1. 「同業さんから連絡が来たんですが、どう返せばいいのか」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「ホームページのフォームから、同じ業種の会社さんから連絡が来たんです。手伝ってもらえる会社を探している、という内容で。ありがたい話なのかもしれませんが、何が目的なのかよく分からなくて、まだ返していないんです」
ホームページを持つと、お客様だけでなく、同業の会社からも見つけてもらえるようになります。そうすると、こうした連絡が届くようになります。お客様からの問い合わせとは勝手が違うので、返事の書き方で手が止まるのは自然なことです。
先にお伝えしたいのは、同業からの問い合わせの多くは、文面どおりの用件だということです。手が足りない、エリアの外の仕事を回せる先を探している。どれも商売として普通の話で、相手を疑ってかかる必要はありません。
困るのは、用件を見分けないまま返事をしてしまうことです。受けるつもりのない仕事を曖昧に引き受けたり、いい話を流してしまったりします。
この記事で書くこと
- 同業からの問い合わせが、どんな用件に分かれるか
- どれなのかを見分けるための、返信での聞き方
- 受ける仕事と受けない仕事を、先に決めておく方法
- 同業の方向けの窓口を、サイトに置くかどうか
- 料金表や仕事の手順を、どこまでサイトに出すか
なお、こちらから協力会社を募集するページの作り方は 協力会社・外注先を募集するページを、どう作るか に、フォームに届く売り込みの扱い方は 問い合わせフォームに届く営業メールを、どう扱うか に書きました。この記事では、同業から届いた1通をどう読み、どう返すかと、そのためにサイトに何を置いておくかを扱います。
2. 同業からの問い合わせは、たいてい4つに分かれる
届く文面はさまざまですが、用件で分けると、だいたい4つに収まります。
① 仕事の依頼
いちばん多いのがこれです。相手の会社が受けた仕事を、貴社に手伝ってほしいという依頼です。理由はおおむね2つあります。
- 手が足りない ― 繁忙期や、大きな案件が重なって、自社だけでは回らない
- 自社では対応できない ― 遠い地域の現場、扱っていない工事や作業、持っていない設備が要る仕事
ホームページを見て連絡してきたということは、サイトに書いてある仕事の中身や地域を見て、合いそうだと判断したということです。
② 協力会社の募集への応募
貴社が協力会社を募集していれば、その応募として届きます。募集していなくても、「何かあればお手伝いできます」という形で、相手の側から手を挙げてくることがあります。一人親方や、小さな会社からの連絡がこれに当たることが多いです。
③ 提携の相談
続けて組む形を相談したいという連絡です。エリアの外の案件を紹介し合う、大きな仕事を共同で受ける、といった話です。
④ 料金や手順の様子見
最後が、貴社の料金や仕事の進め方を知りたいという問い合わせです。お客様と同じ形で見積もりを頼んでくることもあれば、正直に「同業ですが、参考までに」と書いてくることもあります。
構えてしまうかもしれませんが、同業の様子を知りたいのは、どの会社も同じです。様子見そのものは、悪いことではありません。大事なのは、何を返すかの線を決めておくことです。これは第6章で書きます。
手が足りない、地域や工事の種類が合わない、という理由で届きます。日付や場所が書いてあることが多いです。
募集への応募、または相手から手を挙げる連絡です。できる作業と動ける地域を聞くと、話が具体になります。
続けて組む形の相談です。最初の返事で答えを出す必要はありません。
料金や手順を知りたいという連絡です。お客様と同じ文面で届くこともあります。
どれに当たるかが分かれば、返事の中身は自然に決まります。分からないまま返事を書こうとするから、手が止まります。1通目の返信は、どれなのかを確かめるために使ってください。
3. どれなのかを見分ける、聞き方
文面だけで用件が分からないことは多いです。そこで、最初の返信を、見分けるための質問に使います。
文面で見るところ
返信を書く前に、届いた文面から3つのことを拾います。
- 具体的な日付・場所・量が書いてあるか ― 書いてあれば①の仕事の依頼である見込みが高くなります
- 会社名・担当者名・連絡先がそろっているか ― 相手のサイトを開けば、どんな会社かを確かめられます
