1. 「任せたいけれど、何か書かれたら怖くて」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「若い社員がSNSに慣れているので、会社のアカウントやお知らせを任せたいんです。ただ、何を書かれるか分からないのが怖くて。結局、自分で書こうとして、そのまま止まっているんですよ」
任せたい気持ちと、任せるのが怖い気持ち。この2つがぶつかって、どちらにも進まないまま時間が過ぎている会社は少なくありません。
怖さの正体を伺っていくと、社員を信用していないわけではないことがほとんどです。どこまで書いてよいかの線が、社長の頭の中にしか無い。だから任せられないのです。線を紙に書き出して共有すれば、任せる側も任される側も、ずっと楽になります。
この記事では、社員に会社のSNS、ホームページのお知らせ、ブログを書いてもらうときのルールを、決める順番に沿って書きます。サイトの原稿を一度まとめて書いてもらう話は ホームページの原稿を、社員に書いてもらう にまとめたので、ここでは日々の発信を続けて任せるときの話をします。
この記事で書くこと
- ルールが無いとき、厳しすぎるときに起きること
- 書いてよいことと、書かないこと
- 投稿の前に、誰が何を見るか
- 間違いや炎上が起きたときの手順
- 個人のアカウントとの分け方と、負担の配り方
2. ルールが無くても、厳しすぎても止まる
ルールを作る前に、ルールの「重さ」の話をしておきます。ここを外すと、作ったルールが使われません。
ルールが無いと、任された人が迷う
ルールが無いまま「好きに書いていいよ」と任せると、任された人は自由になるどころか、迷います。お客様の現場の写真は載せていいのか。来月の新しいサービスの話は書いていいのか。毎回迷うので、毎回社長に聞きに来る。結局、社長が全部見ることになり、任せた意味が薄れます。
聞きに来るならまだいいほうです。聞きにくい雰囲気だと、迷ったまま書いて載せてしまうか、迷ったまま書かなくなるかのどちらかになります。
禁止だらけにすると、誰も書かなくなる
反対に、怖さから禁止事項を何十個も並べると、今度は誰も書かなくなります。読む側は「これだけ禁止があるなら、書かないのがいちばん安全だ」と受け取るからです。
ルールの目的は、書かせないことではなく、安心して書けるようにすることです。この順番を間違えると、立派なルールが残り、発信は止まります。
ルールは、紙1枚に収める
目安は、A4で1枚です。それ以上になると、書く人が読み返さなくなります。1枚に入れるのは、次の5つで足ります。
- 書いてよいこと ― 先に書く。何を書けばいいかの手がかりにもなる
- 書かないこと ― 理由と一緒に、短く
- 投稿の前に見る人 ― 名前と、その人がいないときの代わり
- 間違えたときの連絡先 ― 誰に、何で連絡するか
- 迷ったときの質問 ― 判断に困ったら、この質問に答えてみる
3. 書いてよいことを、先に並べる
ルールというと「書かないこと」から考えがちですが、書いてよいことを先に並べるほうがうまくいきます。書いてよいことが具体的に見えていると、書く人はそこから選ぶだけで済むからです。
書いてよいことの例
業種によって違いますが、たいていの会社で書いてよいのは、このあたりです。
- 終わった仕事の報告 ― お客様の了解が取れているものに限り、地域と作業の内容で書く
- 営業日と季節の案内 ― 休業日、繁忙期の受付、季節ごとに増える相談
- よく聞かれる質問への答え ― 電話や現場で何度も聞かれることを、1つずつ
- 準備や道具の話 ― 新しく入れた道具、作業前の準備、片付けの様子
- 採用の案内 ― 募集の開始と終了、職場の様子
お知らせの欄に向く話題は 「お知らせ」の欄に、何を書けばいいか に、1年分のネタ表の作り方と一緒にまとめてあります。SNSでも、ほぼ同じ話題が使えます。
「社長に聞かなくていいこと」を決める
書いてよいことのうち、投稿の前に誰の確認も要らないものを決めておくと、任せる意味がはっきりします。たとえば、休業日の案内や、人の写っていない道具の写真。こうしたものまで毎回確認を通すと、確認する側が詰まります。
4. 書かないことは、3つに絞る
書かないことは、細かく並べ始めると切りがありません。大きく3つに分けると、覚えやすく、迷ったときにも当てはめやすくなります。
① お客様の情報
いちばん気をつけたいのがこれです。名前を書かなければ大丈夫、とは限りません。
- 特定につながる組み合わせ ― 「〇〇町の角の青い屋根のお宅で、今日」のように、地域・特徴・日時が揃うと、近所の人には分かります
- 会話の中身 ― 現場で聞いた家庭の事情、困っていたこと、予算の話
- お客様の言葉 ― 褒めていただいた言葉でも、本人の了解なく載せない
終わった仕事の報告は、了解を取ったお客様の分だけ書きます。了解が無いものは、地域を市の単位まで広げ、作業の内容だけにします。
② 写真の写り込み
文章では気をつけていても、写真で漏れることがよくあります。社員がその場でスマートフォンで撮った写真は、特に注意が要ります。
- 書類と画面 ― 机の上の伝票、ホワイトボードの予定、パソコンの画面
- お客様のもの ― 表札、車のナンバー、家の中の様子
- 人 ― ほかのお客様、同僚、通行人の顔
