1. 「サンプルを送ってほしい、と言われるんですが」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「ホームページを見た方から、サンプルを送ってほしいと連絡が来るんです。ありがたいんですが、誰にでも送っていいのか分からなくて。サイトにサンプル請求のボタンを付けたほうがいいんでしょうか」
製造業の試作やサンプル請求、食品や日用品の試供品、教室やサービスの体験。形は違っても、悩みは同じです。受ければ問い合わせの敷居が下がる。けれど、誰にでも受けると費用と手間が膨らむ。
答えは二択ではありません。受けるなら、条件を書いてから受けるという話です。条件が書いてあれば、合う人は気軽に申し込め、合わない人は申し込む前に気づけます。
この記事では、何を決めて、どこに何を書くかを順に並べます。
この記事で書くこと
- 受けると何が変わり、何が膨らむか
- 対象・数量・地域の決め方
- 無料の範囲と送料、届くまでの目安の書き方
- 申し込みフォームで聞くこと、聞かなくていいこと
- 申し込んだあとの連絡の流れ
- 断る場合の書き方
2. 受けると、何が変わるか
問い合わせより、一段手前で声をかけてもらえる
問い合わせのボタンを押すのは、ある程度決めかけた人です。サンプルやお試しは、その一段手前にいる人が押せる入口になります。
「まだ頼むかどうか分からないけれど、物を見てみたい」「子どもに合うか、一度だけ試したい」。こういう人は、問い合わせのフォームしかないと、何もせずに帰ります。サンプルの入口があれば、名前と連絡先を残してくれます。
物を見て決める商売では、話が早くなる
素材の手ざわり、部品の仕上がり、食品の味、教室の雰囲気。文章と写真では伝わりきらないものを、相手の手元に届けられるのが強みです。物を見たあとの相談は具体的になり、中身の話から入れます。
条件を書かないと、膨らむもの
一方で、条件を書かずに「サンプル請求はこちら」とだけ置くと、次のことが起きやすくなります。
- 送料と品物の費用 ― 申し込みのたびに、こちらの持ち出しが増えます
- 発送や日程調整の手間 ― 少人数の会社では、本業の時間が削られます
- 対象外の申し込み ― 個人の方から、遠方から、同業から。断る返信の手間が残ります
- 試すだけで終わる人 ― 品物を受け取ったあと、連絡が取れなくなります
どれも、受けること自体が悪いのではありません。どこまで受けるかを書いていないことが原因です。
受けない判断もある
試作そのものに大きな費用がかかる受注品、日持ちや温度の管理が難しい食品、体験の枠で通常の席が減る教室。こうした場合は、無理にお試しを作らず、代わりに見てもらえるものを用意するほうが素直です。これは第7章で書きます。
3. 先に決める:誰に、いくつまで、どこまで
受けると決めたら、ページを作る前に、対象、数量、地域の3つを決めます。ここが決まると、ページの文章もフォームの項目もほぼ決まります。
対象:法人だけか、個人も受けるか
製造業の部品や資材なら、「法人・個人事業主の方に限ります」と書く会社が多いです。個人の方からの申し込みを、一件ずつ断る手間が減ります。
食品や日用品の試供品は、逆に個人の方が主な相手です。その場合も、誰に向けたものかを書いておきます。教室の体験なら、年齢や経験の条件です。同業の方からの申し込みを受けるかどうかも、ここで決めておきます。
数量:1回あたり、いくつまで
「サンプル」と言っても、相手が思い浮かべる量はばらばらです。1回あたりの上限を、数字で書いてください。
- 品目と個数 ― たとえば「1品目につき〇個まで、合計〇品目まで」
- セット単位 ― たとえば「試供品はお一人様1セット」
- 回数 ― たとえば「体験レッスンはお一人様1回」
上限を超える量が必要な人には、「それ以上の数量は、有償の試作としてお見積もりします」と書いておけば、次の道が見えます。
地域:送れる範囲、来てもらえる範囲
発送するなら、送れる範囲を書きます。冷蔵や冷凍が要る食品は、届けられる地域が限られることもあります。
来てもらう体験なら、教室の場所と駐車場の有無を書きます。サンプルの範囲が通常の対応エリアと違う場合は、とくに書き分けてください。
同じ方からの2回目をどうするか