- 貴社の何を見て連絡してきたか ― 「対応エリアを拝見して」のように、きっかけが書いてあることがあります
返信で聞くのは、3つ
用件がはっきりしないときは、次の3つを聞きます。
- どんな仕事を、いつ頃、どの地域で ― 仕事の依頼なのか、それ以外なのかが、ここで分かれます
- 貴社がどの立場で入るのか ― 相手の会社の手伝いとして入るのか、お客様と直接やり取りするのか、さらに上に元請けがいるのか
- 1回だけか、続けての話か ― ①の仕事の依頼か、③の提携の相談かが、ここで分かれます
3つとも、どの用件であっても普通に聞くことです。相手を試すための質問ではなく、話を進めるための質問として書けば、失礼にはなりません。
返信の文面の例
たとえば、こんな書き方になります(文面は一例です)。
「ご連絡ありがとうございます。お話を進めるにあたって、3点教えていただけますでしょうか。①お仕事の内容と、時期・場所の見込み、②弊社はどのような立場で入る形をお考えか、③今回1件のご相談か、続けてのご相談か。いただいた内容を拝見して、お受けできるかどうかをお返事いたします」
どの用件であっても使える文面です。様子見だった場合は話がそこで止まりますが、それで困ることはありません。
電話で来たときも、同じ3つ
電話で来ることもあります。電話に出る人が社長でないなら、この3つをメモする紙を電話の横に置いておくと、その場で答えを迫られずに済みます。「担当の者から折り返します」と伝えて、3つを聞いて切れば十分です。
4. 受ける仕事と、受けない仕事を先に決めておく
見分けたあとに困るのが、受けるかどうかの判断です。ここは、問い合わせが来る前に決めておくことをおすすめします。
来てから考えると、その場の空気で決まる
来てから考えると、相手が丁寧だった、急いでいそうだった、という事情に引っ張られます。そうして引き受けて、あとから「この条件なら受けなかった」と思うことになりがちです。決めてあれば、受けるなら話を進め、受けないなら早めに断る。どちらでも、相手を待たせずに済みます。
決めておく項目
決めておく項目は、だいたい次のとおりです。
| 項目 | 決めておくこと(たとえば) | 決めていないと起きること |
|---|---|---|
| 仕事の種類 | たとえば「内装の仕上げは受ける。解体だけの仕事は受けない」 | 得意でない仕事まで引き受けて、本業の現場が遅れる |
| 地域 | たとえば「自社のお客様と同じ範囲まで。それより遠い現場は相談」 | 移動に時間を取られ、割に合わないと後から分かる |
| 立場 | たとえば「相手の会社から直接受ける形まで。さらに下に入る形は受けない」 | 誰の指示で動くのか、責任の所在が曖昧になる |
| 名前の出し方 | たとえば「現場では相手の会社の名前で動く。自社の名刺は渡さない」 | お客様を取ったと誤解されるきっかけになる |
| 支払いの条件 | たとえば「締め日と支払日、経費の扱いを、着手の前に書面で取り交わす」 | 終わってから金額の話になり、関係がこじれる |
全部を細かく決める必要はありません。「これは受けない」という線を、項目ごとに1つずつ決めておくだけで、返事は早くなります。中身は、貴社の事情に合わせて決めてください。
名前の出し方は、早めに話す
見落とされやすいのが名前の出し方です。相手の仕事として入る現場で貴社の名刺を渡したり、「次は直接どうぞ」と言ったりすると、相手からは、お客様を取られたように見えます。最初の打ち合わせで「現場ではどちらの名前で動くか」を確かめておくと安心です。
受けない仕事の断り方
受けない仕事は、早く、理由を短く添えて断ります。理由が書いてあると、相手は次に頼むときの目安にできます。
「ご相談いただきありがとうございます。あいにく、弊社は〇〇市から遠い現場はお受けしておりません。〇〇市内でのお仕事でしたら、改めてお声がけいただけましたら幸いです」
断った相手が、別の条件の仕事で戻ってくることもあります。断り方が丁寧だと、関係は切れません。知っている同業を紹介できるなら、ひとこと添えると喜ばれます。
契約や取引のルールは、専門家に
同業との取引では、契約書の中身や、下請けの取引に関するルールが関わることがあります。業種によって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。ここでは、着手の前に条件を書面で取り交わしておくことだけをおすすめします。
