1. 「この書類も頼めますか、から始まるんです」

翻訳や通訳の会社、個人で事務所をされている方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「サイトには『英語・中国語・韓国語に対応』と書いてあるんです。でも、問い合わせのほとんどが『こういう書類なんですが、頼めますか』から始まって。言語より先に、そこを知りたいんだなと思うんですよね」

この話には、はっきりした理由があります。頼む人が探しているのは、言語の名前ではなく、自分の手元にある書類や、自分が立ち会う場面だからです。

契約書を英語にしたい法務の担当者。取扱説明書を訳したいメーカーの技術者。外国から来る方向けの案内を作りたい観光の事業者。海外の取引先との商談に、通訳を付けたい社長。どの人も「英語」とだけ書かれたサイトを見て、自分の書類が入るのかどうかを判断できずにいます。

この記事では、翻訳・通訳の会社や個人の事務所が、サイトのどこに何を置くかを順に書きます。

この記事で書くこと

  • 対応言語と分野を、書類や場面の名前で具体的に書く
  • 料金の決まり方を、文字数・分野・納期・確認の回数で書く
  • 納期の目安と、急ぎの扱い
  • 守秘の扱いと、訳す人の紹介・体制
  • 試しの依頼と、入稿の形式

2. 言語と分野は、書類や場面の名前で書く

言語は、訳す向きまで書く

「英語対応」と書くだけでは、日本語から英語なのか、英語から日本語なのか、両方なのかが分かりません。翻訳は、向きによって訳せる人が違うことがあります。受けている向きを、組み合わせごとに書いてください。

  • たとえば「日本語→英語」「英語→日本語」
  • たとえば「日本語→中国語(簡体字)」
  • たとえば「韓国語→日本語のみ」

文字や地域で書き方が分かれる言語は、どちらに対応しているかも添えます。受けていない向きは、受けていないと書くほうが、合わない問い合わせが減ります。

分野は、書類の名前で並べる

次に分野です。「法務」「技術」「医療」「観光」と分野の名前だけを並べるのではなく、その分野で実際に多く受けている書類の名前を添えます。頼む人は、分野の名前より、書類の名前で探しているからです。

表:分野の名前に、書類や場面の名前を添える(例はたとえばの書き方です)
分野添える書類・場面の例あわせて書いておくこと
法務たとえば契約書、利用規約、会社の登記に関わる書類、裁判や手続きの書類証明のための書類に添える翻訳証明を出すかどうか、出す場合の形
技術たとえば取扱説明書、仕様書、図面の中の文字、ソフトウェアの画面の文言図や表の中の文字まで訳すか、元の配置を再現しない場合の扱い
医療・薬たとえば病院の案内文、説明の書類、論文の要旨受けている書類の範囲。専門性が高い書類を受けない場合は、そう書く
観光・飲食たとえば施設の案内、メニュー、パンフレット、看板の文言短い文の多い依頼の数え方。写真に写った文字の書き起こしから受けるか
通訳たとえば商談、工場や施設の見学、展示会、オンラインの会議話し終えてから訳す形か、話と同時に訳す形か。どちらを受けているか

真ん中の列は、頼む人が手元で見ている書類や、立ち会う場面の名前です。見出しには分野の名前、すぐ下に書類や場面の名前を置くと、読む人は自分の依頼が入っているかを探せます。中身は、貴社が実際に受けている書類で書いてください。

言語ごとに、受けられる分野が違うなら

社内や登録している訳し手の顔ぶれによっては、英語なら法務も技術も受けるが、ほかの言語は一般的な文書だけということがあります。その場合は、言語と分野の組み合わせを表にして載せてください。全部の言語で全部の分野を受けられるように見せるより、受けられる組み合わせをはっきり書くほうが、頼む人は安心します。

自社のサイト自体を、ほかの言語でも用意するかどうかも、翻訳の会社ならではの論点です。海外の会社から直接依頼が来るなら、その言語のページがあると話が早くなります。考え方は ホームページの多言語対応は、本当に必要か にまとめました。

3. 料金は、何で決まるかを書く

翻訳や通訳の料金は、依頼ごとに変わります。1つの金額で言い切れないのは当然です。ただ、何で金額が決まるのかは書けます。料金を載せるかどうかの考え方は ホームページに料金を載せるか、載せないか に書きました。ここでは、翻訳と通訳に特有の決まり方を並べます。