見落とされがちなのが、2回目です。品目を変えてもう一度、という申し込みを受けるか。受けるなら回数の上限を、受けないなら「2回目以降は有償です」と書いておきます。決めておかないと、担当者ごとに対応が変わってしまいます。
たとえば「法人・個人事業主の方に限ります。標準品のサンプルは1品目3個まで。図面からの試作は有償でお見積もりします」。標準品と、特注の試作を分けて書くのが要です。
たとえば「お一人様1セットまで。送料は当社が負担します。冷蔵品のため、お届けできない地域があります」。届いてから、いつまでに使ってほしいかも添えておきます。
たとえば「小学生の方が対象です。体験は1回、持ち物は上履きのみ。入会をその場でお決めいただく必要はありません」。体験のあとの流れを、申し込む前に見せます。
どの種類でも、書くことは対象・数量・費用・地域・届くまでの目安の5つです。数字は、貴社の実情に合わせて決めてください。
4. 費用と、届くまでの目安を書く
次はお金と日数です。申し込む人がいちばん気にするのは、この2つです。
無料なのは、どこまでか
「サンプル無料」と書くなら、何が無料なのかを一行で添えてください。品物が無料なのか、送料も含めて無料なのか。標準品は無料で、特注の試作は有償なのか。
ここが曖昧だと、あとで「無料と書いてあったのに」という話になります。線の引き方は 「無料相談」「無料見積もり」と、ホームページに書くかどうか で詳しく書きました。
送料は、誰が持つか
送料は、話がこじれやすいところです。書き方は3つのどれかです。
- 当社が負担する ― 「送料は当社が負担します」。申し込みの敷居がいちばん下がります
- 相手に負担してもらう ― 「送料のみご負担ください」。試すだけの申し込みが減ります
- 条件で分ける ― 「法人の方は当社負担、個人の方は送料のみご負担」のように、対象で分けます
送料を誰が持つかは、どんな人に申し込んでほしいかの合図になります。迷ったら、直近で送ったサンプルの送料の合計と、そのうち仕事になった件数を見比べてみてください。
本発注になったら、どう扱うか
有償の試作を受ける場合は、その後どうなるかまで書いておきます。たとえば「ご発注いただいた場合は、試作費を本発注の代金から差し引きます」。申し込む側は、試作費が無駄になるかどうかを気にしています。書いてあれば、社内の稟議の説明にも使ってもらえます。
届くまでの目安は、営業日で書く
申し込んだ人が次に気にするのは、いつ届くかです。「お申し込みから〇営業日以内に発送します」のように、営業日で書いてください。土日や長い休みを挟むと、相手の数え方とずれるからです。
標準品と試作では目安が大きく違うので、分けて書きます。
- 標準品 ― たとえば「お申し込みの翌営業日から〇営業日以内に発送します」
- 試作 ― たとえば「図面と仕様を確認してから、日程をご連絡します」
- 体験 ― たとえば「お申し込みから〇営業日以内に、日程の候補をお送りします」
書いた日数は、守れる長さにしてください。体験の場合は、日程をフォームで選んでもらうのか、こちらから候補を出すのかも書きます。「体験は毎週土曜の午前のみ」のように枠が決まっているなら、先に書いておくと、合わない人は申し込む前に分かります。
5. 申し込みフォームで聞くこと
フォームは、聞きすぎると送られず、聞かなすぎると発送できません。
一般の問い合わせと、分けるか
サンプルの申し込みが月に何件も来るなら、一般の問い合わせとは別のフォームにするほうが扱いやすくなります。受け取った側が、すぐに発送の作業だと分かるからです。件数が少ないうちは、一般のフォームに「ご用件:サンプルのご請求」を足すだけでも足ります。考え方は、見積もり依頼のフォームは、何をどこまで聞けばいいか と同じです。
聞くのは、送るのと判断するのに要るものだけ
フォームの項目は、発送するのに要るものと、対象かどうか判断するのに要るものに絞ります。
- お名前と連絡先 ― メールアドレスは必須。電話番号は、配送に要る場合だけ
- 送り先の住所 ― 発送する場合だけ。体験なら要りません
- 会社名 ― 法人に限っているなら、ここで確かめます
- ほしい品目と数量 ― 選択式にして、上限を超えて選べないようにします