5. 協力の窓口を、サイトに置くかどうか
ここからはサイトの側の話です。
置いたほうがいい会社
- 同業からの仕事を、本業の一部にしたい会社 ― 閑散期を埋めたい、特定の作業を専門に請けたい
- エリアの外の仕事を、回し合える先がほしい会社 ― 紹介し合える相手を探している
- 下請けや協力の仕事が、もともと中心の会社 ― 同業の会社が、そもそものお客様に当たる
下請けが中心の会社のサイトについては 下請けの仕事が中心の会社に、ホームページは効くのか に書いたので、あわせて読んでみてください。
置かなくていい会社
同業とは組まない方針の会社は、無理に窓口を作る必要はありません。「同業の方からのご連絡はお断りします」と強く書く必要もないと思います。届いたときに個別に返せば済みます。強い言葉は、お客様も身構えさせてしまいます。
募集のページとは、役割が違う
協力会社を募集するページと、同業の方向けの窓口は、似ているようで向きが逆です。
- 募集のページ ― 貴社が頼みたい仕事を書き、引き受けてくれる相手を探す
- 同業の方向けの窓口 ― 貴社が頼まれたい仕事を書き、頼んでくれる相手からの連絡を受ける
両方を置く場合は、見出しを分けて、どちらの話か迷わないようにします。
窓口に書くこと
大きなページは要りません。会社概要やお問い合わせのページの中に、短い節を1つ設ければ足ります。書くのは次の5つです。
- お受けしている仕事 ― 作業の単位で書きます。「〇〇の工事」「〇〇の作業の応援」
- お受けしている地域 ― 市区町村の名前で書きます
- お受けしていない仕事 ― 先に書いておくと、合わない相談が減ります
- 最初に書いてほしいこと ― 第3章の3つ。仕事の内容と時期・場所、立場、1回か続けてか
- 返事の目安 ― 「3営業日以内にご連絡します」のように、守れる日数を書きます
最初に書いてほしいことをサイトに出しておくと、1通目から3つがそろって届くようになります。聞き返しが1往復減るだけで、話はずいぶん早く進みます。
フォームに「ご用件」を1つ足す
フォームにご用件を選ぶ欄があるなら、「同業の方からのご依頼・ご相談」を1つ足します。届いた時点でお客様の問い合わせと分かれるので、見落としが減ります。選択肢を増やしすぎると送る手前で手が止まる人が出るので、全体の数を見ながら決めてください。
6. 料金表や手順は、どこまで出すか
同業に見られると思うと、料金や手順を出すのをためらう方もいます。ここは、線の引き方を決めておけば迷いません。
同業に見られるのは、前提にする
サイトは誰でも見られるので、同業に見られても困らない範囲を出す、と考えるほうが現実的です。同じ地域で同じ仕事をしていれば、料金の目安は相見積もりの場で知られています。料金を載せるかどうかそのものの考え方は ホームページに料金を載せるか、載せないか に書きました。
出しても困らないもの
次のものは、お客様が判断するための情報です。同業に見られても、損は小さいと考えてよいと思います。
- お客様向けの料金の目安 ― 条件つきの数字や、高くなる条件・安くなる条件
- 仕事の流れ ― 問い合わせから完了までの段取りと、それぞれにかかる日数の目安
- 保証やアフターの範囲 ― 何をどこまで見るか
- お受けしていない仕事 ― 合わないお客様が、問い合わせる前に分かるように
同業に真似されても、仕事の質までは真似できません。お客様のために書いたものは、出しておく価値のほうが大きいと考えてください。
出さないほうがいいもの
一方で、次のものはサイトに出す必要がありません。
- 仕入れ値や原価、外注の単価 ― お客様の判断には要らず、取引先との関係にも関わります
- 見積もりの計算の細部 ― 「何で決まるか」は書いても、計算式そのものは出さない
- 社内の手順書やチェック表そのもの ― 流れは書いても、現場で使っている書類は出さない
- 許可を取っていない取引先の名前 ― 書く場合は、相手に確かめてから
線を引く問いは2つです。「お客様が判断するのに要るか」と、「同業がそのまま使える書類になっていないか」。前者が「要る」なら出し、後者が「なっている」なら出さない。迷ったら、この2つで判断してください。
様子見の問い合わせにも、同じ線で返す