同僚が写っている写真は、同僚本人に一言確かめてから載せるようにします。写真と権利の考え方は ホームページの写真と文章、権利はどうなっているか に書きました。
③ まだ発表していない話
社内では知られていても、外にはまだ出していない話です。
- 新しいサービスや価格の変更 ― 正式に決まる前の話
- 人事と組織 ― 採用の内定、退職、異動
- 取引の話 ― 取引先の名前、商談中の案件、受注の見込み
- 移転や工事の予定 ― 日付が決まる前の話
悪気なく「来月から新しいことが始まります、お楽しみに」と書いてしまうことがあります。書く人には良い知らせでも、決まる前に出た話は、変わったときに説明が要ります。会社として発表してから、という線を引いておきます。
人が写っていない、お客様が特定されない、決まっていること。たとえば「年末年始は12月29日から休みます」。書く人の判断で出してよいものです。
お客様の了解、写っている人の了解、写り込みを確かめてから出すもの。たとえば「北区で外壁の塗り替えが終わりました」と施工後の写真。
現場で聞いた家庭の事情、内定や退職、決まる前の新サービス、取引先との話。たとえ良い知らせでも、会社として発表するまでは書きません。
3つに分けておくと、書く人は「これはどの箱か」だけを考えれば済みます。迷ったものは②に回す、と決めておくのがいちばん簡単です。
迷ったときの3つの質問
3つの箱のどこに入るか迷ったときは、次の3つを自分に聞いてもらいます。
- そのお客様が読んだら、どう感じるか ― 自分のことだと分かって、嫌な気持ちにならないか
- 半年後に読んでも困らないか ― 予定が変わったとき、説明が要る書き方になっていないか
- 社内の人だけが知っている話ではないか ― 会社として外に出した話か
1つでも引っかかったら、②の箱に回して、見てもらってから出します。
5. 投稿の前に、誰が何を見るか
②の箱に入ったものは、投稿の前に誰かが見ます。ここの決め方で、続くかどうかが大きく変わります。
見る人を1人、代わりを1人
見る人は、名前で1人決めます。「上の人が見る」では、誰も見ないか、全員が見て意見が割れるかのどちらかになります。その人が休みや出張のときの代わりも、1人決めておきます。
社長が見る人になるのは構いませんが、社長がいちばん忙しい会社では、社長のところで止まります。現場をよく知っている人に任せたほうが、早く回ることも多いです。
見るのは、文章の上手さではない
見る人が見るのは、次の3つだけです。
- 事実が合っているか ― 日付、地域、作業の内容
- 写り込みが無いか ― 写真を拡大して、端から見る
- 書かないことが入っていないか ― お客様の情報、未発表の話
言い回しや句読点まで直し始めると、書いた人は次から書きにくくなります。直すのは、間違いと漏れだけにしてください。少し言葉がつたなくても、読む人には現場の人が書いたことが伝わります。
返事は、その日のうちに
確認を頼んだのに、返事が3日来ない。これが続くと、書く人は頼むのをやめます。見る人の返事は、その日のうちにを約束にしておきます。忙しくて見られない日は、「明日見ます」と一言返すだけでも違います。
ホームページのお知らせやブログは、書いた人と載せる人が別でも構いません。管理画面を触れる人が限られている場合の回し方は パソコンが苦手でも、ホームページの更新を止めない方法 に書きました。
6. 間違いや炎上が起きたときの手順
どれだけ気をつけても、間違いは起きます。起きたときに慌てないために、手順を先に決めて、ルールの紙に書いておきます。
間違いと炎上は、分けて考える
日付や金額を書き間違えた、写り込みに後から気づいた。これは「間違い」です。直して、直したことを書けば済むことがほとんどです。
一方で、投稿が思わぬ形で広まり、批判のコメントが続くような状態が「炎上」です。こちらは、書いた人ひとりで対応してはいけません。どちらの場合も、最初の動きは同じにしておくと、迷いません。
気づいたら、まず投稿とコメントの画面を保存します。慌てて消す前に、何が書かれていたかを残します。
ルールの紙に書いた1人に連絡します。夜や休日でも連絡してよい、と決めておきます。書いた人が1人で返信しないことが大事です。
何が違っていたのか、誰に迷惑がかかったのかを確かめます。お客様の情報が出てしまった場合は、そのお客様への連絡を先にします。
間違いなら、訂正して「〇月〇日に日付を訂正しました」と書き添えます。消す場合も、必要に応じて消した理由をお知らせします。
①と②は、書いた人が1人でできる動きです。③から先は、会社として受け持つと決めておくと、書いた人は迷わず知らせてくれます。
書いた社員を、ひとりにしない
間違いが起きたとき、いちばん避けたいのは、書いた社員を責めて終わることです。責められた人は書かなくなり、見ていた周りの人も書かなくなります。
確認の仕組みを通って出た投稿なら、それは会社の判断として出た投稿です。対応は会社として行い、仕組みのどこを直せば次は防げるかを考えます。書いた人には、「すぐに知らせてくれて助かった」と伝えてください。それが、次に何か起きたときにすぐ知らせてもらえる理由になります。
専門家に相談する場面