翻訳の料金を決めるもの

  • 量と数え方 ― 原文の文字数で数えるか、訳した後の語数で数えるか。日本語と英語とで数え方が変わるなら、両方書きます
  • 分野 ― 一般的な文書と、専門の言葉が多い書類とで、単価を分けているか
  • 納期 ― 急ぎの場合に料金が変わるか。変わるなら、何日以内を急ぎとするか
  • 確認の回数 ― 訳した人とは別の人が読み直す工程があるか。その言語を母語とする人の読み直しを付けられるか。付けるなら料金が変わるか
  • 形式の手間 ― 元の書類の配置どおりに組み直すか、文字だけを納めるか

最低料金があるなら、それも書いておきます。短い文の依頼でも一定の料金がかかる場合、書いていないと、頼む人は文字数だけで計算して驚くことになります。

料金の例は、条件をそろえて書く

金額を出せる場合は、条件をそろえて書きます。たとえば次のような形です(条件も金額の書き方も架空です)。

  • たとえば「日本語→英語、一般的な文書、原文1文字あたり〇円から」
  • たとえば「契約書など専門の言葉が多い書類は、一般的な文書の単価に〇割を加えます」
  • たとえば「別の訳し手による読み直しを付ける場合は、1文字あたり〇円を加えます」

数字は、貴社の実際のもので書いてください。下限の単価だけを大きく書くと、専門の書類を頼んだ人が見積もりを見て驚きます。どの条件で上がるかを、単価と同じ大きさで書いておくことが大事です。

通訳の料金を決めるもの

通訳は、量ではなく時間と場面で決まります。

  • 拘束される時間 ― 半日か1日か。休憩を含めるか、時間を超えたらどうなるか
  • 訳し方 ― 話し終えてから訳す形か、話と同時に訳す形か。同時に訳す形で、何人で担当するか
  • 移動と交通費 ― 現地まで行く場合の移動の時間と、交通費の扱い
  • 事前の準備 ― 資料を読み込む時間を料金に含めるか
  • 取りやめ ― 日程が変わった、取りやめになったときの扱い

4. 納期の目安と、急ぎの扱い

量ごとの目安を、貴社の実際の日数で書く

頼む人がいちばん知りたいのは、この量を、いつまでに受け取れるかです。納期の目安は、量ごとに書くと伝わります。

  • たとえば「A4で数枚ほどの一般的な文書なら、〇営業日ほど」
  • たとえば「数十ページの説明書なら、ご相談のうえで日程を決めます」

日数は、貴社が実際に守れている日数で書いてください。土日や祝日を数えるかどうか、何時までに受け取った原稿をその日の受付にするかも添えます。この2つが書いていないと、「金曜の夕方に送ったら、月曜に届くと思っていた」という行き違いが起きます。納期の書き方そのものは 納期や「何日かかるか」を、ホームページにどう書くか に詳しく書きました。

急ぎを受けるかどうかを、はっきり書く

翻訳の依頼には、急ぎのものが少なくありません。明日の商談で使う資料、締め切りの迫った申請の書類。こうした依頼をしてくる人は、今から頼んで間に合うかどうかだけを確かめています。

  • 急ぎを受けるか ― 受けるなら、どのくらいの量まで、何時までの連絡なら受けられるか
  • 料金が変わるか ― 変わるなら、その決まり方
  • 受けられないとき ― いつまでに返事をするか

量が多い急ぎの依頼では、できたところから分けて納める形を取れるかどうかも書いておくと、頼む人が段取りを組みやすくなります。受けられない急ぎは、受けられないと書いてください。守れない納期を引き受けるより、断るほうが相手の時間を守ります。

5. 守秘の扱いを、やっていることで書く

翻訳に出す書類には、まだ外に出していない情報が入っていることがよくあります。契約の条件、新しい製品の仕様、個人の名前や住所。頼む人は、この書類を預けて大丈夫かを確かめてから連絡してきます。