④の様子見の問い合わせに返すときも、この線を使います。サイトに出している範囲のことは、そのまま答えて構いません。サイトのページを案内するだけでも十分です。
個別の見積もりを求められたら、お客様と同じように、案件の情報をいただいてから出します。何を聞けば見積もりを出せるかは 見積もり依頼のフォームは、何をどこまで聞けばいいか にまとめました。同業かどうかで返し方を変えなくていいように作っておくと、相手を見分けられなかったときにも困りません。
7. 返したあとの扱いと、社内での共有
同業からの問い合わせは、印をつけて残す
問い合わせを記録しているなら、同業からのものには印をつけて、4つのどれだったかを残しておきます。誰から来て、どう返して、その後どうなったか。表計算の1行で足ります。
半年ほど続けると、どの用件が多いかが見えてきます。仕事の依頼が多いなら窓口を分かりやすくし、様子見が多いなら料金と流れのページを詳しくする。記録は、次にサイトのどこを直すかの材料になります。問い合わせ全体の記録の残し方は 問い合わせが増えたあと、社内で何を決めておくか に書きました。
初めての取引は、小さく始める
①の仕事の依頼を受けることにした場合、初めての相手とは、小さな仕事から始めるのがおすすめです。1件やってみると、相手の段取りや連絡の早さ、支払いまでの流れが分かります。③の提携の相談も同じで、最初から大きな約束をせず、1件ずつ積んでいくほうが、お互いに安心できます。
決まりは、年に1回見直す
受ける仕事の決まりは、人が増えたり得意な仕事が変わったりすれば変わります。年に1回、記録を見ながら決まりを見直し、窓口の文面も合わせて直してください。
8. 雄喜晃の伴走:同業の方向けの入口も、一緒に言葉にします
私たち雄喜晃のホームページ制作では、お客様向けのページだけでなく、同業の会社から見たときに、何を頼める会社なのかが分かるかも一緒に見ます。
私たちがやること
- 受ける仕事を伺う ― どんな仕事なら同業から受けたいか、受けないか、どの地域までか。お話を伺いながら整理します
- 窓口の文面を作る ― 受ける仕事・地域・最初に書いてほしいこと・返事の目安を、短い節にまとめます
- フォームを分ける ― ご用件の選択肢を整え、同業からの連絡がお客様の問い合わせと分かれて届くようにします
- 出す範囲を一緒に決める ― 料金や流れのページを、お客様の判断に要る範囲で書き、出さないものとの線を確かめます
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、受ける仕事や地域の決まりを見直したときの書き換えも、ご連絡いただければこちらで反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
同業の会社を、こちらから紹介したり、取引をまとめたりすることはしません。どの会社と組むか、どの仕事を受けるかは、貴社の経営の判断だからです。私たちが作るのは、判断しやすい形で連絡が届く入口です。
また、契約書の中身や、取引のルールに合っているかどうかの判断もいたしません。そこは所管の窓口や専門家にご確認ください。問い合わせの件数をお約束することもしません。
「同業から連絡が来るたびに、どう返せばいいのか迷っている」という方は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
9. まとめ:見分けて、決めておけば、迷わない
同業の会社から問い合わせが来たときに押さえることは、5つです。
- 用件は4つに分かれる ― 仕事の依頼、協力への応募、提携の相談、料金や手順の様子見
- 1通目は、見分けるために返す ― 仕事の内容と時期・場所、立場、1回か続けてか。この3つを聞く
- 受ける仕事と受けない仕事を、先に決める ― 種類・地域・立場・名前の出し方・支払い。それぞれに線を1本
- 窓口を置くなら、短い節で足りる ― 受ける仕事、地域、受けない仕事、最初に書いてほしいこと、返事の目安
- 出すのは、お客様の判断に要る範囲 ― 同業がそのまま使える書類は出さない
同業からの連絡は、相手を疑うものではなく、見分けて返すものです。用件が分かれば、受けるのも断るのも、ずっと楽になります。
まずは今日、受けたい仕事と受けない仕事を、紙に1行ずつ書き出してみてください。その2行が、次に同業から連絡が来たときの返事の土台になります。