お客様の個人情報が出てしまった、誰かの権利を侵してしまったかもしれない、といった場合は、社内だけで判断しないでください。何をどこまで対応すべきかは、業種や状況によって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。相談の先を、ルールの紙の端に書いておくと、いざというときに探さずに済みます。
7. 個人のアカウントとの分け方と、負担の配り方
最後に、続けていくための話です。ここを決めておかないと、半年ほどで1人に負担が寄って止まります。
会社のアカウントは、会社が持つ
会社のSNSのアカウントは、会社のメールアドレスで作り、ログインの情報を会社が持ちます。担当の社員の個人のメールアドレスや電話番号で作ってしまうと、その人が辞めたときに、誰もログインできなくなります。
担当者が替わるときの引き継ぎについては ホームページの担当者が辞める・異動するときの引き継ぎ にまとめました。SNSのアカウントも、同じ一覧に入れておいてください。
社員の個人アカウントには、踏み込みすぎない
会社の話は、会社のアカウントで書いてもらいます。個人のアカウントで会社の宣伝をするよう求めたり、個人の投稿に会社が目を光らせたりするのは、避けたほうが無難です。
その代わりに、個人のアカウントで仕事に触れるときの目安だけは伝えておきます。会社のアカウントで書かないことは、個人のアカウントでも書かない。お客様の情報、未発表の話、写り込み。この3つは、どこで書いても同じです。どこまでを会社のルールとして求められるかは、業種や雇用の形によって違うので、迷う場合は専門家に確認してください。
負担を、1人に寄せない
SNSに慣れている社員が1人いると、その人に全部が集まりがちです。最初は張り切って書いてくれても、本来の仕事と重なって、半年もすると止まります。
- 書く人と材料を出す人を分ける ― 現場の人は写真と一言を送るだけ、書く人がまとめる
- 本数の上限を決める ― 「週に何本以上」ではなく「月にこれ以上は書かなくていい」
- 業務時間の中でやる ― 休憩や帰宅後に書いてもらう形は続かない
- 当番を回す ― 1人に決めず、月ごとや週ごとに替える
続けられる会社と止まる会社の違いは 更新を続けられる会社と、止まる会社の違い に書きましたが、差がつくのは熱意ではなく、こうした決めごとがあるかどうかです。
書いたものに、反応を返す
もう1つ、お金のかからない工夫があります。社員が書いた投稿を、社長が読んで、一言返すことです。「あの投稿、お客様が見たと言っていたよ」。読まれていると分かると、書く人は続けられます。
8. 雄喜晃の伴走:ルールの1枚と、ホームページ側の載せる作業を手伝います
私たち雄喜晃のホームページ制作では、社員の方に任せられる形をつくるところからご一緒します。発信が社長おひとりで止まっている会社ほど、ここが効きます。
私たちがやること
最初に、貴社の仕事の流れとお客様との関わり方を伺い、ホームページのお知らせやブログについて「書いてよいこと・見てから出すこと・書かないこと」を1枚にまとめるお手伝いをします。たたき台はこちらで用意し、線の位置は貴社で決めていただきます。
ホームページのお知らせやブログは、社員の方から写真と一言を送っていただければ、写り込みを確かめ、読みやすく整えて載せます。月5回までの更新代行が月額に含まれているので、日々のお知らせはこの中でお受けしています。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
先に書いておきます。社員の方の個人のアカウントを見張るようなことは、お受けしていません。就業規則や契約の文言をつくることや、間違いが起きたときの法的な判断もしません。そこは専門家の領分です。
また、社員の方が書いたように見せかけて、こちらで文章を作文することもしません。いただいた内容を、事実と違う形に膨らませて載せることもいたしません。発信を続けることで検索の順位が上がる、問い合わせが増えるとお約束することもありません。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
「社員に任せたいけれど、どこまで任せていいか決められずにいる」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:線を紙に書けば、任せられる
社員に会社のSNSやお知らせを任せるときに決めておくことは、5つです。
- ルールは紙1枚 ― 書いてよいことを先に書き、禁止事項を増やしすぎない
- 書かないことは3つ ― お客様の情報、写真の写り込み、まだ発表していない話
- 見る人を名前で1人 ― 見るのは事実・写り込み・書かないことだけ。返事はその日のうちに
- 間違えたら、保存して連絡 ― 書いた人が1人で返信しない。対応は会社として行う
- 会社のアカウントは会社が持つ ― 負担は1人に寄せず、材料を出す人と書く人を分ける
任せられないのは、社員を信用していないからではありません。どこまで書いてよいかの線が、社長の頭の中にしか無いからです。その線を紙に書き出せば、任せる側も任される側も安心して動けます。
まず、今日できること
紙を1枚用意して、「確認なしで書いてよいこと」を3つだけ書き出してください。休業日の案内、道具の写真、季節の案内。その3つを社員に渡して、「これは聞かずに出していい」と伝えるところから始められます。