書いておきたいこと

守秘の扱いは、実際にやっていることだけを、短く書きます。

  • 秘密を守る約束を結べるか ― 依頼の前に、相手の会社の書式で約束を交わせるか
  • 誰が原稿を見るか ― 社内の誰と、外部の訳し手が見るのか。外部の訳し手にも同じ約束を結んでもらっているか
  • 原稿の受け渡しの方法 ― メールに添付するか、ファイルを受け渡す仕組みを使うか
  • 終わったあとの扱い ― 原稿や訳文をいつまで保管し、どう消すか
  • 自動の翻訳を使うかどうか ― 原稿を外部の自動の翻訳サービスに入れることがあるか、ないか。入れる場合はどんな場面か

最後の項目は、頼む人が気にしやすいところです。使う場合も使わない場合も、どう扱っているかを書いておくと、頼む人は判断しやすくなります。使うかどうかを、依頼ごとに相手が選べるなら、そのことも書きます。

一般論として、確かめておくこと

ここは一般論として書きます。秘密を守る約束の中身や、個人の情報が入った書類の扱いには、守るべき決まりがあります。何をどこまで約束できるか、どう扱う必要があるかは、業種や書類の種類によって違うので、専門家に確認してください。できていないことを、サイトに書かないことが大前提です。お客様の情報の扱いをサイトにどう書くかは お客様の情報をどう扱っているかを、ホームページに書くかどうか にまとめました。

実績は、書類の種類と量で書く

守秘の約束があると、実績も書きにくくなります。その場合は、相手の名前を出さずに、分野・書類の種類・量・訳した向きで書きます。

  • たとえば「製造業のお客様/取扱説明書/約〇ページ/日本語→英語」
  • たとえば「観光施設のお客様/館内の案内と看板の文言/日本語→英語・中国語」

上の例はすべて架空です。名前を出したい場合は、契約の中身を読み直し、相手の了解を取ってからにしてください。

6. 訳す人の紹介と、体制を書く

翻訳や通訳は、誰が担当するかで頼むかどうかが決まることの多い仕事です。頼む人は、自分の書類を誰が読み、誰が訳すのかを知りたがっています。

訳す人の紹介は、事実を並べる

  • 担当する言語と向き ― どの言語のどの向きを受け持っているか
  • 多く担当してきた分野 ― 法務の書類が多い、技術の書類が多い、など
  • 経歴 ― 翻訳や通訳の前にどんな仕事をしていたか。その分野の現場にいた経験は、頼む人にとって大きな手がかりになります
  • 資格や検定 ― 持っているものだけを、名前のとおりに

訳文の出来ばえを、言葉で言い切ることはしないでください。「正確な翻訳」「自然な訳文」は、どの会社も書いていて、比べる材料になりません。何を、何年、どのくらい担当してきたかを書くほうが、読む人は判断できます。

体制は、依頼が誰の手を通るかで書く

会社として受けている場合は、依頼が届いてから納めるまでに、誰の手を通るかを書きます。

  • 窓口の担当者が原稿を確かめ、見積もりを出す
  • 訳し手が訳す
  • 別の人が読み直す(付ける場合)
  • 窓口の担当者が形式を整えて納める

社内の人だけで訳すのか、登録している外部の訳し手に頼むことがあるのか。個人の事務所なら、一人で受けていること、受けられる量の目安、忙しい時期を書いておくほうが誠実です。小さいことは隠さなくて構いません。誰が窓口で、誰が訳すのかが分かることのほうが、規模より大事です。

7. 試しの依頼と、入稿の形式

試しの依頼を受けるなら、条件まで書く

初めて頼む人は、一部だけ訳してもらって、相性を確かめたいと考えることがあります。試しの依頼を受けるなら、その条件を書いておきます。

  • 量 ― どのくらいの分量まで受けるか
  • 料金 ― 無料か、有料か。有料なら、本番の依頼に進んだときの扱い
  • 期間 ― 何日くらいで返すか
  • 受けない場合 ― 試しの依頼を受けていないなら、代わりに何を見せられるか(訳したことのある書類の種類の一覧など)

試しの申し込みの受け方そのものは、サンプルやお試しの申し込みを、ホームページで受けるか にまとめてあります。

入稿の形式を、受け取れるものと納める形で書く

翻訳では、どんな形で原稿を渡せばいいかで手が止まる人が多くいます。受け取れる形式を並べておきます。

  • 文書のファイル、表計算のファイル、スライドのファイル ― そのまま受け取れるか
  • PDF ― 文字を取り出せるPDFと、紙を読み込んだだけのPDFとで、扱いや料金が変わるか
  • 紙や写真 ― 紙の書類や、看板を撮った写真から受けるか
  • 手書きの原稿 ― 受けるか、受けないか

