トップの一か所だけを年数にして、ほかは年で書くと、直す場所が1つで済みます。

社員数・拠点数・取引社数も同じ

動く数字は、ほかにもあります。社員数、営業所の数、取引先の社数、保有する車両や設備の台数。会社概要に並ぶ数字の多くは、毎年動きます。

ここにも時点を添えてください。決算のタイミングでまとめて見直すと決めておけば、忘れにくくなります。会社概要の項目ごとの書き方は 会社概要のページに、何を載せるか にまとめました。

数字が残りやすい場所

更新したつもりでも、古い数字が残りやすい場所があります。

  • お知らせやブログの過去記事 ― 「おかげさまで実績○件を達成しました」のような記事
  • 画像に焼き込んだ数字 ― トップの大きな画像や、バナーの中の文字
  • PDFの会社案内 ― サイト内を検索しても出てこない
  • 外部のサイト ― 業者の紹介サイトや、加盟団体の会員ページ

過去のお知らせは、その時点の記録なので書き換えなくて構いません。投稿日が付いていれば、その日の数字として読まれます。気をつけたいのは、日付の無い画像やPDFの中の数字です。数字を入れた場所を、次の章で書く台帳に残しておいてください。

6. 満足度・リピート率は、集め方が説明できるときだけ

件数や年数よりも、さらに慎重になってほしい数字があります。「お客様満足度○%」「リピート率○%」のような、割合の数字です。

割合の数字には、分母と集め方が要る

件数は数えれば出ますが、割合は2つの数字の比です。「満足度90%」と書くなら、何人に聞いて、そのうち何人が満足と答えたのかがあるはずです。さらに、次のことが説明できる必要があります。

  • 誰に聞いたか ― 全員か、アンケートを返してくれた人だけか
  • いつ聞いたか ― どの期間に、どのタイミングで
  • どう聞いたか ― 何段階で聞いて、どこから上を「満足」としたか
  • 何人が答えたか ― 10人の90%と、1,000人の90%は意味が違う

この4つを聞かれて答えられるときだけ、割合の数字は書けます。答えられないなら、書かないほうが安全です。

答えてくれる人は、偏っている

アンケートを返してくれるのは、たいてい満足しているお客様です。不満だった人は、そもそも返してくれません。ですから、返ってきた用紙だけで計算した満足度は、高めに出るのが普通です。

書くなら、その偏りも隠さないでください。「アンケートにご回答いただいた○名のうち」と書けば、読む人は数字の意味を正しく受け取れます。

特典と交換して集めない

アンケートや口コミを、割引や特典と引き換えに集めることはしないでください。答えが変わりますし、もしそれが知られたときに、数字だけでなく会社そのものの信用を落とします。お客様の言葉の集め方は 「お客様の声」を、どう集めて、どう載せるか に書きました。

割合が書けないときは、言葉で書く

割合の数字が出せなくても、困ることはありません。お客様の言葉を、そのまま載せるほうが伝わる場面は多くあります。「満足度95%」より、名前と地域と依頼内容が添えられた一人の言葉のほうが、読む人には具体的です。

リピートの多さを伝えたいなら、割合ではなく事実で書けます。「10年以上続けてご依頼いただいている会社が○社あります」。この形なら、数えられる範囲だけを書けます。

7. 盛った数字は、比べられたときに崩れる

数字を少し大きく書きたくなる気持ちは、どの会社にもあります。ただ、盛った数字は、比べられた瞬間に崩れます。

崩れる場面

崩れるのは、たいてい大事な場面です。

  • 取引の審査 ― 担当者が決算書や登記と見比べて、規模が合わないと気づく
  • 相見積もり ― 同業者がお客様に「あの会社の規模で、その件数は無理ですよ」と言う
  • 採用の面接 ― 入社を考える人が、仕事の量を具体的に聞いてくる
  • 契約後の打ち合わせ ― 「○件もやっているなら」と期待していたお客様が、実際とのずれに気づく

どの場面でも、数字が1つ崩れると、ほかの数字まで疑われます。創業年も、資格の数も、社員数も、全部が本当かどうか分からなくなります。資格や許可の載せ方は 資格・許認可・受賞歴を、ホームページにどう載せるか にまとめてありますが、考え方は同じです。