- 使う目的 ― 法人向けなら「どんな用途で検討しているか」。短い選択肢と、自由記入の欄
- 体験の希望日 ― 体験の場合だけ。候補を2つか3つ選んでもらいます
用途が分かれば、より合う品目を提案し直せますし、対象外の申し込みにも早めに気づけます。
聞かなくていいもの
予算や発注の時期、担当者の役職、「当社を知ったきっかけ」のようなアンケートは、最初のフォームでは聞かなくて構いません。必須にすると、まだ決めていない人が止まります。項目の数え方は 問い合わせフォームの項目は、いくつまで減らせるか に書いたとおりです。その場で聞かないと、次の作業に進めないものだけを残すのが基本です。
連絡先の使い方を、フォームの近くに書く
申し込む人は、「営業の電話が何度も来るのでは」と身構えています。受け取った連絡先を何に使うかを、フォームの近くに一行書いてください。
たとえば「発送のご連絡と、届いたあとに一度だけご感想を伺う連絡に使います。それ以外のご案内は、ご希望の方にだけお送りします」。書いたら、社内の全員がそのとおりに動いてください。
いたずらの申し込みへの備え
品物が届くフォームは、いたずらの申し込みも来やすくなります。スパム対策は、Turnstile や reCAPTCHA のような人間かどうかを判定する仕組みに寄せ、発送の前に会社名や住所を一度見る手順も決めておくと安心です。
6. 申し込んだあとの連絡の流れ
サンプルは、送って終わりではありません。届いたあとのことまで書いておくと、双方が楽になります。
流れを、申し込む前に見せる
申し込みのページに、送ったあとの流れを短く書いておきます。
送信が終わった画面に、受け付けたことと、次の連絡がいつ来るかを書きます。届かないときの連絡先も、ここに置きます。
申し込んだ品目と数量、送り先の控えを載せます。
条件に合えば発送の予定を、合わなければ理由と代わりの道を添えてお断りを伝えます。
品物と一緒に、仕様の資料と、相談の連絡先を入れておきます。体験なら、場所と持ち物を前日までに改めて伝えます。
試していただけたかを伺い、次の相談の方法を伝えます。返事がなければ終わりにします。
この流れを申し込みのページ、送信完了の画面、受付のメールの3か所に書いておきます。届いたあとに何回連絡するかまで書いておくと、「申し込んだら営業される」という不安が和らぎます。
送信完了の画面に、次に起きることを書く
送信した直後の画面には、「受け付けました」と言い切る一文と、次の連絡の時期、届かないときの連絡先を書きます。「送信しました」の一行だけで終わらせないでください。詳しくは 問い合わせを送ったあとの「送信完了」の画面に、何を書くか にまとめてあります。
届いたあとの連絡は、回数を決めておく
送ったきり何も起きないのも、何度も連絡するのも困ります。届いたあとの連絡は、回数と時期を先に決めておくのがいちばん収まります。
たとえば「届いてから〇日ほどで一度だけ、メールでご感想を伺います」と決め、ページにもそう書きます。返事がなければ、そこで終わりにします。誰が連絡するのかも、社内で決めておいてください。何を誰にいつ送り、その後どうなったかを1枚の表に残しておくと、2回目の申し込みに気づけますし、条件を見直す材料にもなります。
7. 断る場合の書き方
条件を書いても、合わない申し込みは来ます。断り方まで決めておくと、担当者が迷いません。
断る条件は、ページに先に書く
対象外の申し込みを減らすには、申し込みのページにお受けできない条件を先に書いておくのがいちばんです。
- 対象 ― 「個人の方へのサンプルのお送りは、行っておりません」
- 同業 ― 「同業の方からのご請求は、お受けしておりません」
- 数量 ― 「上限を超える数量は、有償の試作としてお見積もりします」
- 地域 ― 「海外へのお送りは、行っておりません」
- 回数 ― 「2回目以降のご請求は、有償となります」
書き方は、拒絶ではなくどんな方のための入口かを伝える文章にしてください。
断るときの返信は、理由と代わりの道を添える
対象外の申し込みが届いたら、返信は短く、理由と代わりの道を添えます。
「お申し込みありがとうございます。申し訳ありませんが、サンプルのお送りは法人の方に限らせていただいております。製品の詳しい仕様は、カタログのページからご覧いただけます」