あわせて、納める形も書きます。元のファイルの形式のまま納めるか、文字だけを別のファイルで納めるか。図の中の文字をどう納めるか。さらに、過去の訳文や、社内で決めている言葉の言い換えの一覧があれば受け取れることを書いておくと、続けて頼みたい会社が安心します。

見積もりのフォームで聞くこと

見積もりのフォームでは、最初の返事で金額と納期の目安を出せるかを基準に、聞く項目を決めます。訳す向き、書類の種類、量、希望の納期、原稿の形式。この5つがあれば、多くの場合、最初の返事はできます。原稿そのものを添付できる欄を付けるなら、守秘の約束を先に交わしたい人のために「原稿は後から送ることもできます」と添えてください。項目の決め方は 見積もり依頼のフォームは、何をどこまで聞けばいいか に詳しく書きました。

8. 雄喜晃の伴走:受けている書類と決まり方を、言葉にするところから

私たち雄喜晃は、翻訳・通訳の会社や事務所のサイトを作るとき、最初に「最近の依頼で、どんな書類が、どんな言葉で頼まれたか」を伺うところから始めます。その言葉が、分野の見出しのすぐ下に置く書類の名前になるからです。

私たちがやること

  • 言語と分野を、書類や場面の名前で並べる ― 受けている向きと組み合わせを、伺った事実で表にします
  • 料金の決まり方を整理する ― 文字数・分野・納期・確認の回数・形式の手間で、何が上がる条件かを一緒に言葉にします
  • 納期・守秘・入稿のページを組む ― 実際にやっていることだけを、頼む人がいつ何をすればいいかの順で書きます
  • 訳す人の紹介と体制を、事実で書く ― 経歴と担当分野を伺い、文章に直します
  • 写真は、貴社で撮っていただいたものを整えて載せます ― 事務所の様子や、訳す人の写真などです

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)です。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、受ける言語が増えたときや、料金の決まり方を見直したときも、ご連絡いただければこちらで反映します。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

  • 撮影には伺っていません。写真は、貴社で撮っていただいたものを整えて載せるところまでです
  • サイトをほかの言語に訳す作業は、私たちは担当しません。ほかの言語のページを作る場合、訳文は貴社で用意していただき、それを載せるところを担当します
  • 守秘の約束の中身や、個人の情報の扱いについての判断はしません。何をどこまで書けるかは、専門家に確認していただくようお願いしています
  • 訳文の出来ばえを言い切る言葉や、実在しない実績を載せることはしません。検索順位や問い合わせの増加をお約束することもしません

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。

「対応言語は書いてあるのに、自分の書類を頼めるのかと毎回聞かれる」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:言語の名前より先に、書類と決まり方を見せる

翻訳・通訳の会社や事務所のホームページで押さえることは、5つです。

  • 言語は向きまで、分野は書類や場面の名前まで書く ― 受けていない向きや分野は、受けていないと書く
  • 料金は、何で決まるかを書く ― 文字数の数え方、分野、納期、確認の回数、形式の手間。通訳は時間と場面
  • 納期は、量ごとの目安と受付の時刻を書く ― 急ぎを受けるかどうか、受けられないときの返事の時期もはっきりさせる
  • 守秘と体制は、やっていることで書く ― 誰が原稿を見るか、自動の翻訳を使うか、終わったあとどう扱うか
  • 試しの依頼と入稿の形式を、条件まで書く ― 受け取れる形式と、納める形を並べる

翻訳や通訳は、頼む人から見ると、仕上がるまで中が見えにくい仕事です。どの書類を、誰が、いくらで、いつまでに。この4つが先に見えるだけで、問い合わせの最初の一言が「頼めますか」から「この条件でお願いできますか」に変わっていきます。

まず、今日できること

直近の問い合わせを10件ほど開いて、相手が最初に書いた書類や場面の名前を書き出してみてください。その名前が、貴社のサイトのどこかに1つでも書いてあるかを確かめます。書いていなければ、そこが最初に足す場所です。