小さい数字は、恥ずかしくない

数えてみたら思ったより少なかった、ということはよくあります。それで構いません。正確な小さい数字は、ぼかした大きい数字より信用されます。

件数が少ないなら、数ではなく中身で見せる手があります。1件ずつの事例を丁寧に書けば、件数の少なさは問題になりません。事例の書き方は 実績ページに何を書くと、次の依頼につながるか に書きました。

私たち雄喜晃自身も、2025年10月6日に設立した会社です。「創業○年」と書ける年数はありません。無い数字は書かず、あるものを見ていただく形でサイトを作っています。

数字の台帳を、1枚作る

最後に、数字を保つための段取りです。サイトに載せた数字を、1枚の表にしておくことをおすすめします。

図:数字を1つ載せるまでの4段(項目の例は、たとえばの話です)
① 数え方を決める

何を1件とするか、いつからいつまでか、誰の仕事を含めるか。迷った点は、決めた答えを一行の文にしておきます。

たとえば「1つの現場を1件。法人になってからの分だけ」
▼
② 根拠の記録を決める

工事台帳、請求書、決算書、アンケートの用紙。どの記録で数えたかを書いておきます。聞かれたときに出せるものだけを根拠にします。

たとえば「工事台帳(2021年4月〜)」
▼
③ 書き方と時点を決める

「以上」「約」を付けるか、端数のまま出すか。いつ時点の数字かを添えます。創業は年数ではなく年で書きます。

たとえば「施工実績○件(2026年3月時点)」
▼
④ 載せた場所と、見直す時期を書く

トップ、会社概要、画像、PDF、チラシ。数字を入れた場所を全部並べ、決算の月など、見直す時期を1つ決めます。

ここを抜かすと、更新したのに古い数字が画像やPDFに残ります

4段を1行ずつ、数字の数だけ表にすれば、それが台帳になります。担当者が代わっても、同じ数え方で更新を続けられます。

台帳があれば、数字を聞かれたときに担当者が誰でも同じ答えを返せます。年に一度、決算の月にこの表を開いて数字を更新する。それだけで、古い数字が残る問題はほとんど防げます。

8. 雄喜晃の伴走:数字は、数え方から一緒に決めます

私たち雄喜晃がサイトをお作りするときは、「実績は千件くらいで」とおっしゃっていただいても、そのまま書くことはしません。どの記録で数えられるか、何を1件とするかを伺い、聞かれたときに説明できる形にしてから載せます。

私たちがやること

最初のお打ち合わせで、サイトに載せたい数字を伺います。そのうえで、数え方と時点を一緒に決め、数字の横に添える一行を書きます。創業年数は年で書く、時点を添える、といった書き方もこちらで整えます。

載せた数字は、どのページのどこに入っているかを一覧にしてお渡しします。決算のあとに件数や社員数が変わったら、ご連絡いただければこちらで書き換えます。

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、年に一度の数字の見直しも、月額の範囲でお受けできます。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

根拠の無い数字を、それらしく作って載せることはしません。数えていない件数、集めていない満足度、比べていない「地域No.1」。ご要望があっても、そこはお断りしています。

また、ある表示が決まりの上で問題になるかどうかを判断することもいたしません。業種や言い方によって違い、所管の窓口や専門家が答える話だからです。検索の順位や、問い合わせの件数をお約束することもいたしません。

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。「数字を出したいけれど、正確に数えたことがない」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:数字は、説明できる分だけ書く

ホームページに数字を書くときに押さえることは、5つです。

  • 数え方を先に決める ― 何を1件とするか、いつからか、誰の仕事か。決めた答えを一行添える
  • 「以上」「約」は正直に使う ― 「以上」は確かめた下限、「約」は小さいほうに丸める
  • 時点を添える ― 創業は年で書き、動く数字には「○年○月時点」を付ける
  • 割合は、集め方が説明できるときだけ ― 誰に、いつ、どう聞き、何人が答えたか
  • 盛らない ― 1つ崩れると、ほかの数字まで疑われる。小さくても正確な数字のほうが強い

数字は、伝わるぶんだけ確かめられます。大きく見せることより、聞かれたときに同じ答えを返せることのほうが、会社の信用になります。

今日できることを1つだけ挙げます。貴社のサイトとパンフレットに載っている数字を、全部書き出してみてください。それぞれの横に「どう数えたか」を書けるかどうか。書けない数字が、最初に直すところです。

「載せている数字の根拠を、もう誰も覚えていない」という方は、一度ご相談ください。