理由を書き、次に見てほしいページを1つ添える。返信の文面は、ひな形にして社内で共有しておくと、担当者によって言い方がばらつきません。
代わりに見てもらえるものを用意する
サンプルを送らない相手や、お試しを作らない商売でも、物を確かめたい気持ちには応えられます。
- カタログや仕様書のダウンロード ― 寸法や材質を、手元で確かめてもらえます
- 近くで見られる場所の案内 ― 展示や店頭、見学会の日程
- 写真や動画の追加 ― 質感や使っている場面を、ページの中で見せます
資料をダウンロードで渡すときの置き方は 会社案内やカタログを、ホームページからダウンロードできるようにするか に書きました。
法人向けのサンプルは、社内で検討する材料になる
法人向けの部品や資材のサンプルは、受け取った担当者が社内で上司や設計の担当に回して、検討する材料として使います。ですから、品物と一緒に仕様の一覧と相談の連絡先を入れておくことが効いてきます。取引先の担当者がホームページをどう使うかは 下請けの仕事が中心の会社に、ホームページは効くのか にまとめています。
表示や配り方の決まりは、業種によって違う
試供品の配り方や、食品の表示、無料で渡すものの扱いには、業種ごとに決まりがある場合があります。受け取った個人情報の扱いも、プライバシーポリシーに書いておきます。業種によって違うので、所管の窓口や専門家に確認をしてください。
8. 雄喜晃の伴走:サンプルの入口は、受けられる範囲から作ります
私たちがやること
私たち雄喜晃は、サンプルやお試しの申し込みページを作るとき、まず貴社が受けられる範囲を伺うところから始めます。誰に、いくつまで、どこまで送れるのか。送料はどうするのか。届いたあと、誰が連絡するのか。そこが決まってから、ページの文章とフォームの項目を一緒に決めます。
申し込みのページ、フォーム、送信完了の画面、受付のメールまで、同じ条件で書きそろえます。公開したら実際に申し込み、受付のメールが届くところまで確かめます。品物の写真は、貴社で撮っていただいたものを整えて載せます。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、受けてみて上限や送料の条件を見直したくなったときも、ご連絡いただければこちらで書き換えます。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
無料にする範囲や、上限の数、送料を誰が持つかを、こちらで決めることはしません。それは貴社の商売の判断だからです。私たちがやるのは、決まった条件を、読む人に伝わる形に書き直すことです。
サンプルの梱包や発送、在庫の管理といった作業も、お引き受けしていません。スパム対策として、見えない入力欄で判定する作り方もしません。申し込みの件数や、検索の順位をお約束することもいたしません。
「サンプルを頼まれるたびに、送っていいのか迷っている」という方は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
9. まとめ:お試しの敷居は、条件を書いたうえで下げる
サンプルやお試しの申し込みをホームページで受けるときに押さえることは、5つです。
- 受けるなら、条件を書いてから受ける ― 敷居は下がるが、条件がないと費用と手間が膨らむ
- 対象・数量・地域を先に決める ― 法人だけか、何個までか、どこまで送れるか。2回目の扱いも
- 無料の範囲と送料、届くまでの目安を書く ― 何が無料かを一行で。日数は営業日で、守れる長さに
- フォームは、送るのと判断するのに要る項目だけ ― 連絡先の使い方を、フォームの近くに書く
- 届いたあとの連絡と、断り方まで決める ― 連絡は回数を決めて一度だけ。断るときは代わりの道を添える
サンプルの入口は、まだ決めかねている人に、名前を残してもらうための入口です。条件が書いてあれば、こちらも無理なく受けられます。
まず、今日できること
直近でサンプルやお試しを頼まれた件を、3件ほど思い出してみてください。誰から、何を、いくつ頼まれて、そのあとどうなったかを書き出すと、どこに上限を置けばいいかが見えてきます。その書き出しが、そのまま申し込みページの条件になります。